魚がなかなか食べられないとき、動脈硬化やコレステロールを防ぐDHAとEPAがラクラク摂れる無敵の食品とは
魚がなかなか食べられないとき、動脈硬化やコレステロールを防ぐDHAとEPAがラクラク摂れる無敵の食品とは

日本人の死因第2位(※1)である心血管疾患。その原因となる動脈硬化は、悪玉コレステロールの増加などによって起こる。

血中のコレステロールを調整するにはどんな食生活を心がけるといいのか、京都府立医科大学大学院教授の内藤裕二先生に聞いた。(※1)厚生労働省 令和2年 人口動態統計(確定数)

日本人の死因、第2位の心血管疾患

心血管疾患は心臓に血液を送る血管や心筋がなんらかの原因で異常を起こし、心臓に血液が行きわたらなくなることで起こる病気です。
代表的な症状が心筋梗塞、狭心症、不整脈などで、日本人の死因ではがんについで、2位と言われています。

心筋梗塞の主な原因は、動脈硬化で、血管の中にプラークというコブのようなものができ、血管の内壁が厚くなり血液の通り道が狭くなることです。

プラークが形成されるのは脂質異常、肥満による悪玉(LDL)コレステロールの増加、高血圧、糖尿病、喫煙による血管細胞のダメージなど、複数のことが原因となって起こると考えられています。

動脈硬化の怖いところは、自覚症状がないまま徐々に進行していき、体の異変に気付くころには臓器にダメージを負ってしまい、命にかかわる危険な状態になる場合があるところです。そういったことにならないように、血管が狭くなる原因の悪玉コレステロール値を下げる食生活が大切になります。



悪玉コレステロール値が上がるのは脂肪の多い食事、肉の脂やバター、生クリーム、インスタントラーメンなどに含まれる飽和脂肪酸です。これらの摂りすぎに注意し、食物繊維の多い野菜、きのこ、海藻類、大豆製品を摂るようにしましょう。

また、特にサンマやイワシなど青い背の魚には中性脂肪や血中のコレステロール値を調整する不飽和脂肪酸のDHA・EPAが豊富に含まれているので、悪玉コレステロール値を下げるにはおすすめの食材です。

DHA・EPAは体の中で生成できず、食物から摂らないといけない必須脂肪酸ですが、血液をサラサラにする働きがあるので、心血管疾患リスクを低減してくれます。

魚肉ソーセージ1本で1日当たり必要なDHA、EPAの半分は摂取できる

青魚に含まれるDHA・EPAが体にいいということはよく聞く話で、なんだ、またその話かと思った人も多いでしょうから、ここで私の研究チームでの調査のことをお話しましょう。

京都府立医科大学の研究グループを主体とした京丹後長寿コホート研究では、京都府京丹後市の65歳以上の住民を対象に健康診断を行いライフスタイルや食生活、そして腸内細菌の調査を行ったところ、高齢者の血管年齢が驚くほど若いことがわかりました。

京丹後市の高齢者は、イモ類や野菜など食物繊維が多い食材を積極的に摂り、たんぱく質は大豆、魚が中心でした。さらに、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)を京都市の住民と比較すると、京丹後市の住民では酪酸を産生する菌が多いことがわかりました。

これは腸の若さを示す指標の1つです。

よって、たんぱく質は牛、豚、羊などのレッドミートより、魚や大豆類から摂ることで腸内環境も若くなり、血管の弾力性を高めて長寿に結びつきます。

老化予防のためにも、たんぱく質は魚や大豆製品類から積極的に摂ってほしいですが、現代人の生活習慣の中でなかなか毎日魚を買って食べるというのは難しいと思います。

そこで、手軽に食べることができる「魚肉ソーセージ」を取り入れるのはいかがでしょうか?

厚生労働省ではn-系脂肪酸(EPA、α-リノレン酸、DPA、DHA)の食事摂取の基準として18歳以上の男性なら1日当たり1920~2230mg、女性なら1日当たり1590~1990mgを目安量に設定しています。

魚肉ソーセージには商品によりますが、例えばトクホの商品では1本当たりDHA、EPAが1050mg含まれているので、1日、1本食べることで手軽に心血管疾患のリスクを低減することができます。

魚肉ソーセージは色がちょっと……、加工品だし…とイメージが悪いかもしれませんが、保存料不使用の商品もありますし、畜産ソーセージと比べて低カロリー、低脂質です。
おやつがわりに1本食べたり、毎日の食事のメニューにアレンジしたりしてみましょう。

人生100年時代と言われています。いつまでも健康体でいるためには、毎日の食事や生活習慣を見直すことは大切です。

忙しくて食事が作れない、魚を食べたいけど買う時間がない人は、気軽に食べられるものでいいので、健康につながるDHA、EPAを摂るように心がけてください。



取材・文/百田なつき