
先月、発売されたデジタル写真集『151センチ、48キロ』が異例の大ヒットを記録している、お笑いコンビ「にゃんこスター」のアンゴラ村長。『キングオブコント2017』の決勝出場で大ブレイクしてから7年。
準優勝から7年、にゃんこスターの成長
──6月5日に、にゃんこスター初となる単独ライブ『飛拳』を開催されました。2017年に『キングオブコント』で準優勝してから7年が経ちましたが、今のにゃんこスターの強みはなんでしょうか。
アンゴラ村長(以下同) 枠を超えられることが強みかなと思っています。例えばコントで設定が居酒屋だったら、“居酒屋の中の2人”ってなるところを、(相方のスーパー)三助さんがそこを1段階崩して、“お客さんと私たち”にして、舞台から降りていく、みたいなことがあります。
舞台をいい意味で壊せるのが、にゃんこスターなのかなと思っています。他にも舞台上からお客さんに話しかけることもありますから、そうやって会場を巻き込むことができることが、強さなのかなと。
──そこがこの7年間で成長した部分だと。
そうですね、もうウケればなんでもいいや! って気持ちが強くなったからかもしれません。来たお客さんの「楽しい!」のためにだけにやろうという意志が、より固まった7年だったと思います。賞レースに出たら守るべきところはきちんと守りますが。
──現在は『キングオブコント』の決勝の舞台に再び立つことを目標にされているとお聞きしました。大会に向けて、ネタ作りに関して変わった部分はありますか。
私たちが出ていたころは、『キングオブコント』は制限時間が4分だったのですが今は5分になっていて、それが「にゃんこスターのせいじゃないか?」と言われているんですよね(笑)。4分だと、ネタ時間3分20秒とかで逃げてもいいんですよ。準優勝したときのネタ、「サビでなわとび跳ばない」が3分20秒くらいのネタだったんです。
だから1分増えたことによって、今では1つのアイデアだけでなく、さらに人間関係、展開、会話とかが求められている気がします。それができたら決勝にいけるのではと思っているので、日々勉強中です。
──にゃんこスターのネタは破壊的なものが多いですからね。
そうなんですよ(笑)。そこがすごい悩み中で、去年はストーリー性をもっと増やそうとした結果、どっちつかずで失敗してしまいました。なので、今年はあまり気にせず、自分がおもしろいと思ったことを5分やろうかなと思っています。破壊的なことをやりつつ、実は計算していた! とかできたらカッコいいのに……! という理想はあります。
「顔のことを言うのは古いですよ」
──7年前の大ブレイクはすさまじいものでした。その頃と現在とで、ファン層に変化はありますか?
最初、ライブでは小さいお子さんも多かったのですが、最近は年齢層が高い気がします。ライブを重ねているうちにちょっとずつちょっとずつファンが増えていき、今回の単独ライブのキャパ(260席)が埋まったのかなと。
だから一気に変わったというよりか、ちょっとずつファン層も変化を続けている感じです。普段からたくさんのお笑いライブに行かれている方と、にゃんこスターのライブだけに行っていますという方と、両方がいる状態ですね。
──ライブの動員で苦戦していた時期もあったそうですね。キャパ80人の会場で当日にキャンセルが30人も出てしまった苦い経験も以前明かされています。それでも、お笑いを続けてこられたモチベーションはどこからくるのでしょう。
すごくいろいろな仕事をさせてもらったのですが、やっぱりお客さんの前に立って、自分がおもしろいと思うネタをやって笑ってもらうのが人生で一番楽しかったので、「続けよう!」とかは思わず、ただ今が楽しいからやってこれたのだと思います。
──7年前と比べると、女性芸人を取り巻く環境も大きく変わりました。テレビではそれが顕著です。そういった時代の流れを感じることはありますか?
私がテレビに出始めたとき、顔のことをイジられたので「顔のことを言うのは古いですよ。白亜紀のお笑い」と謎の返しをしたら、視聴者に「よく言った!」と評価されたことがありました。
私は別に世の中の意識を変えたいとかではなく、ただ単純に「初めて会った人に顔のことを言うのってどうなの?」と思って言っただけだったんです。でも今ではその感覚が当たり前になっていますよね。
──24歳でブレイクして、今年で30歳になりました。30代のキャリア、目標についてお聞かせください。
20代の頃は大きい夢を1個かかげて追うことが多かった気がしますが、30代に近づくにつれて、大きい夢は小さな夢の積み重ねにすぎないと気づき始めました。
だからこれからは大きい目標を立てないことが目標といいますか、小さい夢を達成していったら、副産物でなにか大きな結果が出ればいいのかなと。高望みはしないように(笑)。
これからやってみたい仕事は……
──それは大きな変化ですね。仕事の選び方も変わってきているのでしょうか。
もちろん今もそうなんですけど、今まではとにかく仕事をいただけることがありがたかったです。でも、できない仕事を「できる」と言って受けた結果、空回りすることを何度も経験したので、できないことを「できない」と言えるのも仕事だと思うことにしました。
そういう仕事の選び方が少しずつできるようになってきたかと思います。自分の精神衛生と、お互いの仕事の仕上がり度を考えると、選ばなきゃいけないのかなというのはあります。
──30歳になった今だからこそ、20代の自分に「こんなアドバイスをしてあげたかった」というのもありそうですね。
「心に従ったほうがいいよ」と(笑)。ディレクターさんから「ケンカをして」と指示されて実践したこともありますが、私自身は人に敵意を向けるとかケンカをするとかが得意じゃないので、そのおもしろさをわからないままやって、人に迷惑をかけてしまったことがありました。
だから、「そのおもしろさがわからないので、他の人にお願いしてください」とか言えばよかったかなと思ったことがあります。自分の苦手な仕事を得意とする方がいると思いますので。
──苦手なことも含めて、20代で本当に多くの仕事・経験をされてきたと思います。今回の写真集のように、これから新たにやってみたい仕事はありますか。
文章を書く仕事は楽しかったので、雑誌などにエッセイを寄稿するお仕事とかはやってみたいなと思っています!
──高学歴なので「コメンテーターをやってほしい」と言われることもあるかもしれませんね。
キッチリした服を着てクールに語っているコメンテーターに憧れみたいなものはあるのですが、私は完璧ができないのに完璧主義で、100知ってからじゃないと安心できないタイプなんです。
なので、コメンテーターの仕事をするにはたくさんの準備をする時間が必要なので難しいかなあ。「警察犬がデビューしてかわいいですね!」みたいなニュースだけならいいんですけど(笑)。
取材・文/集英社オンライン編集部
スタイリスト/石川美久 ヘアメイク/鈴木かれん
151センチ、48キロ
アンゴラ村長 東京祐(撮影)