
1975年公開の映画『ジョーズ』から、凶暴なサメが人々を襲う物語に心を掴まれる人が増え続け、日本発のサメ映画『温泉シャーク』が先日公開されるなど、一大ジャンルに成長していった「サメ映画」。しかし、この界隈で一体どのサメが最強なのかと思ったことはないだろうか…そこで今回は『サメ映画大全』(左右社)の著者・知的風ハット氏に独自にセレクトしてもらった。
サメ映画界において「最強のサメ」とは…
今や大人気ジャンルとなってひさしいサメ映画。ごく自然にサメが海で暴れるシリアスものから、サメが空を飛んだり火を噴いたりするナンセンスものまで、その内容はさまざまだ。
しかし、そんな何でも多すぎるサメ映画において、「最強のサメ」とは一体何だろうか。
というわけで今回は、恐るべき強さを秘めたサメが登場するサメ映画を、個人的な見解を交えて5本ほど紹介しよう。
なお、今回はサメの<一個体>としての強さに着目しているため、たとえば『シャークネード』に登場するサメ台風のような、<群体>キャラクターは選外とする。
第5位:古代の巨大サメが持つ圧倒的ポテンシャル“メガロドン”
まずは『シャーク・ハンター』(2001年)から始めよう。太古の昔に実在したとされる巨大サメ“メガロドン”が登場するサメ映画だ。
「かつて両親をメガロドンに殺された主人公の科学者が、とある事故の潜水調査中にそのメガロドンと再会、深海で対決することになる」というストーリーの本作。一見してごくごく王道な敵討ちもののように思われるが、ところがどっこいこの映画のメガロドンは、そうやすやすとは倒されない。
というよりも、劇中で主人公たちの作戦を平然と打ち破り、人類側に対して最後の最後までほぼ一方的に勝ち続けるという、ちょっと理不尽な暴力性の持ち主なのだ。
別に主人公たちだって無力というわけではなく、銛や催眠弾を何発も撃ち込んでいるのだが、本作のサメはシンプルに強すぎるので倒せない。あげくヒロインを含めた主要人物を壊滅状態に追いやる、お約束外しもいいところのサメである。
と、メタ視点から見た場合にはサメ映画史上トップクラスの厄介さを誇るサメなのだが、あいにくそれ以上の売りになるような特殊能力を持っておらず、なにより「一応普通に殺せる」という点を加味し、5位とさせていただいた。
さて、ここから先はイロモノのオンパレードとなるので、あらかじめご了承願いたい。
第4位:口から火の玉、目から電撃を放つ“ウィジャ・シャ・シャーク”
4位に推薦するのは、『ウィジャ・シャーク2』(2022年)に登場する幽霊ザメ、“ウィジャ・シャ・シャーク”だ。
地獄の支配者のしもべウィジャ・シャークは、その鋭い牙や強靭なアゴ、口から吐く火の玉、そのほか目から放つ電撃で相手を攻撃する。
サメが火の玉や電撃を操る意味がよくわからないし、まず地獄の支配者なる謎の存在の方がもっとよくわからないが、とにかくそういうものである。
そして最終的には巨大化し、摩天楼の間をノシノシと突き進む。哀れ一般市民は逃げ惑うほかなく、軍隊でもウィジャ・シャークを止めることはできない。
と、ド派手に暴れ回るウィジャ・シャークだが、実はこの『ウィジャ・シャーク2』、そもそも他のサメ映画以上にコメディ色の強いドタバタ映画であり、サメに限らず全体的に「ギャグとして」舞台設定が何でもアリ気味。
ギャグ世界の住人が演出上デタラメに強かったり不死身だったりするのを、純粋な強さとしてカウントするのはどうかと思われる一方、ただ黙殺するには忍びない暴れっぷりを披露してもいる。よって当記事では、暫定的に4位として紹介させていただきたい。
第3位:物理攻撃無効の雪山を泳ぐ“スカッカム”
最強の定義を「死なないこと」「滅ぼされないこと」とするならば、『アイス・ジョーズ』(2013年)に登場する人食いサメ、“スカッカム”も強敵だ。
このスカッカムは、シャーマンの手で山奥に封印されていた亡霊だ(劇中では精霊とも)。
ある日、ひょんなことからこの世に再び解き放たれてしまったスカッカムは、サメの姿で雪の中を泳ぎ、ゲレンデで大虐殺を開始する。なぜ山奥に封印されていた亡霊がサメの姿をしているのかはよくわからないが、とにかく血に飢えたスカッカムは、観光客をパクパク捕食していく。
そして、亡霊なので当然物理的には殺せない。少なくとも、劇中では人類側の反撃をものともせず、雪山を舞台に暴れ回る、無敵じみたサメなのだ。
さて劇中では無類の手強さを見せたスカッカムだが、殺せはしないにせよ、一応封印という対処法は確立されている(しかも山奥に倒れているトーテムポールを立て直すだけというお手軽さ)。
そして行動範囲が非常に限定的な一地域に留まっている点を考慮し、あえてこの順位とする。
第2位:逃げる隙ナシ! 寝ても覚めても襲ってくる“カウフフ”
眠ったが最後、夢の中で殺されると本当に死んでしまう。恐るべき巨大モンスターが『ジョーズ・キング・オブ・モンスターズ』こと別題『ナイトメアシャーク』(2018年)に登場する伝説の化け物、“カウフフ”は外せないだろう。
このサメはただのサメではない。夢と現実世界の狭間に潜むファンタジー生物であり、人の見る悪夢を介してこの世に現れ、獲物を襲うという、摩訶不思議な能力を持つサメなのだ。
そして夢の世界を自由自在に支配するカウフフは、さながら『エルム街の悪夢』に登場するフレディ・クルーガーがごとくやりたい放題。さらには、悪党(人類)と手を結び、本格的な現実世界への侵攻まで企むという、軟骨魚類らしからぬ野心も加点ポイントである。
ただしこのカウフフ、壮大な設定に反し、劇中での被害規模は、とある診療所を訪れていた男女数名を殺害しただけ。だからといって怪獣じみた大暴れをされても困るが、凄まじい前評判の割には少々パンチが弱い気もする。
ちなみに厳密にはサメそのものというよりも、「サメの姿をしているだけの、まったく生態が異なる怪物」のように思われるのだが、そんなことを言い出したらほかのサメ映画に登場するサメだって五十歩百歩の化け物に違いないため、今回は不問とする。
第1位:倒してもクローンで復活、被害規模は地球が滅ぶ寸前“メガ・シャーク”
そして堂々の第1位には、現在4作目までリリース済みの長寿タイトル、通称メガ・シャークシリーズから、巨大ザメ“メガ・シャーク”を推薦したい。
その比類なき巨体で、毎度戦艦や戦闘機を相手に大立ち回りを演じ、そしてライバルの巨大タコやワニ、ロボと死闘を繰り広げている、サメ映画屈指の大怪獣だ。
さてこのメガ・シャークだが、たとえばスカッカムのように不死身でもなければ、カウフフのような特殊能力も持ってはいない。『シャーク・ハンター』のメガロドンと違って、人類側が仕掛けた罠にはしばしば引っかかるし、シリーズを通して毎回しっかり撃退されている。
それではなぜメガ・シャークを1位に推しているのか。
それは被害規模の大きさだ。このメガ・シャーク、出現するたびに世界各国を荒らし回り、当然のように膨大な犠牲者を出し、ついには世界経済を停滞させるレベルで、地球文明をボロボロに追いつめている。
ただでさえ頑丈でしぶといというのに、「単為生殖で、死ぬ間際に己のクローンを産み落とす」なんて(続編を作るのに便利な)設定まで存在しているため、根絶も至難。おまけに、ちょっとした船くらいならたやすく空の彼方まで吹っ飛ばしてしまうパワーもサメ映画随一。まさに王者の貫禄だ。
「死なない」サメや、「劇中で負けていない」サメに比べると、戦績の悪さが気になるところだが、逆に言うとそれ以外の部分では、一個体として圧倒的である。
なお、「サメの強さ=映画の面白さ」ではない。このランキング上位の作品が特別面白いかというと、必ずしもそういうわけでもない点には気をつけよう。
文/知的風ハット サムネイル/Shutterstock