国生さゆり58歳、自身初の小説がマンガ化…「うちでは無理です」と断られ、語彙力のなさに「泣きながら書いた」それでも書くことをやめなかった理由
国生さゆり58歳、自身初の小説がマンガ化…「うちでは無理です」と断られ、語彙力のなさに「泣きながら書いた」それでも書くことをやめなかった理由

伝説のアイドルグループ「おニャン子クラブ」の元メンバーであり、女優・タレントとしても活躍する国生さゆりが、今年でデビュー40周年を迎えた。近年、執筆業にも力を注ぎ、コロナ禍から小説を発表しており、今年1月には自身初の小説『国守の愛』がマンガ化された。

「小説を書くことで救われた」と語る、国生。執筆にかける熱い思いを聞いた。(前後編の後編)

国生さゆりが筆をとった理由

国生が、小説を初めて世に発表したのは2021年。小説投稿サイト「小説家になろう」に、本名である國生さゆり名義で長編SF小説「国守の愛」シリーズを投稿した。

「書き始めたのは、コロナ禍でした。突然、先が読めない毎日で、みなさん1人になったじゃないですか。そんなとき、私は性格上、自分と向き合うんですよ。いつも『なんで』とか『どうして』と思っちゃうんです。

孤独な毎日のなかで、そんなことを自分のなかに落とし込んでいたときに、国生さゆりというタレントに恩返しというか、『国生さゆりにはこういう一面もあったんだ』ってなにか残しておきたいと思ったんです」

国生といえば、バラエティ番組『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)などで見せた、物怖じしない強いキャラクターを思い出す人も多いだろう。

「私は好きなことしてね、好きなように遊ぶというか、振る舞っていたっていうイメージを持つ人もいると思うんです。

でも、人にはいろんな面がある。私もただ好きなところにふらふらと飛んでいって、何かをやって傷ついて、帰ってきただけの人じゃない。傷つくところは傷ついて、考えるところは考えて、反省もしている。

心のうちにはいろんな面があったから、小説のような作品が残せるようになっていたんだねっていうふうに思ってほしかったんです」

だが、当初は自身で小説を書こうとは思っていなかった。

「最初から、小説を自分で書きますみたいなことじゃなくて、コンテみたいな感じで、自分の思いを書きためていたんです。

それを基にライターさんだったり、脚本家さんだったり、随筆家の方だったりにお任せしようと思っていました。

でも、人に熱く思いを伝えたい性格なので、書きためたものがいつの間にかすごい量になってしまい、自分でやることにしました(笑)」

国生にとって、執筆は未知の世界。「文章で伝えることがもどかしく、泣きながら書いたこともある」という。

女優業を経験しているからこその苦労

「まず何が大変だったかというと、語彙力というか、文章力がないので、自分の頭の中にあるビジョンを落とし込む言葉が見つからないこと。

例えば、女の人が階段を上がっているとしたら、どういう階段で、どういう足さばきで、腕をどういうふうに振ってるのか、顔はどこを見てるのか…どういう女性だというイメージはあるんだけど、それを文章にできなかったんですよ。

それまで、人と関わって、自己表現するのが仕事だったんだけど、今までちゃんとした言葉でのコミュニケーションができていなかったんだな、なんて思ったりしましたね」

女優業を経験しているからこその苦労もあった。

「あとは句読点をどこで打つかですね。私はセリフをずっと喋ってきましたけど、台本に書かれている句読点はブレスの位置。セリフの感覚で小説を書くと、句読点の多い文章になってしまったんですよ。

作品を発表したときに、『やっぱりセリフで喋っていたから句読点多いのかな』というコメントをいただいて、そこでハッと気づいたんです。

小説での句読点は、場面が微妙に変わるときに打つものだっていうことを、文章を書きながら覚えていきました。

ただ、句読点を入れずに引っ張りすぎると、今度は情報量が多くなるので面白くなくなる。小気味よく展開していくことができずにもどかしかったです」

今年1月には小説が、『国守の愛~群青の人・イエーガー~』のタイトルで縦読みマンガ化され、 DMMブックス、LINEマンガなどにて配信された。小説を形にする以上に、達成感を感じているという。

「私としては、自分が書いた小説は書籍化したいわけですよ。でも、あの文章ではまだ無理な話だということもわかっています、自分で。

私、自分で出版社さんに原稿を持ち込んで、担当の方から面と向かって『うちでは無理です』と断られたこともあるんです。

でも、マンガでは絵があって、セリフが書いてあるので、みなさんに伝わりやすい。まだ原作は続きがありますので、それをまた続けていきたいと思っています」

「運に自分を任せるのに疲れていた」

小説の発表、そしてマンガ化という結果を残したことは、これまで続けてきた芸能界の仕事への向き合い方にも変化が生まれた。

「芸能の仕事にすがりつかなくなったんです。それしかないから、すがるじゃないですか。今でも、仕事はいっぱい欲しいと貪欲に思っています。

でも、演技やバラエティのお仕事って、時の運だったり、なにかの事情だったり、誰かの気分だったりで変わるもの。

選んでもらうために、例えば細かいことで言うと、体重管理だったり、食べ物に気をつけたり、規則正しい生活を続けて待つわけじゃないですか。

でも、そういう運に自分を任せるのに疲れていた部分があったんです。

正直あまりよくないですけどね、こういうことを言うのは。お仕事をいただいてる側なので。

でも、やっぱり仕事を待つだけだと、飢えるんですよね、心が。だから、それも緩和したかったんだと思う。すがらないように」

芸能活動と執筆活動という2軸を得た今の状況について、「すごくバランスが良くなった」と分析する。

「かっこつけた言いかたですけど、小説は生み出すことなので、楽しいだけじゃなくてね、いまだにやっぱり吐くような思いなんですよ。言葉探してね、心を濁す澱(おり)みたいなものを出して、正常化というか、バランスをとっているので。

今でも主演女優になりたい、トップ女優になりたいって夢を描くわけですよ。でも、それをずっと待っていても、もう私には無理って思ったりしてる自分もいる。

でも、小説を書いて、マンガを発信することで、これまでの私とは違う面も取材していただけるわけじゃないですか。

そうすると、また嬉しくなっちゃうでしょ(笑)」

今年はデビュー40周年、来年はソロデビュー40周年。過去に自分が行なってきた人生の選択については「後悔の塊」と表現する国生だが、この先の展望については目を輝かせながら夢を語る。

「ちょっとダサいこと言っていい?(笑)

まず、執筆では成熟したものが書けるようになりたい。『国守の愛』についてはマンガ化という夢を1つ叶えたので、次はアニメ化、実写化。それは演者としてじゃなく、地に足のついたプロデューサーとして、現場に携わりたい。

『国守の愛』のマンガを世界配信もしたいですね。なんで縦読みを選んだかっていうと、セリフを入れ替えるだけで世界に配信できるからなんですよ。

そして、引っ張りだこのタレントさんになりたい(笑)。

自分の中で、本線はやっぱり芸能なんです。芸能、芸能、芸能っていう状況では視野が狭くなるし、苦しくなるので、軽やかに笑顔で楽しく取り組むためにも、1人でもんもんと文字を積み重ねていくことにも取り組んでいきたい 。

今さら、売れたいとか、何を言ってるの?って話ですけど、やっぱり売れたいな(笑)」

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取材・文/羽田健治 

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