〈猫の日に大バズリ〉「にゃポロ」「ピザキャット」…企業SNS投稿はエイプリルフールを超える定番に? 「流行を意識していますか?」各社の見解を聞いてみた
〈猫の日に大バズリ〉「にゃポロ」「ピザキャット」…企業SNS投稿はエイプリルフールを超える定番に? 「流行を意識していますか?」各社の見解を聞いてみた

4月1日のエイプリルフールに、企業のSNSアカウントがこぞって“ネタ投稿”を行う光景は、誰しも見たことがあるだろう。ところが、近年は2月22日にもこうした投稿を行う企業が増えており、こちらが“新定番”となりつつある。

 

“猫の日”はエイプリルフールを超える? 企業アカウントで大ブーム

エイプリルフールに企業のSNSアカウントが“ネタ投稿”を行う文化は、X(当時はTwitter)が爆発的に普及した2010年頃に始まったと言われている。

たとえば、特撮で有名な円谷プロダクションは同年4月1日、ウルトラヒーローらがリプライで会話を行う「円谷ッター(つぶったー)」を開催し、情報番組で取り上げられるなど話題を集めた。

その後、企業によるエイプリルフール投稿は広く行われるようになり、なかでも“架空商品”の告知は定番ネタと化している。

しかし、次第に「おもしろくない」という反応も増え始め、集英社オンラインでも、お笑いコンビ・金属バットが「エイプリルフールは企業がツイッターでスベる日」とプロ目線で指摘するなど、ブームは下火になっているとの声は多い。

一方で、同じ“ネタ投稿”でありながら、エイプリルフールと対照的に盛り上がりを見せているのが、「にゃんにゃんにゃん」の語呂合わせで制定された「猫の日」の2月22日だ。

同日のXでは、企業アカウントが「#猫の日」というハッシュタグを用いて、猫をネタに投稿する様子が多数確認できる。

今年の猫の日でいえば、日本マクドナルド公式Xが、期間限定で販売中の「N.Y. バーガーズ」を“猫化”させた「ニャーニャーニャーヨークバーガーズ」を発表。セサミバンズが猫耳にかたどられた3品の画像を「※販売の予定はございません」といいう文言とともに投稿したところ、15万超の「いいね」(2月28日現在)を獲得する大反響を集めた。

虫除けなどでおなじみのアース製薬は、アカウントそのものを猫に乗っ取られたとして、アイコンからユーザー名、プロフィール文までをも“猫仕様”へと大胆に変更。 

人気即席麺のサッポロ一番も、猫風のパッケージにした画像を「※実際の商品ではございません」と投稿するなど、多くの企業が猫の日にあやかっている。 

クリスマスや正月、バレンタインなどに比べると記念日としての認知度は低いが、企業のSNSでは流行がうかがえる「猫の日」。

なぜこんなにも広がっているのか? 実際に“猫の日投稿”を行なった企業・ブランドの担当者にたずねてみた。 

「『猫の日』の盛り上がりが社会的に大きくなってきている」 

前述したサッポロ一番のXは、今年から猫の日投稿を始めたばかりだ。販売元のサンヨー食品・広報宣伝部に問い合わせると、始めた理由は「X 上では『#○○の日』投稿が盛り上がっていることを聞いたり、実際にXで目にしたりしていたので、今回チャレンジしてみました」とのことだった。

気になる反響については、なんと「これまでにはない手応えを感じています」とのことで、猫ネタがSNSユーザーに大ウケしていることがわかる。

続いて質問したのは、チョコレート菓子でおなじみの株式会社 明治。同社Xは猫の日にあたり、「※フィクションです」としながら、看板商品の「アポロ」「きのこの山」「たけのこの里」に耳や尻尾が生えた架空商品を公開。商品名も「にゃポロ」「きのこのにゃま」「たけのこのにゃと」と猫風にしたところ、4.6万もの「いいね」を獲得した。

明治の広報担当者によると、猫の日投稿は「2023年から実施し、今回で3回目となります」とのことで、実施理由については、「みなさんにほっこりしていただきたい想いで」と答えている。

一方で、「近年、X上でも猫の日が毎年盛り上がっていることから、明治アカウントでも波に乗ろうと挑戦しました」「『猫の日』の盛り上がりが社会的に大きくなってきていると感じています」など、やはり流行を意識している旨も説明してくれた。

アカウントが猫に乗っ取られたという投稿をしたプッチンプリンの販売元・江崎グリコも「初めて猫の日投稿をしたのは2021年ですが、継続的に毎年投稿をしているのは2023年からとなります。世の中の猫人気を受けて投稿を毎年恒例としました」と回答。

どうやら、ここ数年のSNSで、猫の日がブームになっていることは間違いないようだ。一方で、他社に先駆けて猫の日に取り組んでいた企業は、この現象をどう捉えているのだろう。

“猫の日の老舗”といわれている宅配ピザ大手・ピザハットにも質問をしてみた。

同社はブームになる前から「猫の日」の企画を実施しているのだが、広報担当によると、始めたのは10年以上も前。

2014年、店名にかけた「ピザキャット」というキャンペーンを開催し、2017年以降は毎年行なっているという。

特筆すべきはその本気度。なんと、ピザハットは猫の日キャンペーンとして、キャットフードのプレゼント企画なども行なっているのだ。

猫にちなんだ投稿をするだけの企業も多いなか、ひときわ異彩を放っているピザハット。なぜこんなにも力を入れているのかたずねたところ、担当者は「猫ちゃんもご家庭の家族の一員ですので、こういった取り組みがブランドへの好感・共感を生み、第一想起につながればと考えております」と説明してくれた。

同じ“ネタ投稿”でもエイプリルフールとの差別化は?

思惑は各々あれど、猫の日にユーモラスな投稿をすることを推し進めている各企業。一方で気になるのは、同じくユーモアに富んだ投稿を行うエイプリルフールとの兼ね合いだ。

前述のように、エイプリルフールの日の企業アカウントの投稿では、架空商品の告知が定番になっている。また、猫の日からエイプリルフールまでは1カ月ほどしかなく、“同じようなことをしている”との印象を与えないよう、必然的に差別化が求められることにもなる。

担当者はアイデアを絞るのにひと苦労に思えるが、差別化ではどんなことを意識しているのか。この点についても質問してみることにした。

明治は昨年のエイプリルフールに架空商品「宇宙限定アポロ」の発売を告知しているが、広報担当者は、「エイプリルフールは、くすっと笑えるおもしろさを、猫の日はかわいさを追求しています」など、それぞれに異なる“作風”があると教えてくれた。

その違いゆえか、ユーザーの反応もエイプリルフールと猫の日で異なるそうで、「より自分ゴト化された(一緒に盛り上がる)コメントが、猫の日にはさらに多くあったように思います」と振り返っている。

同様の質問を“猫の日老舗”のピザハットにも行なったが、こちらも、「エイプリルフールは『驚き!おもしろい!=ワクワクをくれるブランド』、猫の日は『猫かわいい!わかってるね、ピザハット!=共感できるブランド』」など、各日で意識する点が異なることを明かしてくれた。

近年、日本では、クリスマスよりハロウィンのほうが盛り上がっていると指摘されることが増えている。同様に、猫の日もエイプリルフールを超えるイベントににゃるのだろうか。

取材・文/久保慎

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