
3月31日より、NHK連続テレビ小説『あんぱん』の放送がスタートした。初回視聴率は前作『おむすび』以下となったが、早くも、朝ドラ史に残る名作になりそうだと期待の声が上がっている。
初回視聴率は『おむすび』以下だが……
朝ドラ『あんぱん』は、国民的アニメ・マンガ『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと、その妻・小松暢(のぶ)の夫婦がドラマのモデル。
生きる意味を失っていた苦悩の日々と、それでも夢を忘れなかった二人の人生。何者でもなかった二人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでが描かれる。
作中では、やなせは柳井嵩(たかし)、暢は朝田のぶという名前で登場し、それぞれの青年~大人時代を俳優の北村匠海、今田美桜が演じる。
第1話では、晩年の嵩とのぶが登場。嵩が『アンパンマン』を描いているところに、のぶが朝ごはんを一緒に食べようと呼びかけに来る。舞台はそこから一気に時が戻って昭和初期、小学校で二人が出会うシーンからストーリーが始まった。
アンパンマンという超キラーコンテンツの誕生物語として大注目を集めている同作は、ドラマの舞台となる地元・高知地区での初回平均世帯視聴率が26.2%(ビデオリサーチ調べ、以下同)と、すさまじい記録を打ち立てた。
一方で、基準となる関東地区の初回視聴率は15.4%(以下、視聴率の数字は関東地区)。前作の『おむすび』が初回16.8%であったため、数字を下げることになった。これだけ見ると、大注目とまでは言えないような気もするが……。
「朝ドラの初回視聴率は、前作の評判に大きく左右されます。『おむすび』の初回がよかったのは、前々作の『虎に翼』が大ヒットしたからであり、『虎に翼』の最終回視聴率は18.7%でした。
つまり『おむすび』初回は、前作の最終回よりも数字を2ポイント以上下げており、『あんぱん』初回は、前作の最終回より約3ポイント上げています。これだけで、いかに『あんぱん』に対する期待値が高いのかがわかります」(テレビ局関係者、以下同)
違和感ある“主題歌”こそが物語のカギ?
『おむすび』と『あんぱん』には、対極的すぎる点がいくつもある。まずは主人公。『おむすび』は架空のキャラだが、『あんぱん』には確固たるモデルがいる。
そしてドラマの序盤については、『おむすび』はヒロインの高校生時代からスタートし、子役を立てずにいきなり主演の橋本環奈が登場する。一方で『あんぱん』は小学生時代からスタートし、子役を立てている。
現代劇の『おむすび』、昭和を描く『あんぱん』。コメがメインの『おむすび』、パンがメインの『あんぱん』などなど、意図的に対比させているようにも思えるほどだ。
「両作の比較の中には、『おむすび』が若者向けのチャレンジングな内容だったのに対して、『あんぱん』は王道の朝ドラだという声もありますが、こちらに関してはやや疑問があります。
それはオープニング映像の異質感です。『あんぱん』のオープニングはロックバンド・RADWIMPSが歌っており、非常に現代的でスタイリッシュな音楽で、映像もそれに合わせてCGを多用した、まるでMVのようなおしゃれな仕上がり。
ネット上では、『あんぱん』の内容とミスマッチだという指摘が多くありますが、これが本作のミソになるような気がします。RADはさまざまな劇中歌を手掛けている実績があり、作品にミスマッチな曲を作るとは思えない。つまりこれからの展開で、このザ・朝ドラと思われていた『あんぱん』が、スタイリッシュな作風に変化していくのではないかと」
ネット上でも、主題歌に着目する声は多い。
〈主題歌のギャップがおもろい 慣れるまで時間かかりそう あんぱん食べたい!〉
〈おっ、ついに主題歌にRAD来た! と思ったら思いのほかRAD節だったのでお年寄りがついて来れるのかしら〉
〈この曲がこれからあんぱんの物語にどう寄り添っていくか楽しみ〉
〈あんぱんの主題歌とオープニングをあのテイストにした理由が知りたい。そこまで悪いとは思わないけど、何を狙っているのだろう〉
ドラマの盛り上がりとともに、主題歌と内容が見事にシンクロしていけば、『あんぱん』は正真正銘の朝ドラ史に残る一作になるだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部