「県警の不正は事実」「政倫審は“いじめ”だと感じている」“自称・斎藤知事選対本部”の姫路市議(30)が会見で県警との“全面戦争”を宣言〈兵庫県政・大混乱〉
「県警の不正は事実」「政倫審は“いじめ”だと感じている」“自称・斎藤知事選対本部”の姫路市議(30)が会見で県警との“全面戦争”を宣言〈兵庫県政・大混乱〉

昨年11月の兵庫県知事選で兵庫県警内部に斎藤元彦知事以外の候補者を応援せよとの通達が出ていたとSNSで主張した高見千咲・姫路市議(30)。高見氏は4月21日に記者会見し、通達が出たことは「事実」で、自分の主張は「注意喚起になった」と発言した。

知事選を巡っては斎藤知事の対立候補に関する虚偽事実が拡散された問題の捜査が水面下で進んでいる。その県警が組織ぐるみの選挙不正を行なったと断定した高見氏の発言は、県警との全面戦争の宣言と受け止められている。 

「聞いたのは1名なんですけれども、その方は複数名に確認された」

「私が聞いたのは1名なんですけれども、その方は複数名に確認されたと言ってました。そのお話を聞いた時点で信頼できるソースだと判断したので事実を皆さんに広く知っていただきたいというところがあり発信しました」

会見で高見氏は、事実なら警察の信頼が失われる大スキャンダルになる情報を、聞いてすぐに発信したと話した。

地元記者は「高見氏は、情報源は現役警察官を含む複数名から情報を得ていると説明しました。しかしそれを確認する作業もしていません」と話し、高見氏がたった1人から聞いただけの話を拡散させたことに驚きを隠さない。

まず高見氏の問題のポストと記者会見に至る経緯を振り返る。

斎藤知事が返り咲きを目指した昨秋の選挙選では、「斎藤知事を応援する」と言って立候補した立花孝志NHK党党首が「斎藤知事の疑惑は嘘で、彼はハメられた」と主張した。

選挙中から、斎藤知事の疑惑を調べた県議会調査特別委員会(百条委)のメンバーだった竹内英明元県議らは、斎藤知事を攻撃した“黒幕”と名指しされ、猛烈な誹謗中傷にさらされた。

竹内氏は「家族を守りたい」として県議を辞職した後の今年1月18日に急逝する。自死とみられている。

その直後に立花氏は「竹内氏は逮捕される予定だったようです」と主張。これに兵庫県警の村井紀之本部長(当時)は1月20日に「全くの事実無根。

明白な虚偽」と県議会で述べ、完全否定した。

同日夜、「私は選対本部の人間」と称し斎藤知事を応援していた市議1期目の高見氏は、〈そもそも、兵庫県警の内部では知事選において、特定候補(斎藤知事ではない)の応援をするように通達されていたと聞いたんですけど〉とXに問題の投稿を行なった。

「まるっきり荒唐無稽な妄想」(県警担当記者)に怒った兵庫県警は、当時高見氏が所属していた自民党県連にポストの削除と訂正を求めた。

しかし、高見氏はさらに〈認めるわけないやろw 否定してるからって、事実じゃないってことにはなりません~〉と、県警を愚弄するポストを投稿した。

「有力政治家が後ろ盾にいるとみられる高見氏ですが、市議会も看過できなくなり、政治倫理審査会が設けられました。昨年11月以降、体調不良を理由に県議会本会議を休んでいる高見氏は弁明に現れず、政倫審は高見氏が昨年10月ごろからSNSで不適切な投稿を繰り返し、議会の品位と名誉を害したことなどが政治倫理条例に違反しているとし、辞職勧告が相当だと3月7日に決定しました。これを受け市議会本会議は3月26日に辞職勧告決議を可決しました。

有力政治家が見放したのかどうかわかりませんが、高見氏は自民党会派も離れました」(地元記者)

警察からのポスト削除要請は「言論弾圧にもなる」

高見氏は決議当日に「間違ったことは一切していないという認識は変わりません。今後も議員としての職を全うしていく所存です」とXにポストし辞職しないことを表明。

4月21日の会見でも高見氏は、

「(政倫審の)報告書の中に事実認定が全く抜け落ちていて、私自身もいまだに何が違反とされているのか、何をもっての辞職勧告なのかというのが分かっていない」

と述べた。

つづけて高見氏は、

「今回の政倫審というのは知事選の遺恨で、多数派によるいじめだと私は感じているんですね。それに屈するわけにはいかない」

と議会を批判した。県警に関する問題のポストについては最初に、

「当初私が発信したのは、あくまでもこういうふうな話を聞いたんだが、という(もので)断定的な口調では書いていないものになるんですね」

と述べ、伝聞だと“逃げ”をうった。

さらに、

「本部長が否定されてましたけれども、私の発信は本部長からの通達があったとも言っていないし、県警の中の一部の署や一部の部署だったかもしれないです。私自身も分からない部分になるんですけれども。警察内で調査も何もせずに本部長の方が否定されたことにも疑問を抱いています」

と発言。あったと主張する「通達」がどのようなものかは分かっていないが、調べない警察がおかしいと言い立てた。警察からのポスト削除要請は「言論弾圧にもなる」と言い、拒否すると宣言した。

最後は対決姿勢をむき出しにした高見市議

ここで記者からは、一人から聞いただけで確認もしていない話を流布してよかったのか、との質問が出る。これに高見氏は、

「特に問題はなかったと思いますね。事実としてそういう動きがあったという風なことを考えると、県警で今後もそういった動きがあったら問題だと思うので、注意喚起にもなったかなと思うので」

と答え、通達の存在は事実で自分はそれを正したと強調したのだ。

県警担当記者は「最後は対決姿勢をむき出しにしました。捜査を牽制する意図かもしれません」と話す。

牽制とは何か。

「知事選では序盤で斎藤知事より優位とみられていた前尼崎市長の稲村和美候補に関し様々な虚偽情報がSNSで流されました。

これが公職選挙法上の虚偽事項公表罪に当たる可能性があるとみる県警は捜査を続けています。例えば、稲村氏に関するデマの代表的なものは『稲村氏は1000億円をかけて豪華な県庁舎を建てようとしている』というものです。

そして選挙中に高見氏も〈稲村政権になったら県立大無償化がチャラになって、県庁舎に1000億使われるって分かってる人でも、旦那の会社に言われたからって稲村氏にいれてしまった。この候補に入れましたという誓約書まで出さされるらしい…。〉とXにポストしているのです。このポストは捜査の視野に入っているとみられます」(同記者)

知事選から間もなく半年。県政の混乱が激化する一方の兵庫県で、選挙の暗部はいつ明らかにされるのか――。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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