元TBSアナ・伊東楓が画家へ転身したワケ「私は誰かの代弁者ではない」…アナウンサー時代の貯金を切り崩しながらも続けてつかんだ夢
元TBSアナ・伊東楓が画家へ転身したワケ「私は誰かの代弁者ではない」…アナウンサー時代の貯金を切り崩しながらも続けてつかんだ夢

元TBSアナウンサーで、画家として活躍する伊東楓さん(31)。現在はドイツ・ベルリンを拠点にしながら、アメリカで活動を展開している。

伊東さんがTBSを退社して画家へと転身した理由とは何なのか。なぜ世界を渡り歩きながら創作を続けるのか。そして気になる現在の収入源について、伊東さん本人に話を聞いた。 

「すべて自分で決めて、その結果に全責任を負いたい」

伊東楓さんは2016年にTBSへ入社し、アナウンサーとして約5年間勤務したのち、2021年2月末に同局を退社。

現在は、黒髪のアナウンサー時代とは一変した金髪姿でSNSなどにも登場し、その変貌ぶりが話題を呼んでいる。

今回は、現在滞在しているというアメリカから、伊東さんにリモートで話を聞いた。

——そもそも、伊東さんがアナウンサーを辞めた理由は何だったのでしょう?

伊東楓(以下、同) アナウンサーは、ニュース番組では記者が書いた原稿を読み、バラエティ番組では作家が書いた台本を読む、という仕事ですよね。そうした日々を続ける中で、「これは自分の言葉じゃない」と強く違和感を覚える出来事があったんです。

それをきっかけに、「私は誰かの代弁者ではなく、自分の思っていることを自分の言葉で伝えたい人なんだ」と気づき、退職を決意しました。

私は「すべて自分で決めて、その結果に全責任を負いたい」という性格なんです。そもそも会社員という働き方が、自分には合っていなかったのだと思います。

——絵を描き始めたきっかけを教えてください。

アナウンサー時代、とある番組のコーナーで、ホワイトボードに即興で絵を描く役割を任されたことがあり、それがきっかけで絵の練習を始めました。

最初は「地上波で下手な絵は披露できない」という思いから、仕事の合間や夜中にデッサンやスケッチをしていたんです。

でも気づけば、アナウンサー時代に感じていた葛藤やモヤモヤを、全部絵にぶつけていたんです。絵を描いているときは無心になれたし、紙の上では何もかも自分の思うままに表現できた。

だからこそ、自分の中でバランスが取れていたんだと思います。それがきっかけで、「表現者になろう」と決めました。

トラブル続出のドイツ生活。ベルリンのホテルでは詐欺被害にも

——伊東さんはドイツに移住して約3年半とのことですが、そもそもなぜドイツを選んだのでしょうか?

「最初は、美術史が深く根付いているヨーロッパで暮らしたい」という思いがありました。

それまでドイツを訪れたことすらなかったのですが、「行ったことのない国に行きたい」という直感だけで選んだんです。

——ドイツに移住して、何か苦労したことはありましたか?

ドイツには友だちもいなければ、ドイツ語もまったく話せない状態で、どうやって生計を立てればいいのかすらわからないまま、「なんとかなるだろう」と思って移住したんです。

実際に暮らしてみると、やはり言葉や文化の壁にぶつかって、絶望することもありました。

今ではドイツ語も多少は理解できるようになりましたが、慣れるまでの最初の1~2年は本当に大変でした。トラブルも多く経験しましたし、孤独を感じてホームシックになることもありましたね。

 ——具体的にどのようなトラブルがあったのでしょうか?

たとえば、銀行口座を開設するのに苦労したり、ベルリンのホテルで身に覚えのないミニバー代を請求される詐欺に遭ったり…。自宅のアパートでも、雨漏りがあったり、Wi-Fiが頻繁に使えなくなったりと、トラブル続きでした。

でも、どんなにつらくても、家族や親友には弱音を吐きたくなかったんです。

自分の中で「3年は帰らない」と決めていたので、心配されて「帰っておいでよ」と言われるのが嫌で。だから、毎晩ひとりで泣いていた時期もありました。

描いた作品の価格は「だいたい8万円~100万円くらい」

——伊東さんは普段、どのような作風の絵を描いているのでしょうか? また、絵を購入されるのはどんな方が多いですか?

水彩画で、主に動物をモチーフにした作品を描いています。

アナウンサー時代から私のことを知ってくださっている方や、ニュース、インタビュー記事などをきっかけに作品を購入してくださる方が多いですね。

以前より応援してくれる方も増えていて、本当にありがたいですし、嬉しく思っています。

——絵の価格帯についても教えてください。

サイズによって異なりますが、だいたい8万円~100万円くらいの間で販売しています。

——ドイツに渡ってから今日までを振り返って、どう感じていますか?

最初の頃は仕事がまったく思うようにいかなくて、「3年経ったら絶対に画家なんか辞めてやる」と思っていました。

昨年まではアナウンサー時代の貯金を切り崩しながら生活していて、画家として収入が安定するようになったのは、本当にごく最近のことなんです。

でも、あのときの葛藤や焦燥感は、もう二度と味わえないものだと思いますし、その時期にしか描けなかった絵もあった。そう考えると、あの時間は私にとって必要なものでした。

だからこそ、私の人生において、ドイツはこの先も特別な場所であり続けると思います。

——伊東さんは現在、ドイツを拠点としながらアメリカに滞在中とのことですが、それはどうしてですか? また、今後の予定についても教えてください。

気がつけば、ドイツに移住して3年半が経ち、生活もすっかり安定してしまって……。でも私は画家なので、常に刺激を求めていたいし、変化し続けないとダメだと思っているんです。

ドイツは大好きですが、画家として進化していくには、新しい場所でインスピレーションを受けることがとても大切だと感じています。だから今後は、別の国への移住も視野に入れています。

今年からは、ベルリンに住民票を残しつつ、次なる拠点を探してさまざまな場所でトライアルしています。今年1月にはベトナムに1カ月間滞在し、今はアメリカ国内を転々としています。アメリカには、3カ月ほど滞在する予定です。

——最後に、今後の目標や夢を教えてください。

世界で活躍する画家になることです。私はもともと、渡り鳥のように世界中を旅しながら生きていくことが目標だったんですよ。ようやく画家として収入が安定し、それが叶えられるようになってきました。

あと海外で暮らしていると、日本の良さにもたくさん気づかされます。だからこそ、日本人としてのプライドを大切にしながら、国内外を問わず、絵を通して自分の思いを伝えていきたいと思っています。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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