
京都市左京区にある学校法人ノートルダム女学院が運営する京都ノートルダム女子大は4月25日、今年度の入学生を最後に募集を停止すると発表した。大学が多く集まる学生の街、京都でも知名度が高かったノートルダム女子大が4年後に姿を消すことに、地元や関係者の間でも衝撃が広がっている。
「近年は定員の7割しか入学者がいない状況」
「京都ノートルダム女子大は地元では“ダム女”と呼ばれ、京都女子大、同志社女子大と並んで京都の女子大の“御三家”的な存在で誰でも知ってます。どこもイメージがいい学校ですよ。かつてはこの御三家の学生と合コンができたら、それ自体がステータスになる、みたいな感じがあったほどです。そのダム女がなくなるなんて想像もしていませんでしたね」
京都の大学に通った50代の男性がそう話すように、同大の発表は驚きをもって受け止められた。同大は25日朝、学校法人が4月22日の理事会で学生募集停止を決めたとホームページで発表し、判断の理由を説明した。
〈京都ノートルダム女子大学は、創立母体であるノートルダム教育修道女会が掲げる『人が変われば世界も変わる』という言葉のもと、『徳と知』をモットーとする全人教育を教育理念として女子教育の重要性を説き、1961年に創立されました(中略)急速な少子化による18歳人口の減少など社会情勢等が変貌するなか、近年は入学者数が定員を下回る状況が続いており、大学存続のためあらゆる方策を進めてきましたが、2025(令和7)年度の入学生を最後に募集停止せざるを得ないという苦渋の決断に至りました。〉(同大HP)
入学者の減少はすでに10年以上前から懸案になっていた。2016年には当時の学長がメディアの取材に「近年は定員の7割しか入学者がいない状況」だと説明。
対処するため、17年度から3学部4学科だった過程を2学部5学科に再編。入学定員も16年度から60人減らして370人にし効率性を高めながら、京都の女子大で初めて特別支援学校教諭の資格を取得できる「こども教育学科」も備え大学の魅力を高めていくとも表明していた。
短大と女子大が厳しい状況にさらされている
当時の学長は「大学のブランド力を過信するあまり、時代のニーズに合わせて変革する努力を怠ってきたつけが回っている。変わろうと懸命に努力している」とも話しており、大学は生き残りをかけ変革を模索してきた。
だが2024年度の大学基礎データを見ると、2020年度には合計370人の入学定員に対し1494人いた志願者は、定員をさらに330人に減らした2024年度には304人にまで減少。入学者数は186人にとどまっていた。
大学によると、こども教育学科も2020年度を最後に募集を打ち切り、志願者増には結び付けられなかった。
少子化で学生の獲得競争が激しくなる大学業界では4年制大学志向と共学志向が強まっているとされ、短大と女子大が厳しい状況にさらされている。かつては短大や女子大は女性向けの求人や資格獲得に強みがあったが、そのメリットが薄れてきているとの見方がある。
文部科学省の集計では、短大の数はピークだった1996年に598校あったが、2024年には297校と半減。
「短大志望者に多かった保育士や幼稚園教諭になりたいという人が、少子化のために減り、さらに4年制大学進学者への奨学金など経済的支援が最近拡充されていることも4年制大学志向に影響しているでしょう」(全国紙記者)
次に逆風が強いのが女子大だ。
「女子大も1998年度には98校ありましたが、男女共学への転換などで2024年度には73校にまで減りました。しかもこのうち2校は募集を停止しており、25年度にはさらに5校が男女共学に変わりました。
男女共学の大学で入試に『女子枠』を設ける大学が増え、女子大が置かれている環境は厳しさを増しています」(全国紙記者)
「創立時の理念として、女子教育の重要性を説いてきました」
2023年3月には、東京都多摩市にある恵泉女学園大学・大学院が閉校に向けて24年度から学生募集を停止すると発表。
大学は「18歳人口の減少、とくに近年は共学志向など社会情勢の変化の中で、入学者数の定員割れが続き、大学部門の金融資産を確保・維持することが厳しくなりました」と説明していた。
ことし2月には、名古屋市昭和区の名古屋柳城女子大を運営する学校法人が、来年度から学生募集を停止すると発表した。同校は2020年4月に開校し、昨年3月に1期生が卒業したばかりだった。
もちろん、女子大も手をこまねいていたわけではない。
こうした変化で魅力を高めることに成功できるか。または男子学生を受け入れ共学化するか。女子大が生き残るにはこの2つの道しかないように見える。
京都ノートルダム女子大は共学化による生き残りは考えなかったのか。担当者は「本学の創立時の理念として、女子教育の重要性を説いてきました。その中で共学化の選択肢を敢えて取りませんでした」と説明した。
大学の街、京都から名門校が消えることで、大学運営の厳しさが改めて浮き彫りになっている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班