スクールバスで500日間の車中泊旅をしたカップルでもない男女のリアル「僕はずっと好きなんですけどね」…旅を終えた2人の関係を聞いてみた
スクールバスで500日間の車中泊旅をしたカップルでもない男女のリアル「僕はずっと好きなんですけどね」…旅を終えた2人の関係を聞いてみた

ボロボロのスクールバスをキャンピングカーに改造し、2022年6月から500日間にわたり日本各地を旅したというコージさん(42)と、さあやさん(36)。2人は「HAPPY CARAVAN」というアカウント名で、キャンピングカーでの生活や旅でのライフハックを、ブログやSNSを通じて発信している。

旅を始めたきっかけや車中泊生活のリアルについて、本人たちに話を聞いた。 

妻でも恋人でもない女性と、500日間の2人旅

取材班が訪れたのは、神奈川県の山奥にたたずむ一軒家。その敷地内には、ひときわ目を引く黄色いスクールバスが駐車されていた。 

このスクールバスの持ち主は「コージさん」。現在は美容室を経営しながら、この一軒家で友人たちとシェアハウス生活を送っている。コージさんは、過去に妻でも恋人でもない女性「さあやさん」と、500日間にわたり日本中を旅していたという。

今回はコージさんが暮らすシェアハウスにて、2人へのインタビューを行なった。

――スクールバスで旅を始めようと思ったきっかけを教えてください。

コージさん(以下、コージ) 2019年にファッション誌『VOGUE』で、ジャネル・イリアナさんという、ワゴン車で生活しているアメリカの女性が紹介されているのをたまたま見たんです。そこで「こんなカルチャーもあるんだ!」と衝撃を受けたのがきっかけですね。

もともと僕、遠出すると忘れ物が多いタイプなんですよ。それに、僕が経営している会社はコロナ前からリモートワークを導入していたこともあって、「車を自宅兼事務所にしてしまえば、それごと移動できて、忘れ物もなくて効率がいい!」と思ったんです。

僕、思い立ったらすぐ行動する性格なので、そのあとすぐに車探しを始めました。

ただ、車で生活するとなると“狭さ”がストレスになるだろうと思って……。そこで、「自家用車よりサイズが大きいスクールバスもアリかも」と考えました。

実際に購入したスクールバスは、身長180cm近い僕が立っても、頭が天井にぶつからないくらいの高さがあるんです。

――このスクールバスを選んだ決め手はあるのでしょうか?

コージ もともと車に特別興味があったわけではないんです。ヤフオクでたまたま見つけて、価格が安かったからというのが理由ですね。出品者の方と電話で話してみたら意気投合して、最終的に189万円で購入しました。

もともとは、シボレーの1987年式「シェビーバン」をスクールバス仕様にしたもので、長さ5.4m、幅2.4m、高さ2.6mもあります。

男女2人が“密室”で生活「ベッドで一緒に寝ていました」

――どうして夫婦でもカップルでもない2人が、500日間も一緒に旅することになったのですか?

さあやさん(以下、さあや) きっかけは、コージさんに誘われたことでした。ある日突然、「スクールバス買ったから一緒に日本一周しよう」って言われて、びっくりしました。

コージさんとは仕事を通じて知り合って、もともと仲のいい友達だったんですけど、付き合ってもいない男性と一緒に旅するなんて、さすがに難しいと思って。最初は断ったんです。

コージ さあやはもともと旅が好きで、1人で新幹線に乗って日本全国を回るつもりだったそうなんです。逆に僕はもともとインドア派で、「1人旅は無理だな」と思っていたので、さあやを誘いました。

1人で旅してもきっとつまらないだろうなとも思っていたので、ひたすら2人で旅するメリットを語って、さあやを説得しました。

さあや 私は日本一周するために、美容師の仕事を辞める決心をしていたんです。そんなときにコージさんから「旅費はすべて俺が負担するし、運転もするから、乗っているだけでいい」と言われました。

何度も誘われるうちに気持ちが変わっていって、最終的には「スクールバスをちゃんと改装して、過ごしやすくすること」を条件に、2人で旅することに決めました。

コージ 僕は最初、「寝袋とスーツケース、あとは生活に必要なものだけ積んで行けばいいじゃん」と思っていたんです。でも、「さあやに来てもらうからには、ベッドやキッチン、収納棚があったほうがいいよな」と考え直して、2人でスクールバスをDIYすることになりました。

――スクールバスの改装費はいくらかかりましたか?

コージ バッテリーとソーラーパネルだけで、50万円くらいかかりましたね。ほとんど人の手を借りずに、ネットで調べまくって2人で改装したんですが、合計すると車体と同じくらいの費用がかかりました。改装にかかった期間は、約2カ月です。

 ――男女2人が500日間、密室で過ごしていて、ストレスを感じませんでしたか?

さあや 正直、ストレスを感じるときもありましたね。コージさんがオンラインゲームにハマっていた時期があって、毎晩ずっと隣でパソコンをカタカタされていたときは、寝られなくてフラストレーションがたまりましたね。

コージ あの時期は、会話すらなくて、すごく険悪な雰囲気だったよね。

今思えば、本当に申し訳ないことをしたと反省しています。

さあや でも、それ以外で大きなケンカはなかったよね。旅先でコージさんが日中に車内で仕事をしている間、私は1人で行動することが多かったんです。意識的に「1人の時間」を大事にしていました。

――着替えや寝るときは、どうしていたのですか?

さあや 着替えは、どちらかが外に出ているときや寝ているときに済ませていました。私はあまり気にしない性格なんですけど、お互いのことを考えて、なるべく配慮するようにしていましたね。

コージ 寝るときは、折りたたみ式のソファーを展開して組み立てたベッドで、一緒に寝ていました。

旅を終えた2人の関係「付き合ってはいないけれど……」 

――旅の間、何かトラブルは起きましたか?

コージ 古い車なので、雨漏りしたり、故障して路上で動かなくなってレッカーされることは何度かありましたね。

さあや 一番ピンチだったのは、火事になりかけたときだよね。運転席の上に、スクールバスとして走っていたときの配線が収納されている場所があって、そこが運転中にショートして発火してしまったんです。火が出た瞬間は、本当にパニックになりました。

コージ 僕の頭の上で火が出ていたのに、運転中だったから全然気づかなくて。

さあやに言われて、ようやく気づきました。「あのとき、さあやがいなかったら、僕は死んでいたかもしれない」と本気で思いましたね。

幸いにも車は普通に動いたので、すぐに安全な場所に停めて、給水タンクの水をかけて消火しました。あのときは、本当に怖かったです。

さあやさん 車内に煙が充満してしまったので、すぐに窓を開けました。発火に気づいたときは、「死にたくない」という一心で、逃げ出したくなりましたね。爆発しなくて本当によかったです。

――500日間の旅を終えて、2人の関係は変わりましたか?

さあや これまでも、これからも、変わらず、ずっと友だちです。そもそも私、人のことをあまり好きにならないんですよ。男性に対してときめくことが全然なくて……。

コージ 僕は、ずっとさあやのことが一人の女性として好きですけどね。旅を終えてからは離れて暮らしているんですけど、今でもめちゃくちゃ仲がよくて、毎日LINEや電話で連絡を取り合っています。

付き合ってはいないけれど、僕は恋人のように接していますね。

――最後に、今後やってみたいことについて、それぞれ教えてください。

さあや 将来的に、ときめく人に出会えたら結婚したいです。結婚には夢を抱いているので、まだあきらめていません。

コージ 僕は、さあやと出会う前に別の女性と結婚したことがあって、子どもも3人いるんです。長男がスクールバスでの旅に興味を持っているみたいなので、今度は息子と一緒に、日本全国を一周してみたいですね。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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