食事をおごられたら翌日にお礼は必要? 「当日いえば十分」「“ごますってる感”が出る」と否定的な20代、「何もお礼がないのはモヤる」40代
食事をおごられたら翌日にお礼は必要? 「当日いえば十分」「“ごますってる感”が出る」と否定的な20代、「何もお礼がないのはモヤる」40代

食事をおごった翌日、お礼の一言もない若者たちにモヤッ…。そんなXの投稿がネットのまとめサイトで話題になっている。

「当日言えば十分?」それとも「翌日も言うべき?」世代間の価値観ギャップを20代~40代の男女に聞いた。 

3回目のお礼はくどい!? 若者たちのリアルなお礼感覚

《むかし若いやつらにメシをおごって、翌日にその子たちにあったらまったくそのことに触れずに普通の会話してきたので「それどうなん?」と愚痴ったら「勝手におごってお礼を求めるなよ」と大人に怒られたことがある。おれは一言でも礼をいう方がその後のコミュニケーションに役立つよ、とは言いたい。》というXの投稿がネットのまとめサイトで話題となっていた。

ポスト主は、過去に若者に食事をおごった翌日、そのことに一切触れずに“通常運転”で会話をしてきた若者たちに対し、モヤモヤを感じたという。

これに対し、リプライ欄には「当日言えば十分でしょ」「お礼って強制されるもの?」「勝手におごっておいてお礼を求めるな」といった声から、「めっちゃわかります!」「それ以降その人にはお金も時間も使わなくなる」という共感まで、意見が真っ二つに割れている。

ネット上ではさまざまな意見が飛び交っているが、実際に若い世代の人はどう感じているのだろうか。医療系企業で営業職として働く20代男性は、上司におごってもらったときのお礼の仕方についてこう話す。

「その場で“ごちそうさまでした”と伝えるのは当然ですし、メールでも帰っている時に一言送ります。でも、翌日に会ったときには、わざわざもう一度伝えるかと聞かれると、正直“うーん”って感じですね。

二人きりのときなら話の流れで自然にお礼を言いやすいですし、伝えるようにはしていますけど、ほかに人がいたらちょっと言いにくい。なぜなら、その場にいなかった人からしたら『え、自分はおごってもらってないけど?』って思われかねないじゃないですか。自分が“おごられた”ことをマウントしているように見られるのがイヤなんです」

では、おごってくれた相手に翌日会えなかった場合、次の機会に改めて伝えるのだろうか?

「話の流れやタイミング次第で伝えることも多いですが……わざわざ数日経って“あのときはありがとうございました”と改めて言うのは、“ごまをすってる感”が出る気がしてしまいます。

『また連れてけってアピールかよ』って思われたらイヤですし。“その場で言って、当日中にメッセージも送ってるのに、さらに数日後にもう一回お礼って、くどくないか?”とか、“そこまで丁寧にすると逆にキモくないか?”といろいろ考えてしまいます」

回答からは、相手からの見え方、周囲の目を気にしながら“空気を読む”ことを優先する感覚が垣間見える。

「お礼は言うけど、気負いすぎたくない」

一方で、病院に勤務する20代の女性は、クリニックの院長(60代)に食事をごちそうになる機会が多いという。

「会計のときには必ずお礼を伝えますし、そのあとLINEで一言添えることもあります。会食はクリニックの休診日前日に開かれることが多いので、翌日に院長と顔を合わせることはあまりないんですけど、後日会ったときには挨拶のついでにサラッと伝えるようにしています。

今後の関係性を考えても、お礼はあったほうがいいと思いますし、単純に言われたら嬉しいだろうなと」

クリニック内では20代~30代の女性が多いそうだが、他の人はどうしているのだろうか。

「スタッフは7人くらいいますが、そのなかで後日あらためてお礼を言っているのは、私を含めて3人くらいですね。院長自身が“会食が好き”“飲むのが楽しい”ってタイプなので、職場全体として“楽しく飲む場”という空気が強くて、お礼を“当然のマナー”として求めている感じはしません。

だから、後輩が何も言わなくても注意されるようなこともないし、そもそも会食に参加しない人もいます。

私自身も、最初の頃はおごってもらうことにすごく申し訳なさを感じていましたし、気を遣いすぎて楽しめていなかったんですが、院長と関係性が築けてからは、自然に楽しめるようになっていきました。

お礼をどうするかって、“その人のスタンス”と“どれだけ関係性ができているか”が大きいと思います」

かしこまりすぎず、でも失礼はしたくない──そんな微妙な距離感の中で、若い世代は“お礼”のバランスを模索しているようだ。 

「期待してないつもりが…お礼がないとやっぱりモヤる」

「おごったときに、“ありがとう”がないと、やっぱり気になってしまう自分がいます」

そう語るのは、教育関係の仕事に携わる40代男性。日頃から若い人たちと接する機会が多く、仕事の延長で食事をご馳走することも少なくないという。

「つい最近も、まさにこのテーマを考えさせられる出来事がありました。30歳前後の人が3名程度いた飲み会で、僕は一次会だけで帰ったんです。そのときに、幹事に“このあと二次会行くなら使って”とお金を渡しました。幹事はその場で“ありがとうございます”と言ってくれたんですけど……。

それっきり、他の人からのお礼の連絡や、二次会で使いましたという報告は一切なかったので、“もしかしてネコババされたんじゃ…”と不毛な考えがよぎったと同時に、そんな自分も嫌になりました(笑)」

もちろん、「お礼がほしい」と思ってやったわけではない。しかし、何もないことに少し引っかかりを感じてしまったという。

「それって結局、自分の中で“お礼を期待していた”ってことなんですよね。そのことに後から気づいて、ちょっとショックでした。大人として“見返りを求めるのはダサい”と思っていたけど、どこかで“感謝の言葉はあってほしい”と思っていたんだな、と」

いっぽうで、IT系企業に勤める別の40代男性は、「お礼」に対して構えすぎるのもリスクがあると話す。

「お礼って、どこかのタイミングで一回言えば十分だと思います。ポスト主の投稿のような、『翌日にも改めて言うべきだ』という主張は、その人の価値観を相手に押しつけすぎている気がしますね。

心の中で『言ってほしいな』と思うのは自由だけど、それを口にしちゃうのは、ちょっと“お礼の強要”になってしまうと思うんです。

私自身は“後輩力”に自信があるタイプだったので、翌日も伝えるようにしてきました。でも、それは“自分がそうしたかったから”であって、人に求めるものじゃないんですよね。だからおごる側の立場になったいまでは、翌日に改めてお礼を言われなくてもまったく気にならないですね」

――かつては「翌日もお礼を伝えるべき」という空気があったが、今ではその感覚自体が薄れつつある。おごられた側とおごった側、双方の声を通じて見えてきたのは、時代とともに「お礼」の形も変わりつつあるという現実だった。

取材・文/逢ヶ瀬十吾(A4studio)

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