斎藤知事は「行政トップとして資質に欠ける」“優勝パレード”めぐり背任容疑で書類送検「罪に問われないかも…でも捜査はこれだけではありません」
斎藤知事は「行政トップとして資質に欠ける」“優勝パレード”めぐり背任容疑で書類送検「罪に問われないかも…でも捜査はこれだけではありません」

兵庫県警は6月13日、大阪府と兵庫県が2023年11月に行なった阪神・オリックスの優勝祝賀パレードに絡み、斎藤元彦知事と片山安孝元副知事の2人を背任容疑で書類送検した。協賛金を出した兵庫県内の金融機関に対し、見返りに補助金を増額する約束をした疑いがあると市民団体が告発していた。

容疑があると県警がみなしたかどうかは不明だが、県警と神戸地検はほかにも複数の問題で斎藤知事周辺を調べており、地元メディアも斎藤氏は“知事失格”だとの論調を展開し始めた。 

「処分意見」は不明、「嫌疑はなかった」と伝えている可能性も…

兵庫県では6月12日に県議会の6月定例会が閉会したばかりで、県警は翌13日に書類送検した。県政界への影響を最小限にとどめるための判断とみられる。

書類送検の際に起訴すべきか否かについて言及する「処分意見」は不明で、「嫌疑はなかった」と伝えている可能性もある。ただ県関係者は、「それでもパレード問題は幕引きにはならず、斎藤氏に絡む他の違法行為の指摘もくすぶっています」と指摘する。

まずパレード疑惑を今年1月に亡くなった竹内英明元兵庫県議の言葉で振り返る。

竹内氏は兵庫県議会の調査特別委員会(百条委)の委員としてこの疑惑の解明に中心となって取り組んだが、昨年11月の兵庫県知事選の過程で「斎藤知事の疑惑をでっち上げた黒幕だ」とする誹謗中傷を浴び、家族を守りたいと県議を辞職したあと亡くなった。精神的に追い詰められての自死とみられている。

「パレードは言い出しっぺの吉村大阪府知事がクラウドファンディングで費用を集めるとぶち上げたのですが、5億円の目標に対し開催日前日までに約9300万円しか集まらなかった。そのためパレードが終わった後も企業からの協賛金集めが続きました。

兵庫で中心になったのは当時副知事の片山氏で、パレード2日前に県内のT信金の理事長に信金各行の協賛金取りまとめを依頼しています。片山氏は県信用保証協会の理事長経験者で、金融機関に太いパイプを持っていました。T信金など11行は50~300万円ずつ、計2000万円を拠出しました。

同じ時期に県内部ではコロナ対策で行なっていた金融機関への補助金制度に絡み、2023年度の秋の補正予算で当初は総額1億円と見込んでいたところ、4億円に増額されていたんです。増額は片山副知事と斎藤知事が指示していました」(生前の竹内元県議)

この経緯から、“信金がパレードに協賛金を拠出する見返りに、県が補助金を増やす約束をした”との疑惑を指摘する声が県庁内でくすぶっていた。

「立件は容易ではない」「補助金適正化法違反に問えるのでは」

そして昨年3月、当時の西播磨県民局長・Aさんがこの疑惑を含む7項目の斎藤知事の問題を匿名でメディアなどに告発し、兵庫県政の一連の問題に火が点いた。そのAさんも昨年7月に自死とみられる急死を遂げている。

「この疑惑に関しては、昨年10月に市民団体が斎藤・片山両氏が不正な支出をした背任罪に当たるとして県警に告発していました。県警はしばらく沈黙していましたが、竹内さんの訃報が伝えられた翌日の今年1月20日になって団体側に『告発を受理する』とわざわざ伝えてきたんです。情報通の竹内さんは県警ともさまざまな問題で情報交換をしており、県警が告発受理をアピールしたのは、亡くなった竹内さんへの気遣いだと関係者は感じていました」(県関係者)

だが、ただでさえ立件が難しいとされる背任が、公金支出を舞台に行なわれたとみなすのはかなりハードルが高いとの見方がある。

「補助金の支出行為が行政機関に損害を与えたと言えるのか、と考えれば立件は容易ではないでしょう」(県警担当記者)の声が強く、書類送検に「罪に問えない」との趣旨の意見がついている可能性が低くないとみられる。しかしそうであっても問題は終わらないと関係者は指摘する。

「この補助金は原資が県費ではなく国費なんです。県財政や国庫に損害を与えた背任でなく、正当な目的でない支出で国庫金をだまし取ったとの補助金適正化法違反に問えるのではないかとの指摘が出ています。パレード資金の捻出で県担当者らは相当な無理をしたとみられており、何が起きていたのか県警は関心を持っています」(県議会関係者)

神戸新聞は<�行政トップとしての資質に欠ける>と報道 

問題はこれだけではない。

「Aさんの告発直後の昨年4月、斎藤氏の命を受け告発者探しをした片山氏が押収したAさんのパソコンの中にあった私的文書の内容を、当時の井ノ本知明総務部長が県議らに触れ回っていたことが県の第三者調査委員会の調べで確認されました。

井ノ本氏は『斎藤、片山両氏の指示でやった』と主張しました。斎藤氏は否定していますが片山氏は井ノ本氏の主張に沿った証言をしています。これを受け、上脇博之神戸学院大教授が地方公務員法の守秘義務違反にあたるとして斎藤、片山、井ノ本の3氏を神戸地検に告発しました。

昨年11月の知事選でも、公選法で違法とされるネットによる選挙運動への報酬支払いを斎藤陣営が行なった疑いがあり、県警と地検はネット広報を担った西宮市のPR会社『merchu』を家宅捜索しています。これも決着がついていません」(地元記者)

地元紙の神戸新聞は6月13日、「(斎藤知事が)行政トップとしての資質に欠けるのは明らかだ」「知事は自ら進退を決断するべきだ」とする社説を掲載した。複数の重大な問題を抱え、地元紙にも退場を迫られた斎藤県政。混乱は拡大の一途をたどっている。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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