
吉本興業所属のピン芸人・CRAZY COCO(38)が、YouTubeで卵子凍結の体験を赤裸々に発信し、大きな反響を呼んでいる。芸人という不規則かつ多忙な仕事の合間を縫い、自ら注射を打ち、激しいむくみに耐えながら実施した裏には、38歳の独身女性としてどのような覚悟があったのか? 本人へのインタビューで、その本音に迫った。
38歳で卵子凍結を選択「将来の選択肢を増やしておきたかった」
吉本興業所属のピン芸人・CRAZY COCO(クレイジーココ)さんは、元外資系CAという異色の経歴を活かした芸風で、現在注目を集めている。そんな彼女が今年6月、初めての“卵子凍結”を行なった。
7月4日に自身のYouTubeチャンネルで公開した動画「【卵子凍結】38歳の大決断!大変すぎた初めての卵子凍結!リアルな金額も是非参考に」では、治療の実情や費用を赤裸々に公開。多くの女性から共感と反響が寄せられている。
そんなCRAZY COCOさんに卵子凍結への思いを尋ねてみた。
――卵子凍結を意識し始めたのはいつ頃ですか?
CRAZY COCO(以下、同) 今、芸能の仕事を始めて4年目になるんですが、2年目くらいのときにはもう考えていました。年齢的にも、卵子凍結をしている人が周りに増えてきて、「お仕事のタイミングが合えばすぐやりたいな」とずっと思っていたんです。
特に一昨年、フジテレビの「トーキョーツキイチMTG(ミーティング)」という番組で、長谷川京子さんやファーストサマーウイカさんと、卵子凍結の話をしたり、お医者さんを呼んで詳しく話を聞いたりしたんですよ。その頃から、「早くやらなきゃ」と意識していましたね。
――卵子凍結を選んだ背景についても教えてください。
別に「今すぐ子どもがほしい!」というわけではないんです。仕事はすごく楽しいし、自立した生活ができていて、時間も自由に使える。今のライフスタイルにすごく満足していて、正直、幸せなんですよ。
それに、今はまだ自然妊娠もギリギリ可能な年齢。38歳って、選択肢がまだある状態なんですよね。「子どもはいらない」という選択もできるし、「いつか産みたい」という選択も残されているかもしれない。
ただ、これがもし歳を重ねて「自然妊娠はもう難しい」と言われたら、それは「産まない」ではなく「産めない」になってしまいます。選べる自由が失われるのは、私にとってすごく嫌だなと思ったんです。だからこそ、今のうちに可能性を残しておきたかったんです。
――実際に着手したのは、どんなタイミングだったのでしょう?
夜中のラジオ番組のレギュラーが今年3月末で終わり、少しスケジュールが落ち着いたんです。このタイミングを逃したら、また新しい仕事の撮影で忙しくなるし、「今しかない」と思いました。
それに、病院によっては40歳を迎えると卵子凍結を受け付けていないところもあると聞いていて。だから年齢的にも「今年中に絶対やっておきたい」と決めていました。
毎日自ら注射を打ち続けるも「卵胞、育ってないですね」
――どうして卵子凍結までの過程をYouTubeで公開しようと思ったのでしょうか?
Instagramのストーリーで「卵子凍結無事終わりました」と投稿したところ、視聴者の方から「金額はどれくらい?」「どんなスケジュールなの?」といった質問を多くいただいていたことが、大きな理由のひとつです。それに「30代でも自然妊娠できる」と思っている方が、まだまだ多い印象があって。
もちろん、自然妊娠される方もいますが、私のCA時代の友人の中には不妊治療を続けている人や、流産を3~4回繰り返している人もいました。そうした現実を知っているからこそ、「やりたいなら早めに動いたほうがいい」と若い世代に伝えたかったんです。
「妊娠できると思っていたけど、実際には難しかった」というケースは本当にたくさんある。だからこそ、その事実を知ってもらいたいという思いもあって、YouTubeで動画を公開することにしました。
――動画の反響はどうでしたか?
視聴者からは、ほとんどがポジティブなコメントでした。「知れてよかった」「参考になりました」といった声が多く、本当にうれしかったです。
一方で、わずかですが「私は〇個しか卵子が採れなかったのに、COCOさんは16個も採れていて悲しくなりました」といった声もありました。でも、そうやって心情を口にすることで少しでも気持ちが楽になるのなら、私はコメントしてもらって構わないと思っています。
――お仕事との両立は、スケジュール的にも大変だったのでは?
マネージャーとはスケジュールをしっかり共有していて、「この日は病院に行きます」と事前に伝え、細かく調整してもらっていました。
採卵の日以外は、朝早く病院に行って、そのまま仕事に向かう……という感じで、仕事の合間を縫って対応できたんです。大変ではありましたが、なんとかスケジュールに組み込むことができましたね。
――卵子凍結までの過程は、身体的にも精神的にもかなりハードだったのでは?
本当にしんどかったです。
しかも、その注射は毎回自分で打たなきゃいけないんです。日数にして6日間、自分で身体に針を刺すというのは本当に大変でした。
身体も毎日すごく重いし、お腹は張るし、むくみもひどくて見た目にも変化が出てしまい、テレビ収録のときなどはそれがすごくストレスでした。
――特に精神的にキツかった瞬間は?
採卵予定日の直前、エコーでお腹の中を見ているときに、お医者さんから「卵胞、育ってないですね」と言われた瞬間です。
よくあることだとは聞いていたんですけど、初めての採卵だったこともあって、不安が一気に押し寄せてきて……。こらえきれず、病院でひとり泣いてしまいました。
卵子凍結のリアルな“過程”
――その後、どういった流れで採卵に至ったのですか?
まずは卵胞の数を増やすために、皮下注射を追加することになりました。最終的には合計で1300cc打ちましたね。
採卵前日の24時以降は食事禁止で、当日の朝食もNG。ただ、朝7時までは100ml以下の水分なら摂取OKでした。
当日は受付を済ませると、ホテルの部屋のような個室に案内され、リラックスしながら時間を待ちました。
私が通った病院では「静脈麻酔」と「部分麻酔」のどちらかを選べたのですが、私は静脈麻酔を選びました。
だから、多少お金がかかっても、緊張しながら耐えるより、寝ている間に終わるほうが絶対にいいと思ったんです。
――採卵が終わった後は、どのように過ごしましたか?
採卵後は麻酔の影響もあって、「当日は車の運転はNG」「必ずタクシーで帰宅してください」と説明を受け、仕事も休むよう指示されていました。
手術中は麻酔が効いていたので痛みは感じませんでしたが、術後は出血もあり、体への負担はかなり大きかったと感じました。
――結果として、何個の卵子を採取できたのでしょう?
22個採れて、そのうち16個の卵子を凍結できました。お腹の中に18~20mmくらいの卵胞が22個も入っていたわけですから、そりゃお腹はすごく張りますよね。
高額な費用。それでも「やったほうがいい」と口にする理由
――費用はどれほどかかりましたか?
私の場合、薬を追加しているので少し高めですが、合計で46万7830円かかりましたね。あと、毎年卵子の保管料として約5万円かかります。
――卵子凍結に対する東京都の助成金制度について、COCOさんはどう思いますか?
助成金は使えるなら絶対に使ったほうがいいと思います。実際20万円ほど補助が出ますし、制度としてどんどん整ってきている印象です。金銭面で迷っている方には、大きな助けになるはずです。
ただ、申請には説明会への参加が必須で……。仕事のスケジュール的にタイミングが合わなかったので、私は利用できませんでした。
――今後、子どもを持つことへの不安はありますか?
不安はまったくありません。ただ、もし子どもができたら、今のような働き方はしないと思います。稼働日数を減らして、子どもを最優先に考えるつもりです。
でも、「仕事を辞める」という選択肢は自分の中にありません。仕事はすごく楽しいし、私の母もずっと働き続けていた人だったので、その姿を尊敬してきました。私も、そんなふうにありたいなと思っています。
――この経験を通して、伝えたいメッセージはありますか?
もし金額の面で迷っている人がいるなら、土日にバイトしてでも卵子凍結をしたほうがいいと思います。私自身、「もっと早くやっておけばよかった」と心から感じています。
実際、病院の資料には「35歳の女性が5個の卵子を保存した場合の妊娠率は22%、40歳では6%しかない」と書かれていました。そういう現実を、もっと多くの人に知ってほしいです。
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忙しい仕事の合間を縫い、肉体的・精神的な過酷さを乗り越えて卵子凍結を行なったCRAZY COCOさん。もちろん、妊娠や出産においてどのような道を選ぶか、そもそも子どもを持つかどうかは、人それぞれの状況や価値観によって異なる。
それでも、もし卵子凍結という選択肢が少しでも気になっているなら、まずは彼女のYouTubeでリアルな体験をのぞいてみてはいかがだろうか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班