
参院選で躍進した参政党の神谷宗幣代表らの言動に「選挙中に言っていたことと違うだろ」とツッコミが相次いでいる。公約の二本柱だった「日本人ファースト」と「積極財政の押し出し」について急に静かになり、「コロナ対策の検証」を最初にやると言い始めたのだ。
「日本人ファースト」はどこへ? ブレ始めた主張
「われわれは日本の国益を守り世界に大調和を生んでいく、作っていく、そういう政党ですからね。この理念を絶対に曲げず、とにかく日本人ファースト、国民の声をしっかり聞いて、そして党員の皆さんの思いをしっかり受け止めた政治をやります」
選挙翌日の7月21日、東京・新橋で当選者が集まった「凱旋街宣」で神谷氏が登壇すると、集まった数百人の聴衆は大きな歓声で応えた。
会場には「差別者は政治家になるな」などと書いたプラカードを持った抗議者も数十人が集結。選挙期間中には演説への抗議で使うことが禁じられていたハンドスピーカーなどの“鳴り物”を引っ提げ、「差別をやめろ」と大音量で党や支持者を非難し、おもちゃのサイレンや笛の甲高い音が響きわたった。
そこで「とにかくブレない政党で、参政党はいつも一貫していると言われるような、そういった形を今しっかりと足元、作っていきたい」と述べた神谷氏だが、こう語る前夜にはすでにブレていたとの指摘が相次いでいる。
「開票センターで神谷氏はインタビューを次々と受けたのですが、このうちニコニコ生放送でスタジオからひろゆき氏が『どのような法案を最初に出すのか』と聞いたんです。これに神谷氏は『2020年から始まったコロナの問題ですね。政府のやったことは正しかったのか、予算がかなり使われてますけど無駄遣いはなかったかとか、そういったことを検証する』と答えたのです。
コロナ禍のさなかに結党された同党は当時、反ワクチンを掲げました。今回の選挙ではこの主張は鳴りを潜めていましたが、終わったとたんに最初の法案として反ワク絡みの話を持ち出したことになります」(首都圏の社会部記者)
さらにひろゆき氏が移民対策で検討する法案の具体案を聞くと神谷氏は「技能実習制度を変えたので、それの見直しをもう1回やるべきかなと思っています」と返答。ここでやり取りは時間切れとなったが、引き取ったスタジオの参加者から「みんなから言われてることなんで、なんて陳腐なことおっしゃるんだろう」(政治学者の中林美恵子氏)と失笑されてしまった。
開票センターでは他にも驚きの発言があった。
東京選挙区で当選したさや氏が街宣で「日本人が差別され続けてきた気がしています。外国人が優遇されていく中で、私たち日本人はどんどん貧しくなっていった」と訴えたように、同党は外国人が日本で優遇されていると強調してきた。ところが特権は無いというのだ。
「当選した人が順番に全部過去洗われて全員叩かれていくんですよ」と予見も
いっぽう経済政策で党は反緊縮を掲げ、公約を整理した「3つの柱と9の政策」には具体策の筆頭に「消費税の段階的廃止」と書かれている。
これについて、選挙戦最終日の19日に「私はみんなが救われる政策、まず一つ目、消費税廃止! 消費税廃止! これをやらしてください」と叫んでいたさや氏は、当確が出た直後の20日夜には「消費税の段階的な廃止と言いましたのは、やはりその段階的ということで、他の党とのいろんな連携も考えておりますので、そういう意味でまず下げられるものはとにかく下げるっていうところを実現していけるようにしたいということですね」と説明。前のめりの態度を見せず、他党との協調なしには動かないと予防線を張った。
それどころか21日の街宣で神谷氏は「今メディアに出ると『今後の(他党との)連携どうします』と聞かれますが、まだ皆さん、もう少し待ってください。そういう段階にまだありません。解散総選挙に向けてチーム作ってそこでもう1回大飛躍をさせてください」と発言した。
消費税の廃止へ向けた他党との政策調整よりも、次期衆院選へ向けた組織固めと独自色発揮を優先する意向を示唆した形だ。
政策以外にも参政党をめぐっては選挙中から報道が続いた。
「ホストクラブの某ホスト名のアカウントが、参政党に投票すれば料金を割り引くと示唆する告知をSNSで行なったのに対しさや氏が“感謝”を表明し、公職選挙法に抵触するのではないかとの声が出ています。
大手メディアも神谷氏や同党候補の発言をファクトチェックし、『不正確だ』と指摘する記事を相次いで出しました。これまでなかった現象で、選挙報道が大きく変わりました」(永田町関係者)
こうした状況は今後も続くと当の神谷氏が“予言”している。19日のマイク納めで神谷氏は20人が当選すると期待しながらこう述べた。
「国会の中では十分な力ではない。だから選挙終わったら大変なんですよ。集中砲火、また始まりますからね。今は私が集中砲火浴びたでしょ。今度はね、当選した20人が順番に1人ずつ全部過去洗われて全員叩かれていくんですよ。
それを1個1個火消ししていかないといけない。もう目に見えてますよ。これがどんだけ大変なことか想像してください。
これに対し、ある雑誌編集者は「メディアの考えはその通りです。当選前のポッと出の候補の問題を書いても“誰、それ?”と見向きもされないでしょうが、当選すれば税金で給料が払われるので検証には大きな意味があります。かつての国民民主や維新もそうですが1か月で(問題を伝える報道が)ボロボロ出てきてメッキはすぐ剥げた。火のないところに煙は立たない。それを得意の“陰謀論”でかわすかもしれないが、国民もそんなにバカじゃない」
神谷氏は参政党が「責任政党」になったと凱旋街宣で口にした。ならば言動についてこれから責任が問われるのは当然だ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班