アートメイク人気の裏で“ヤミ看護師”が行う違法施術が激増、値段は3分の1以下…「場所はクリニックと違うから気をつけて」被害女性が語る実態
アートメイク人気の裏で“ヤミ看護師”が行う違法施術が激増、値段は3分の1以下…「場所はクリニックと違うから気をつけて」被害女性が語る実態

男女問わず若年層に流行している美容医療「アートメイク」をめぐって、首都圏を中心にレンタルスペースなどでヤミ看護師らが違法に施術するケースが続出しているという。こうした違法サロンは相場料金の3分の1と低料金なことから、人気もあるという。

集英社オンラインはその実態を追った。 

違法でアートメイクを行うサロンが続出?

眉毛や唇の形・色などを理想の状態に保てる「アートメイク」が、いま20~30代の男女の間で流行している。アートメイクとは、いったいどんなものなのだろうか。メイクアップアーティストは、このトレンドを次のように解説する。

「アートメイクは美容医療の一つで、タトゥーよりも浅い皮膚層に針で色素を入れる施術です。色は2~3年で薄くなりますが、それでも人気は高く、人気の美容クリニックでは予約が半年先まで埋まっていることもあります。

もともとは1980年代後半のバブル期に、化粧をせず、時短にもなる手法として女性を中心に広まりました。しかし、バブルの終焉とともにブームは一度収束。その後、コロナ禍の美容ブームをきっかけに再び注目され、今では女性だけでなく男性にも広がっています。

施術料金は部位によって異なりますが、一番人気の眉毛はおよそ10万円前後。美容クリニックでは、医師法に基づき、医師が診断したうえで、医師の指示を受けた看護師が施術するケースがほとんどです」

一方、近年では“違法”サロンの増加も問題になっている。厚労省医政局医事課の担当者は次のように明かす。

「ここ数年、医師資格を持たない無資格者によるアートメイクが行われていたり、医師不在で診断もされずに施術されていたりするケースが増えています。

『法律的に問題はないのか』という問い合わせも寄せられていますね」(厚労省医政局医事課・担当者)

アートメイクはタトゥーとは異なり「医療行為」に分類されるため、医師または医師の指示を受けた看護師のみが施術することができる。

ところが、現在都心部を中心にマンションの一室などで、無資格者による違法な施術が行われるケースが後を絶たないという。 

「クリニックと場所が違うから気をつけてね」

こうした違法アートメイクの実態を探るべく、取材班は実際に施術を受けた経験があるという20代後半の女性Aに話を聞いた。彼女は、いわゆる“ヤミ看護師”との出会いをこう語る。

「友人から、大手のアートメイククリニックで働いていたという看護師を紹介されました。友人価格で安く施術してくれると聞いて予約したのですが、いざ行ってみると、案内されたのはマンションの一室でした。当時は、アートメイクが医療行為だとは認識しておらず、それが違法行為にあたることも知りませんでした」(女性A)

彼女は昨年12月頃、その“ヤミ看護師”に眉毛とアイラインの計2部位の施術を申し込んだ。料金は1部位3万円、合計6万円で、相場の3分の1程度だったという。支払い方法は現金かPayPayで、とLINEで案内されたそうだ。

そして予約の3日前、ヤミ看護師から次のようなLINEが届いた。

<場所がクリニックと違うから気をつけて!!!>

<遅刻の場合は私に連絡してね!〇〇(働いていた大手クリニックの名前)には連絡しないでね>(※一部修正)

<東京都港区南青山〇〇〇〇〇 サロンのあるビルへ到着いたしましたら、中に入り×××のインターホンを押していただきお待ちください。エントランスまでお迎えに上がります。>(※一部修正)

女性は、施術当日の様子をこう振り返る。

「1Kで19平米ほどのマンションの一室に案内されました。部屋の中にはソファと、整体でよく使う簡易的な施術用ベッドがあり、その上にアートメイク用の箱くらいの小さな機械がポツンと置かれていました。

どうしてこの部屋なのかと聞くと、『独立したから』とのことでした。それ以上は、特に聞きませんでした」(女性A)

女性によると、施術前に医師による問診はなかったという。2時間ほどの施術を終え、現金で料金を支払い、次回の予約も入れた。

ところが、その話を友人にしたところ「違法業者の可能性が高く、トラブルが起きても責任を取ってもらえない」と忠告を受けたという。

結果として、女性は次回予約をキャンセルし、ヤミ看護師のLINEをブロックしたそうだ。

医師「衛生環境が悪く勧められない。許せない」

前出の厚労省担当者によると、このヤミ看護師は、医師の指示を受けずに診療機器を使用し、本来は医師が行うべき行為を行なっている可能性があることから、保健師助産師看護師法第37条に違反する恐れがあるという。

また、施術前に医師による問診が行われなかったことから、「医師の指示がなかったといえる」とも指摘した。

とある美容クリニックの医師によると、現在でもヤミ看護師らによる違法アートメイクが後を絶たない理由として「マンションの一室で紹介制ならバレにくい」といった安易な認識があるという。

「当たり前ですが、ヤミ看護師は法律を守る規範意識が薄いんですよ。

医師からすると、やはり許せませんね。事故が起きたらどうするのか、と。こうした行為が原因で『アートメイク=危ない』という印象が広まってしまいます。

実際には、医師が駐在して診察したうえで、フリーの看護師が合法的にアートメイクを行えるよう、クリニックの部屋を時間貸しするプランがあります。2時間で1万5,000円が相場ですが、ヤミ看護師は『高い』と敬遠してレンタルルームを利用するわけです。

もちろん、そうしたレンタルルームは衛生環境が十分とはいえません。それでもレンタルルームの使用料は1日1万円程度なので、2人集客すれば1日で5万円以上を稼げてしまう計算です。

美容クリニックでアートメイクの正規看護師として働くと、月に平均30~35万円の給料がもらえることが多い。それでは満足しないのか借金があるのかなどで、小遣い稼ぎとしてヤミ看護師をする人が一定数います。また、独立と謳って蓋を開けたら医者が診療や医療指示をしないケースもある。

実際、腫れが引かないなどのトラブルが発生し、正規クリニックや皮膚科に駆け込むケースも少なくありません」(美容クリニック医師)

前出の女性Aに施術をしたヤミ看護師に電話何度かかけたところ、出ることはなかった。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 

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