〈群馬・父親殺害容疑〉「父親に反抗しているという情報は前々からあったけど…」逮捕された15歳少年の学校関係者がみた親子関係と児相の対応
〈群馬・父親殺害容疑〉「父親に反抗しているという情報は前々からあったけど…」逮捕された15歳少年の学校関係者がみた親子関係と児相の対応

群馬県桐生市で14日、医師の父親を包丁で刺殺したとして、中学3年生の男子生徒A(15)が殺人の容疑で逮捕された事件。約1カ月前にもAの自宅にはパトカーが駆けつける騒ぎになっていた。

Aと同級生の子を持つ近隣住民は「父ともめて殴り合いになったと聞いている」と明かす。Aが通う中学校や児童相談所は事件をどう受け止めたのか。 

父の遺体を1日放置…学校は問題の大きさを認識できず

事件は14日深夜に明らかになった。地元紙の記者が語る。

「自宅で父親を殺害したとして、14日にAがJR桐生駅前の交番に自首したことで発覚。15日に逮捕され、16日に前橋地方検察庁に送致された。事件発覚時、母と妹は県外へ外出していた。

群馬大学の司法解剖によると、父親の死因は出血性ショック。首や腹に数十カ所の傷があった。死亡推定時刻はAが自首する1日前の13日午後ごろ。遺体は約1日、家に放置されていたことになる」

Aは出頭するまでの間、「14日午後に市外でのイベントへ友人と行った」と供述しているという。#2で詳報したように、Aは同級生らに「家に極力帰りたくない」「お父さんが嫌い、性格が合わない」と話し、友人宅を泊まり歩いていたという。

また7月20日にはA宅にパトカーが来る騒ぎになり、Aは友人らに「父とケンカをしてしまった」と話し、もみ合いや殴り合いにもなったなどと明かしていたという。

Aが通う中学校の関係者が重い口を開く。

「学校としては、Aは校内でトラブルをおこすこともなく、家でのパトカー騒ぎや、ほかのトラブルもまったく聞いていない。ただ、父親に反抗しているという情報は前々からありました。

とはいえ、『自宅に帰りたくない』などとは、教師陣には言ってこなかった。Aがそこまで思い詰められていたのかと考えると後悔の念に駆られる」

別の学校関係者は、「父との仲の悪さの原因は、ネットで書かれているように『医者になれ』とか『勉強しろ』とかそういう話ではない。性格が合わないとか、気に入らない、むかつく、注意されるとかそういった類の話です」と明かす。

「前々からいろいろと話を聞いていたものの、ここまで大きな問題だったとは想定ができなかった。もうちょっといろんなことに気付いてやれていたら…と、職員みんなが思っている。

もしかしたらSOSを見逃していた可能性もある。学校側の対応が適切だったのか、検証が必要です」(別の学校関係者)

PTAの一部の幹部らは15日、学校側から事件があったことについて電話で説明を受けていたと明かす。学校は、特定されるのを避けるためか、保護者説明会は行なわない方針だという。

Aが通っていた市立中学校の校長は「個人情報に関わるため、申し訳ないのですが取材には答えられないのです」と話した。

児相は「答えられません」 近隣住民は「仲がよかった」

複数の関係者に取材をしたところ、A宅は児童相談所が介入する事案となっていた可能性が高いという。

同市内で子育てや家庭支援などを行うNPO法人の関係者は、「パトカーが出動していたならば、全部と言っていいほど児童相談所に警察から通報が入ることになる」と話す。

桐生市が管轄の東部児童相談所は集英社オンラインの取材に対して、「(今回の事件をめぐって)7月20日に、警察の方がご自宅に行っていることについての問い合わせですか」と日付について口走ったものの、

「児童相談所で取り扱ったか、事案をキャッチしていたかどうかについて、今のところ個別事案にあたると判断をしている。有無については回答できない」

と回答。児童相談所の対応が適切だったのか、検証する必要があるかについては「個別の事案なので答えられません」と述べた。

Aとその家族は3年ほど前までは、今の自宅から数キロはなれた隣町の集合住宅に住んでいた。当時の近隣住民は、「仲がよさそうなのに。どうしてあんな事件が起きたのか…」と肩を落とした。

「ケンカをする声など聞いたことはなかった。年中から小学校6年生までこっちに住んでいたようでしたが、Aはあいさつを欠かさない、明るくていい子。サッカークラブに通っていたのかな。平日の夕方とか時には土日など、サッカーボールを片手に持つAを、お父さんがいつも車で送っていた様子を何度も目撃している。

サッカーの日以外は、家族4人で楽しそうに車でいろんなところへ頻繁に出かけていた。普通の仲いい家族だった。あの日常がもう来ないと思うと、悲しさで心が締め付けられる」

Aは取り調べに対して、「親子関係のことで意見の対立があった」と供述しているという。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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