〈沖縄・ホテル殺人事件〉大分の超人気シェフが包丁で刺殺…逮捕された息子(20)をブログで「あっぱれ!」と自慢していたのになぜ…?
〈沖縄・ホテル殺人事件〉大分の超人気シェフが包丁で刺殺…逮捕された息子(20)をブログで「あっぱれ!」と自慢していたのになぜ…?

地元で愛された“名物シェフ”の身に、いったい何が起きたのか。那覇市の繁華街「国際通り」にあるホテルで9月8日に発生した殺人事件。

殺害された大分県別府市の首藤謙隆さん(46)は、海外帰りのイタリア料理のシェフで、一世を風靡した「川越達也シェフ」になぞらえて「別府の川越シェフ」と呼ばれていた。殺人未遂容疑で現行犯逮捕されたのが、20歳になる息子だったことも事件の衝撃度をさらに高めた。息子と父親の間にどんな諍いがあったのか。 

顔や首、背中に複数の切り傷や刺し傷が…

南国の太陽が照りつける那覇市の国際通りはその日も賑わいをみせていた。戦後復興の中心地となったことから、「奇跡の1マイル」の俗称でも知られるこの通りにパトカーのサイレンが鳴り響いたのは8日午後のことだ。

「現場は、大手航空会社系列のシティホテル。国際通りのちょうど真ん中あたりに位置し、国内外の観光客から人気のホテルです。午後4時50分ごろ、『8階の客室で男性が倒れている』などと119番通報があり、駆けつけた県警の捜査員らが血を流して倒れている首藤さんを発見しました。

首藤さんは顔や首、背中に複数の切り傷や刺し傷が確認され、搬送先の病院で死亡が確認されました。強い殺意をもって切りつけられたものとみられます」(地元メディア関係者)

地元メディアの報道によると、県警は首藤さんが倒れていた現場周辺から凶器とみられる刃物を押収。ホテル内にいた首藤さんの息子が犯行をほのめかしたため、殺人未遂容疑で現行犯逮捕したという。(10日、容疑を殺人に切り替えて送検)

亡くなった首藤さんは大分県別府市でイタリアンレストランを経営するオーナーシェフだった。

本人のものとみられるSNSによると、地元の県立高校を卒業後、大分市内の調理師専門学校に進み、その後、料理人としてキャリアを重ねていた。

学生時代から首藤さんを知るという50代の男性は、こう明かす。

「彼は、周囲から『ノリ』と呼ばれて、明るくて友人も多く、周りから親しまれていました。美術の授業が好きで、美術教師のことを恩師と呼んで慕っていた。調理師の専門学校を卒業した後にはオーストラリアに行っていたと聞いています。(料理の)修業だったのかな。国内でも数カ所、広島とか修業で回っていたそう。

こっちへ帰ってきたと思ったら、30代で店を出して、土曜日の朝のニュースにシェフとして出演していた。市内の情報誌にも掲載され、グルメ雑誌にも出ていたから、有名になったんだなって。ここら辺では、大分の川越シェフなんてイジられていたかな」

本人のものとみられるブログでは、「大分で唯一の投げるpizza職人です」などと軽妙なタッチでシェフとしての日常を紹介し、イタリア料理の本場であるイタリア・ミラノなどをたびたび訪れ、料理人としての知見を深めていく様子もつづられていた。 

「自分の母校である調理師専門学校でも講師を務めていたから、頑張っているんだな、と同級生の間でも話題だった。老舗のホテルに皇室のかたがいらっしゃる機会があり、その際パスタをお出ししたと周りに誇らしげに語っていたのも覚えている」と前出の男性は振り返る。

「息子も父親と同じ料理人を目指していた」

首藤さんの地元である大分でも事件は大きく報じられ、地元メディアは「複数の店舗を経営し、定期的にイタリアに渡って本場の味を研究していた」と、経営者としての横顔も報じている。

 

地元で有名なシェフでありつつも、気さくな人柄であったことをうかがわせる声も聞こえてくる。 

首藤さんが店舗を構える別府市内の別の飲食店関係者(50代)は、「気のいい兄ちゃんという感じで、時たま一人でうちのラーメンを食べに来てくれていたよ。うちの系列店のオーナーが、首藤さんが北浜に店を出したときに花を贈ったんだ。2016年3月だったかな。首藤さんは近所付き合いを大切にしていたそうで、別府市内のいろんな飲食店へ顔を出してたから、事件をニュースで聞いて『まさかな』と思って心配していたんだけど、おたくから連絡があって、ああやっぱりそうなんだと確信した。残念としか言いようがないよ」と肩を落とす。

ではなぜ、地域の「顔」でもあった首藤さんが、息子の手にかけられてしまうことになったのか。

別の飲食店関係者は、「ここら辺では知名度はあるほうかな。北浜の店をオープンする前は、大分市の調理師専門学校で講師を数年間していたと聞くし、街の広報誌にもよく載っていたからなあ。息子についてはそんなに聞いてないけど、レスリングとかそういう格闘技系を小学校のときにやらせていたらしいよ。教育方針があるのかわからないけれど、自分の息子について『弱気なんだよね』とか他のオーナーに話していたそうだよ」と振り返る。

前出の首藤さんが運営するとみられるブログにも息子に関する記述がみられる。

2015年6月の投稿では、「プライベートな写真ですが」とのタイトルで、地元新聞にも取り上げられた、小学生の「わんぱく相撲」での我が子の活躍を記事にしている。

記事には《息子は相撲が大好きで場所が行われるときは学校から帰宅した途端宿題もせずにテレビに食いついております。そんな彼が、是非出たいという事で参加させたらアレヨアレヨと勝ち進み、見事に決勝戦まで行きました》とつづられている。

《見事に初出場で準優勝。あっぱれ!》と息子の活躍に賛辞を送り、《準優勝した彼に親孝行さ》を感じるとも。一連の投稿は、首藤さんのわが子への深い愛情と親子の絆を感じさせる。

地元・大分のメディアの報道によれば「息子も父親と同じ料理人を目指していた」という。

「首藤さんと息子は2人で海外へ行って、沖縄でほかの家族と合流するはずだったとの情報もあります。海外修業で腕を磨いた父親の背中を見せるためだったのか。凶器となった包丁は、首藤さんか息子の私物とみられています。親子の間で何があったのかはわかりませんが、なんともやりきれない事件ですね」(前出のメディア関係者)

事件から2日が経った10日、記者の取材に応じた親族とみられる男性は、「いまはまだ心の整理がつきません。正直、まだ受け止められていません」と言葉少なに語った。

料理人として同じ頂きを目指したはずの父と子。悲劇の背景に、どんな諍い、すれ違いがあったのか。真相解明が待たれる。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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