ロンドンの中心部に、あの「東インド会社」の名を掲げる店が今も存在する――。だが、その実態は高級紅茶を扱うショップにすぎない。
イギリス移民2世のジャーナリストが「なぜ、自分たちは大英帝国について真実を教えられないのか」を問題提起して話題になった『盗まれた歴史』より、一部を抜粋、編集してお届けする。
今もロンドンに「東インド会社」はある⁉
ロンドン中心部に行ったことがあるなら、東インド会社(East India Company)という店の前を通ったことがあるかもしれない。おそらく気づかなかっただろう。そこでは主に高級茶と、とんでもなく高級なお茶の関連用品を扱っている。
高級茶葉用のヒュミドールはいかが? ――いや、私がそうしたように「ヒュミドール」が何かを調べた後で、茶葉の鮮度を保つ密閉容器に1万500ポンド(約210万円)も払いたくない、ときっと思うだろう(ヒュミドールは適切な湿度を保ち乾燥を防ぐ特別な保管箱のこと)。
だが、この店名の背景にある物語はとても興味深い。東インド会社は悪名高いイギリスの会社で、大英帝国において極めて重要な役割を果たしたが、時には驚くべきふるまいをした。1600年に設立され、アジアの絹や香辛料の貿易を目的としていた。
やがてイギリス政府は同社に特別な権限を与え、国々を植民地にして支配することを許されるようになり、中でもインドで大きな役割を果たした。独自通貨を発行し、イギリス本国軍の2倍の規模を誇る独自の軍隊まで所有していた。
想像してほしい。もしナンドーズ(イギリスで人気のグリルチキンレストランのチェーン)が突然巨大な軍隊を持ち、他国を征服できるようになったら! 狂っているように聞こえるだろう。
アヘンで中国を破壊
だがその強大な権力を背景に、東インド会社は欲深くなっていった。危険な麻薬のアヘンを中国に違法に売り、多くの人々を死に追いやり、その人生を破壊した。
さらに17~18世紀にかけては奴隷労働に依存した商品を取引していた。インドの労働者や製品(織物を含む)を利用して自社の高官を驚くほど裕福にした一方で、インドの人々には高額の税を課し、支払う余裕がなくても取り立てた。
その冷酷な政策は恐ろしい飢饉を招き、例えば1770年のベンガル大飢饉では数百万人が亡くなった。こうした数々のスキャンダルと、他にも多くの問題を抱えた末に、東インド会社はついに1874年に解散し、イギリス政府がその領土と軍隊を引き継いだ。
現在この名を掲げている店は、当時の会社と同じではない。その名声を利用して商品を売っている。元の会社の暗く暴力的な歴史を考えれば、不思議な選択だ。
新しい東インド会社のオーナーはインド人であり、母国を傷つけ、略奪した会社の名を使いたくないと思うのが普通だろう。しかし、後に見るように、当時でさえ多くのインド人が東インド会社を支持していた。私がいった通り、帝国とは複雑なのだ。
こうした店が存在し、人々がそこから商品を買うという事実は、一部の人々が大英帝国を懐かしんでいる可能性を示している。
イギリスの象徴「紅茶」も略奪の産物
イギリスらしさを象徴するものといえば、何といっても一杯の紅茶だろう。しかし、この国の大人がこよなく愛する温かい飲み物が、実はイギリスではなく、はるか遠い土地からやって来たと知っているだろうか? そう、自らを「ヨークシャー・ティー(イギリスで人気の紅茶ブランド)」と称するあのブランドも例外ではない!
もう気づいているだろうが、これほど広く普及し、人気になった理由は、大英帝国の影響だ。イギリスが初めてお茶を味わったのは1600年代で、航海者たちがこの飲み物をヨーロッパに紹介した頃だ。
当時、イギリスのお茶は全て中国から来ており、中国には豊富にあったものの、イギリスではとても珍しくて高価なものだった。実際、今でも「中国じゅうのお茶と引き換えにしても(for all the tea in China)」という表現を耳にすることがある。例えば「中国じゅうのお茶をもらっても宿題なんかしないよ!」のように使う。
つまり、どれほど貴重で価値のあるものを山ほど与えられても、絶対にやりたくないことはやらない、という意味を表す言い回しだ(ただし、学校で試すのはお勧めしない。先生はあなたがこの表現の背景の歴史を知っていることに感心するかもしれないが、だからといって宿題をやらなくて済むわけではないから)。
しばらくの間、東インド会社が国際的な茶貿易を支配していた。
歴史は繰り返す? 他国の参入による争い
しかし19世紀半ば、状況は一変した。アメリカとオランダも茶取引に参入し始め、中国はイギリスへの供給を断つと脅した。東インド会社の重役たちは「インド産」の茶なら自分たちがもっと支配でき、拡大するインド帝国から新たな形で利益を得られると考えた。
そこで会社はロバート・フォーチュンという男を雇い、中国に渡らせて茶樹をひそかに持ち出し、インドへ運ばせた。
これはやっかいな仕事だった。ご存じの通り、部屋の窓辺で植物を枯らさずに育てるだけでも大変なのに、何千マイルもの船旅で過酷な気象条件の中、繊細で高価な苗を生かしたまま運ぶのは、なおさら難しいことだった。
さらに困難だったのは、当時ヨーロッパ人が中国でいつも歓迎されていたわけではなかったことだ。そこでフォーチュンは、この任務には変装が必要だと判断し、現地の服を身に着け、裕福な中国商人に扮して国内を歩き回った。
彼は前頭部の髪の毛を剃り、後頭部に付け髪をぬいつけて長い辮髪(ポニーテール)のように見せかけた。茶畑から茶畑へと移動しながら、さまざまなお茶の苗を集めてインドへ送り出す一方、中国の専門家から茶の加工法を学んだのだ。
意外な解決
フォーチュンにとって幸運にも、ほとんどの苗は新しい気候に適応して生き残り、インドのダージリン地方における大規模な茶産業の基盤の一部となった。しかしおもしろいことに、あれほど苦労した末に判明した事実は、インドにはすでにアッサム地方などで自生するお茶の木があったことだった。
当然ながら、19世紀にインドの茶生産が急拡大した理由は、主にこのインド在来種の茶樹のおかげだった。結局、ロバート・フォーチュンがインドに密輸したどの苗木よりも、中国から学び取った製茶の知識や技術の方が重要だったことになる。まるでことわざのように聞こえないだろうか。「異国の地で探していたお茶は、実はずっと足元にあったのだ!」
文/サトナム・サンゲラ
盗まれた歴史
サトナム・サンゲラ
君塚直隆 駒沢大学教授推薦!
「“帝国とは何か”をもう一度考えさせてくれる、素晴らしい道案内」
イギリスの生徒たちに
「自分たちの国は何をしてきたか」
を教えて大反響!
“STOLEN HISTORY” 待望の邦訳版が日本上陸!
「なぜ自分はここにいるのか?」
移民二世である著者が自身のルーツをたどると見えてきたのは、
身近なものの多くが“帝国”を起源にしているという
隠されてきた事実だった!
シャンプー、カレー、紅茶、コカ・コーラ
→これら全部「奪ってきたもの」です!
「……帝国は今なお私たちの生活に深く関わりのある歴史の一部で、イギリスという国家について実にたくさんのことを説明してくれる。
◎目次
第1章 大英帝国とはいったい何だったのか?
第2章 それほど大きな歴史的出来事だったのに、なぜ私たちはあまり知らない?
第3章 私たちの博物館の展示品はみんな盗まれたもの?
第4章 帝国は私たちの町や都市、地方をいかに形作ったか
第5章 なぜイギリスの家族はこんなにいろいろな場所から来ているのか
第6章 でも私はそこにいなかったのに!
第7章 私に何ができる?

![【Amazon.co.jp限定】鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 豪華版Blu-ray(描き下ろしアクリルジオラマスタンド&描き下ろしマイクロファイバーミニハンカチ&メーカー特典:谷田部透湖描き下ろしビジュアルカード(A6サイズ)付) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51Y3-bul73L._SL500_.jpg)
![【Amazon.co.jp限定】ワンピース・オン・アイス ~エピソード・オブ・アラバスタ~ *Blu-ray(特典:主要キャストL判ブロマイド10枚セット *Amazon限定絵柄) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51Nen9ZSvML._SL500_.jpg)




![VVS (初回盤) (BD) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51lAumaB-aL._SL500_.jpg)


