離婚による芸能界復帰後は代表作にも恵まれず、今や中堅女優に甘んじてしまっている感がある内田有紀。パッとしない現状に歯がゆさを感じるのは、筆者が「アイドル時代の輝き」を知っている世代だからだろうか?
スーパーアイドルであった彼女の、女優デビューから歌手デビューまでの濃密な2年間を振り返りたい。


【ドラマデビューはキムタクと共に】


内田有紀のデビュー作は、92年の一色紗英主演のフジテレビ系ドラマ『その時、ハートは盗まれた』。凛として大人びた女子高生の姿ははまり役で、まさにタイトル通りに視聴者のハートは盗まれたのだった。このドラマは木村拓哉の連ドラ本格デビュー作品でもあり話題性も十分。内田有紀は最高のスタートを切ったといえるだろう。

この後、怒涛のフジテレビドラマ出演ラッシュが続き、一気にスターダムへと駆け上がって行く。
フジテレビドラマの歴代最高視聴率37.8%を記録した『ひとつ屋根の下』や、全盛期の観月ありさが主演の『じゃじゃ馬ならし』などを経て、94年の『時をかける少女』で満を持して連続ドラマ初主演を果たす。
このドラマには、「SUPER MONKEY'S」時代の安室奈美恵や女優デビュー間もない菅野美穂も出演しているが、内田有紀の美少女ぶりが際立つ"かませ犬"的立ち回りとなっている。

続く『17才 at seventeen』でも主演となるが、脇を固めるのはデビュー作の主演を務めた一色紗英。内田有紀の勢いとともに、芸能界の栄枯盛衰を感じずにはいられない。

【社会現象化する人気でアイドルの頂点に】


同じく94年の『半熟卵』では主演と主題歌を務めることになる。
待望の歌手デビュータイトルは『TENCAを取ろう!ー内田の野望ー』。正直、ファンでもちょっと恥ずかしいタイトルだが、ポジティブな歌詞をほがらかに歌う内田有紀の天真爛漫な魅力が凝縮されたビタミンソングだ。

コミックソング一歩手前の雰囲気ながら、圧倒的な人気でオリコン史上初となる「女性ソロ歌手のデビュー曲初登場1位」を獲得! 女優デビューからわずか2年足らずで本当に天下を取ってしまうのであった。この記録からもすでに社会現象レベルとなった人気が伺えよう。

このCDは、スーパーアイドルならではの特典にも注目だ。

【「TENCAを取ろう!内田の野望」初回プレス限定特典】


■有紀のメッセージ収録 
■特製ポケットカード 
■東京のよみうりランドイースト&大阪の千里中央セルシー広場での握手会参加券

メッセージは女優ではない「素の内田有紀」をアピールする内容。50秒しかないし、握手会の告知でしかないけれど、超売れっ子だから仕方がない。

ポケットカードには凛々しく微笑む内田有紀の姿が。でも顔黒すぎ、眉毛くっきり、目力ばっちりで、中性的を飛び越えて男性的になってしまっているのが残念。ちなみに裏面は半年分のカレンダーだ。やっつけ感ありありだけど、超売れっ子だから仕方ない。

そして目玉の握手会参加券。超売れっ子なのに、ファンとのふれあいイベントを開催したのだ!

【ハプニングも伝説となった歌手デビューイベント】


筆者も参加したよみうりランドイーストでは、警備の段取りが悪くて列が乱れに乱れまくり、罵声と怒号が飛び交う地獄絵図を展開。徹夜するファンも多く、2万人以上が集まり、内1万人がどうにか入場できたそうだ。
将棋倒しで6人がケガをしたそうだが、筆者もこのとき将棋倒しにあっている。周りにけが人はいなかったので、各所で起こっていた模様。この記事を読んでいる方の中にも被害者がいるかもしれない?!
長い待ち時間の間に雨は降るし、コンサート自体も豆粒レベルにしか見えなかった。
握手も数秒の流れ作業だったが、間近で見る内田有紀の笑顔は本当にまぶしく輝いていたのを今でも鮮明に覚えている。

この後も女優、アーティストとして大活躍。演技も歌も格段に上手くなるが、アイドルからの脱却は難しく、97年頃にはその他大勢の一人に埋没してしまった。
頂点を極めてしまったがゆえの苦悩とでもいうべきか……。

この秋には、日本テレビ系の連続ドラマ『偽装の夫婦』出演に続き、映画『アントマン』で声優に初挑戦。40歳手前にして、その美貌はいまだ健在。
なのに、公式サイトの更新が2013年1月で止まっている(仕事実績に至っては2007年でストップ)なんて寂しすぎる。
何が起こっても不思議ではない芸能界。再びTENCAを取るのだって決して夢ではないはずだ。
あの頃のまぶしく輝いていた笑顔よ、もう一度! これからの巻き返しに期待したい。
(バーグマン田形)