
それが目黒駅から電車でわずか9分で到着する、東京工業大学大岡山キャンパスである。
ここは、もともとペットとして輸入されたスリランカ原産のワカケホンセイインコが野生化し、すっかり定着してしまったという場所。彼らはキャンパス内の銀杏並木を「ねぐら」としており、夕方になるとおよそ700羽ともいわれるインコたちが群れをなして戻ってくる。ワカケホンセイインコは今では都内あちこちで観察されるが、ここ、東工大キャンパスのねぐらが集まる数としては最大規模だとか。
ということで、午後4時すぎを狙ってさっそく見に行ってみた。
キャンパス正門から左手にある銀杏並木をぐんぐんとおよそ3分くらいすすむと、どこからともなくキャーキャー(あるいはピーピー)という鳥の声。見上げると、すでに群れをなして帰路につくインコたちの大群が! 最初はカラスだろうと思ったのだが、望遠レンズで見てみると確かにインコ。ワカケホンセイインコ、昔飼ってたセキセインコのピーコちゃんとは比べ物にならないほどデカい……。
しかしこの日、銀杏の木の下で空を見上げ、夢中でシャッターを切っている酔狂な人間は私しかおらず、女子学生たちはカバンを頭に載せて足早に去っていき、男子学生たちも「わー、インコ来たよインコ!」と逃げていった。確かに、インコ鈴なりの木の下ではフン直撃のリスクが高すぎるのだろう。
しかし、そんな危険を冒してもなお、とどまる意義のある場所であった。
インコたちが銀杏の木にばらばらと集結し、鈴なりといっていい状況になると、その鳴き声は増幅されて想像を絶する音量となる。昔、シンガポールの動物園でナイトサファリコースに参加したときも鳥たちのエリアの騒がしさに驚いたが、そんなもんとは比べ物にならないくらいの壮絶な鳴き声である。
ワーキャーワーキャーという轟音の中で呆然としていると、よくわからない生命力がみなぎっててくる気がするので不思議である。(みと)