鉄のように堅い名物お菓子があった
「イチゴ味」「ホウレン草味」「ココア味」それぞれの風味が堅ーいパンにマッチして美味。
北九州に鉄のように堅いお菓子があるという。その名もくろがね堅(カタ)パン。
なんでも大正末期に官営八幡製鉄所が、従業員のための健康食品として、開発したというこの堅パンは、北九州では地元を代表するお菓子として、今でも人気が高いのだそうだ。そんなにも人気があるというお菓子を知らなかったなんて、何だかとても損をした気分。ということで堅パンを取り寄せてみました。

どれだけ堅いのか? パッケージには「健康はアゴから」という文字が。ワクワクしながらさっそくガブリ。ひゃ、か、堅い。

鉄のように堅いという事前情報を得ていたので、さすがに前歯ではなく奥歯でか噛んでみたが、うんともすんとも言わない。そこで奥歯に神経を集中させて、ようやく噛み割ることに成功。いやぁー、それにしても堅いです。でも不思議なことに一口、二口と食べているとその堅さが全然気にならない。それにパンというよりは、ほのかな甘味があって堅いサブレといった感じ。

しかし、なんでまたこんなに堅くなっているのか。
さっそく、くろがね堅パンを製造・販売をしているのは(株)スピナさんに聞いてみた。(株)スピナは、もともとは官営八幡製鐵所の福利厚生組織が前身だそうで、今でも昔ながらの製法で堅パンを作り続けているのだそうだ。
堅パン製造開始の詳細な年月日は、記録として残っていないそうだが、1920年頃、官営八幡製鐵所が八幡東区に精米工場を建設した際、精米の過程ででる胚芽を試験的に焼いたのが、始まりといわれている。その後、小麦粉に砂糖や練乳などを加え、さらに栄養価をより高く、日持ちするように、と工夫した結果前歯が折れそうなほどの堅さになったのだとか。

もともと従業員の健康食品用ということもあり、当時は官営八幡製鉄所の購買部にだけ売られていたが、地元の人々にも人気が高かったので戦後になって、一般でも販売されるようになったとか。今では、この堅さが健康にいいと再び注目を集めている。
歯ごたえ十分とあって乳幼児の歯固めを促す効果もあるということで、給食に取り入れている幼稚園もあるそうだ。

(株)スピナには色々なお客さんからの声もあると商事部の永末さん。
「長距離ドライバーの人から眠気がさめて腹持ちがいいのでありがたいというお電話をいただきました。アウトドアでも活躍しています。福岡の大学のワンダーフォーゲル部の方からは毎年大量発注をいただきますし、一般のウォーキング大会でも使われています」

現在、堅パンはプレーン味のほかに胚芽入り、2003年には子どもでも食べやすい半分サイズのスティック状の「イチゴ味」、「ホウレン草味」が開発されさらに「ココア味」も加わった。

堅パンをしばらく食べていると、初めて口にした時のあの異常なまでの堅さが気にならない。
それだけ私はいつも柔らかいものばかり食べていたことになるのか、と改めて気付かされた。長距離ドライバーさんではないけれど、確かに堅いものを食べると目がパッチリ。堅パンは原稿書きのお供にもよいようです。
(こや)