
この号で休刊となる<a href="http://item.excite.co.jp/detail/ASIN_B0017SNEDO/">『主婦の友』2008年6月号</a>。<br>こんなふうに、綴じ込み付録として創刊号のダイジェスト版がついてます。表紙には日本髪の女性が描かれ、いかにも古めかしい雰囲気。定価は十五銭、発行部数は一万部だったとか
大正6年創刊の奥様雑誌、『主婦の友』が先ごろ発売された2008年6月号で休刊になるらしい。なんと、戦前から91年も続いた老舗雑誌ということで、「母親が読んでいた」とか「おばあちゃんの部屋にあったな〜」と記憶にある人も多いのでは?
最終号を初めて手にとってみたところ、付録に創刊号のダイジェスト版というのがついていて興味を魅かれた。
まず、冒頭からいきなり「夫の意気地なしを嘆く妻へ」というエッセイが寄稿されており、私のツボを直撃! 執筆者は農学博士であり、法学博士でもある新渡戸稲造氏。んっ? 新渡戸稲造ってなんか聞いたことあるような。そう、5千円札でおなじみのあのお方ですよね!?
「世の中には意気地の無い男子が少くありません。こういう男子を夫にもつた婦人の境遇ほど、世にも同情すべきものはありますまい」と、のっけからトバしまくる新渡戸氏。それにしても、私的には「昔の日本男子=凛々しく男らしい」というイメージを勝手に持っていたのだが、こんな記事が載るってことは実はそうでもなかったということ?? 新渡戸氏はさらに「意気地なしも病気と思え」とか、独自の主張を展開していてなかなかおもしろい。悩める奥様方には必読の記事といえましょう。
さらに、他に興味深かったのは「何といって良人(おっと)を呼ぶか」という記事。これは、家の中で、そしてまた他人の前で自分の夫をなんと呼ぶのか、ということを教授夫人や男爵夫人といった上流マダム達にリサーチしたもの(ちなみに、昔は「夫」を“良い人”=「良人」と書いたんですねぇ。たとえ“悪い人”でも“良人”とはこれいかに……)。
多かったのはやはり家の中では「あなた」、人前では「主人」と呼ぶというパターン。今ではあまり聞かれなくなった「宅の主人」を縮めた「たくが〜」という言いまわしや、「うちの佐々木が〜」なんて感じで名字で呼ぶという人もいて時代を感じたりも。
しかし実はこれって、現代の女性にとってもけっこう気になるテーマなのでは? 今だと私の周囲で、パートナーのことを「主人」と呼ぶ女性は同年代ではあまりいない。いや、環境にもよるのかもしれないですが……。一方、「ダンナ」とか「オット」「相方」はよく見聞きするが、ブログなどを見ても多くの女性達が今なお「しっくりくる言葉がない」迷いを感じている感もある。まさに、その時代時代の夫婦のありようを示す、デリケートかつ普遍的なテーマなのかも。
というわけで、今読んでも実に新鮮だったこの付録『主婦の友』創刊号。これ以外にも節約レシピや美容に関する記事まで網羅されており、ダイジェスト版とはいえ読みごたえあり。91年という人間の一生にも匹敵する『主婦の友』の長い歴史と共に、日本女性が歩んできた「女の一生」にも思いを馳せてみてはいかがでしょう?
(野崎 泉)
最終号を初めて手にとってみたところ、付録に創刊号のダイジェスト版というのがついていて興味を魅かれた。
大正時代の主婦はいったい、どんなことに興味を持っていたのか……。
まず、冒頭からいきなり「夫の意気地なしを嘆く妻へ」というエッセイが寄稿されており、私のツボを直撃! 執筆者は農学博士であり、法学博士でもある新渡戸稲造氏。んっ? 新渡戸稲造ってなんか聞いたことあるような。そう、5千円札でおなじみのあのお方ですよね!?
「世の中には意気地の無い男子が少くありません。こういう男子を夫にもつた婦人の境遇ほど、世にも同情すべきものはありますまい」と、のっけからトバしまくる新渡戸氏。それにしても、私的には「昔の日本男子=凛々しく男らしい」というイメージを勝手に持っていたのだが、こんな記事が載るってことは実はそうでもなかったということ?? 新渡戸氏はさらに「意気地なしも病気と思え」とか、独自の主張を展開していてなかなかおもしろい。悩める奥様方には必読の記事といえましょう。
さらに、他に興味深かったのは「何といって良人(おっと)を呼ぶか」という記事。これは、家の中で、そしてまた他人の前で自分の夫をなんと呼ぶのか、ということを教授夫人や男爵夫人といった上流マダム達にリサーチしたもの(ちなみに、昔は「夫」を“良い人”=「良人」と書いたんですねぇ。たとえ“悪い人”でも“良人”とはこれいかに……)。
多かったのはやはり家の中では「あなた」、人前では「主人」と呼ぶというパターン。今ではあまり聞かれなくなった「宅の主人」を縮めた「たくが〜」という言いまわしや、「うちの佐々木が〜」なんて感じで名字で呼ぶという人もいて時代を感じたりも。
しかし実はこれって、現代の女性にとってもけっこう気になるテーマなのでは? 今だと私の周囲で、パートナーのことを「主人」と呼ぶ女性は同年代ではあまりいない。いや、環境にもよるのかもしれないですが……。一方、「ダンナ」とか「オット」「相方」はよく見聞きするが、ブログなどを見ても多くの女性達が今なお「しっくりくる言葉がない」迷いを感じている感もある。まさに、その時代時代の夫婦のありようを示す、デリケートかつ普遍的なテーマなのかも。
というわけで、今読んでも実に新鮮だったこの付録『主婦の友』創刊号。これ以外にも節約レシピや美容に関する記事まで網羅されており、ダイジェスト版とはいえ読みごたえあり。91年という人間の一生にも匹敵する『主婦の友』の長い歴史と共に、日本女性が歩んできた「女の一生」にも思いを馳せてみてはいかがでしょう?
(野崎 泉)
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