わらべうたは「究極の早期教育」ってホント?
わらべうたを歌いながらお手玉で遊んでいるうち、子どもの表情がどんどん生き生きしてくるのがわかる。大熊先生の「わらべうたはともだち」は、「あゆチャンネル」という厚木のケーブルテレビで見ることができる
小さい頃、「わらべうた」を歌ったり、遊んだりした経験がある人って、現在どのくらいいるのだろうか。
わらべうたの収集、研究をしている神戸大学教授、岩井正浩先生によると、いまの40代ぐらいがわらべうたで育った最後の世代、ということになるのだそう。

そういえば、子どもたちの間で「花いちもんめ」や「かごめかごめ」、「だるまさんがころんだ」などを歌いながら遊ぶ光景は、最近すっかりお目にかからなくなったような気がする。
日本語のイントネーションに合わせた、作詞者、作曲者のない「伝承音楽」であるわらべうた。「◯◯ちゃん あーそーぼ」とか、「おまえのかあちゃん でーべーそー」なんていうのも、考えようによっては「わらべうた」の一種だと考えられるが、そんな声も、最近は聞くことがないような気がする。

しかし、「わらべうたこそ心の離乳食であり、子どもの時期に学ぶべきものすべてが詰まっている遊びです」と強くおっしゃるのが、東京都町田市で「コダーイ合唱団」の指導をするかたわら、神奈川、東京を中心に「親子わらべうた教室」を主宰している、大熊進子先生。
「核家族化が進んで、身近におばあちゃんがいなくなったでしょう? いつの間にかわらべうたで子どもを育てる、という伝統が失われてきちゃったんですよね」

「日本語のイントネーションでできていて、言葉を覚えるのにも、リズム感や運動神経を養うにも、最適なのがわらべうたです。それだけでなく、親子間のコミュニケーション、信頼関係をつくり、異年齢で遊ぶことによって社会性も学ぶことができるという、他の早期教育では得られない魅力が、たっぷり詰まっているのがわらべうたなのです」

例えば、小さい子どもを抱っこしながらあやすときに歌うわらべうたで、

ぼうず ぼうず かわいときゃ かわいけど
にーくいときゃ ペション

というものがある。頭を撫でながらこの歌を歌うのだが、「ペション」というところで、ちょっと強くお尻を叩く。子どもはひたすら頭を撫でてもらっているので、とても気持ちよかったものが、突然ペション、とくるので、「なんだなんだ?」という気持ちになるのだが、何回か歌ってもらっていくうちに知恵がついて、ペション、というところでお尻を動かすことを覚えていくようになる。抱っこしながら、頭を撫でたりする遊びなので、言葉を覚えたり、リズム感を覚えるだけでなく、親子間の信頼関係も強くなる遊びだともいえるという。

「私は、幼稚園や保育園の先生にわらべうた講座を行ったりもするのですが、本当は、わらべうたって教えたり教わるものじゃないんですよね。わらべうたは『伝える』もの。だから、いまこそおばあちゃんの出番だと思うんですよ」

「子育てに不安なお母さんって意外と多いものです。
どうすれば子どもが泣き止むのか、アニメのビデオを見せるだけじゃなく、どうやったら子どもとコミュニケーションを上手く図れるか、悩んでいるお母さんも多いと思います。そんなお母さんたちをやさしく包んでくれる熟年集団が、悩めるお母さんたちにわらべうたやあやとり、お手玉なんかを伝える場があればいいのにな、とも思います」と、大熊進子先生。

最近、日本語の大切さを再認識しようというテレビ、本の出版が相次いでいるようだが、自然と「母国語」を覚え、生きていく上で大切なリズム感、運動神経、社会性をも身につけてくれる「わらべうた」の復活も、ぜひ実現したいものだ。
(吉澤 茂/studio woofoo)

*大熊進子先生によるケーブルテレビ「わらべうたはともだち」の情報はコチラ
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