ペンは書き味が命! いや、色味や太さも重要か……。とにかくすべては書いてみなきゃ始まらない、というのが本音である。
大手の文房具店であれば、ペンコーナーには自由に商品を試すことができる“試し書きシート”が置かれている。長いロール紙であったり、メモ帳が設置されていたりと、その形は様々。

この“試し書きシート”、「なんでも書いていいよ」と口頭で言われるよりもかなり解放感がある。そんなシートにはどんなことが書かれているのか。

都内で文房具店をいくつか回ってみると……。
『あそこのドーナツはうまい』(どこのドーナツでしょう?)、『臭い』(え?! 私?!)、『生きろ』(了解)、『中島です』(こちらこそよろしくおねがいします)とか、少々つっこみいれたくなるものも軒をつらねていたが、いくつか法則もあるようだ。


・試し書きの王道『あいうえお』
・2ちゃんねる用語、絵文字
・『秋』など季節に関する言葉
・『中太』『細』などペンの太さ
・くるくる~っと書いてあったり、ニコちゃんなどの簡単な絵

そこで、心理学の専門家に試し書きの心理について聞いてみた。
「試し書きはほとんどの場合、無意識に書いています。手紙のように誰かを意識して書いているわけではないので、その時頭に浮かんだものや、手が書き慣れているものを書いていると思われますよ」

だから、書き慣れている=『あいうえお』が多いってわけね?
「『あいうえお』は、最初に習うひらがなですから“書きやすさ”を重視して試したことが伺えます。普段書き慣れている『あいうえお』が滑らかに書けない時点で、そのペンは筆記用具としてはNGだと判断されることが多いでしょう。自分の名前などもこれと同じ理由です」

そうはいっても、自分の名前を公共の場にさらすことなど到底できっこないだろう。『田中』『斎藤』など名字をひたすら書いているものも見かけたが、さすがにフルネームは発見できず……。
というわけで、“あいうえお”が当たり前のように書かれているわけだ。

「季節に関したものは、聴覚・視覚などから得た情報の中から、印象に残ったものを無意識に書いている可能性が高いですね。ペンの色から連想して書いていることも多いのではないでしょうか。ペンの太さは、もちろん太いペンがほしくて手にとっているというのもあるでしょうが、太いほど『アピールしたい』気持ちがあると思っていいでしょう」

ほほう。どんな言葉であれ、本人の連想がそこにあるわけだ。無意識とはいえ、様々な人間模様がうかがえる“試し書き”は見ていて飽きない。
毎回新しい“試し書き”をピックアップしているブログもあるほどだ。

「ご自由にどうぞ」はまだまだ奥が深そうです!
(楓 リリー)