“スポーツGOMI拾い”を見に、お昼の上野公園に行った。“スポーツGOMI拾い(以下スポゴミ)”とは、制限時間内に規定のルールに従ってゴミを拾い、ゴミの内容と量によって得たポイントで勝敗を決めるスポーツ感覚のゴミ拾いのこと。


受付会場に着くと、すでにたくさんの参加者が集まっている。今回のイベントを主催するのは東京都内で働く公務員のコミュニティということで、参加者も大半が公務員の方々。戦いを目前に控える皆さんにインタビューした。
「もちろんやるからには優勝狙います。ライバルは全員です!」(川口市教育委員会・小川さん)
「ゴミを見つけた瞬間、体をいれてスクリーンアウトでいきますよ!!」(千葉県税事務所・久保さん)
「塵一つなくしてやります! 落ち葉も全部いったろか! って感じですね」(川口市職員・野辺さん)
落ち葉はスポゴミではルール違反なのだが……とにかく凄まじい気合いなのだ。

この前結婚したばかりという、秋山さん(東京杉並区職員)は静かに戦闘モードに突入していた。
花嫁衣装のような全身純白のジャージとキャップに身を包み準備運動をする後ろ姿には殺気すら漂い、怖くて声を掛けることもできない。会場の緊張は否が応でも高まっているようだ。

そうこうするうちに開会のセレモニーが始まる。各チームに会場の地図が配られ、日本スポーツGOMI拾い連盟がルール説明をし、いざ開始!

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競技時間は一時間である。現在13:00。1チーム5人、計16チームが勝利を争う中、私は東京都下水道局の石垣さんを有する“チームact”にくっついていくことにした。

「僕らのチームは誰よりも早く根津を目指します」
根津方面を指差し、石垣さんが言う。独自のルートでゴミエリアを開拓する作戦だ。空き缶やペットボトルを拾いながら進んでいくと吸い殻が多く落ちている場所に遭遇した。スポゴミのルールでは吸い殻は高得点、石垣さんのテンションも一気に上がる。
「わーい! 吸い殻天国ですよ、ここは♪」
喜んでいいのか、悲しんでいいのかよくわからないが、確かに吸い殻が多い。
途中で靴や一升瓶など、“大物”のゴミも登場し、無我夢中で拾う“チームact”。
気がつけば時間は早くも30分を経過。14時にはスタート地点にいなければいけない。一行は根津に行くのを断念、ルートを変え、急ぎ足で受付会場に戻ることにした。

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14:00。受付会場にゴミ袋をいっぱいにしたチームが次々と帰ってきた。日本スポゴミ連盟の厳正な計量が行われる中、皆さんに試合を終えた感想を聞いてまわる。

殺気を放っていた“純白の花嫁”も今は溌剌とした表情だ。
「バイクショップの人が“おつかれさま”と言って、ただでジュースを5本くれたんです!」
川口市の小川さんの感想は、すでに悟りの境地。
「人間はきれいなところにゴミを捨てない、隠れたところにゴミがあるということを実感しました!」
県税事務所の久保さんは一時間、吸い殻ばかり見ていたために、特殊能力を身につけてしまった。
「歩いているだけで、吸い殻に勝手に目が行くようになりました!」

しばらくして、閉会式。ついに順位の発表だ。1位は鴬谷方面の植え込みを中心に大量ポイントを獲得した、川口市の小川さん率いる“浜野球部A”! そして2位はなんと、密着取材させてもらった“チームact”であった。
独自の根津ルートを開拓したのが勝因だったようだ。その後、参加者全員で記念写真を撮り、無事イベントは終了した。

敗者の弁ではないが、“純白の花嫁”が語ったこの言葉が会場の皆さんの気持ちを代弁していたのではないだろうか。
「戦いには負けたとしても、街をきれいにできたのなら嬉しいな」
皆さん、おつかれさまでした!
(銀座箱アレン)