美術館や博物館に行ったときの楽しみのひとつに、近年は「ミュージアムショップをのぞくこと」が加わっている。

というのも、かつてはミュージアムショップというと、カタログやポストカード、関連書籍など学術的なものばかりだったのに、次第にレターセットや一筆箋、クリアファイルやマグネットなどが加わり、さらに近年はずいぶんユニークな商品も多数販売されているからだ。


特に最近驚いたのは、国立新美術館で開催されている特別展「印象派を超えて――点描の画家たち~ゴッホ、スーラからモンドリアンまで~」(国立新美術館では12/23まで開催)でのグッズの数々。そもそも「点描の画家たち」という企画そのものがユニークだが、グッズ展開も、スーラやゴッホなど、画家別の「点描」をイメージした色合いのシールやキャンディ、ビーズなどと、実にハイセンスで楽しいものばかり。

こうしたミュージアムショップの変化って、いつ頃から、なぜ起こったのだろうか。今回の「点描の画家たち」グッズの企画・デザイン・製造等すべてを手掛けている「East」の代表・開永一郎さんにお話を聞いた。

「ミュージアムショップが変化してきたのは、10年ぐらい前からですね。理由は大きく分けて2つあります。
1つめは、現実的な話として、展覧会が年々大型化し、大掛かりなものが増えていることで、かかる費用も大きくなっているということです」
海外の有名な作品を持ってくるためには、輸送費や警備費、さらに保険金額がかかる。しかも、3.11以降は保険料が高額になっていることもあるそうだ。
「一方で、日本では企画展は1500円くらいまでとなっていますが、これは世界の中では安いほうなんですよ。英国など常設展が無料というところはありますが、企画展はもっと高い国が多いんです」

また、かつては新聞社やテレビ局が「社会メセナ」で社会への文化貢献事業として行えていたそうだが、今は厳しい世の中だ。
「今は入場者収入だけでなく、グッズ売り上げの一部が展覧会を支えているというのが、現実的な話です。ショップのポジションが変わってきているんですよ」

そして、ふたつ目にして「最大の変化」は「お客さんの求めることが多く、そのニーズに合わせて、質の高いショップになってきたこと」だそう。

「たとえば、点描グッズは、点描だけで展覧会を行えること自体が珍しいので、『点描の面白さをそのまま持って帰れるものを』ということから、キャンディやビーズなどを企画しました。もともとモノを作る仕事をしてきているので、ただ印刷されたシールをペタペタ貼るだけじゃつまらない。どうせなら、思わずクスリと笑ってしまうようなグッズにしたいと思ったんです」

開さんはグッズの企画・デザインを行うにあたり、一から展覧会に取材を行い、「実作品を現地で見てくる」そうだ。たとえば、「点描~」企画ではオランダのクレラー=ミュラー美術館に足を運び、「今のオランダの空気」を持ってくることを心がけたと言う。

展覧会を見たら、やっぱりグッズも欲しい。そして、どうせなら、そのとき、そこでしか買えない楽しい「限定グッズ」が欲しいと思う人は多いもの。

時代の変化とともに、ミュージアムショップは、より楽しく、より刺激的なものになってきているようです。
(田幸和歌子)