日本から最も近い外国といえば、サハリン。北海道最北端の宗谷岬から、わずか約43キロのところにある細長い島だ。

サハリンはかつて日本では樺太とよばれ、南部は日本領だった。日本統治時代の豊原市は、今はユジノサハリンスク市と改められ、ロシアのサハリン州の州都になっている。

それほど近い距離にありながら、サハリンを訪れる日本人はあまり多くない。ロシアに行くにはビザが必要なことも理由の1つだろう。また、ガイドブックなども少ないため、旅先の候補として思い浮かべる人が少ないのかもしれない。

先日、そんなサハリンの地を踏む機会にめぐまれた。
夏休みに乗ったクルーズ船の寄港地の1つがサハリンだったのだ。寄港地観光ツアーなら、ビザ免除で入国できる。ただし自由行動はできず、ツアー時間も約5時間と短い。それでもサハリンの空気に触れることができたので、その様子をレポートしよう。
日本から最も近い外国"サハリン" 歴史を感じる和洋折衷な建物も

今回は、サハリンの玄関口であるコルサコフから、州都であるユジノサハリンスクへバスでドライブするツアーに参加した。片道約1時間。
車窓から見える風景は緑が多く、郊外では牛なども放牧されていた。
日本から最も近い外国"サハリン" 歴史を感じる和洋折衷な建物も

しばらく走り、街にでると、看板もロシア語になり、箱型の集合住宅が見えたりして、ロシアにきたことを実感する。
日本から最も近い外国"サハリン" 歴史を感じる和洋折衷な建物も

サハリンの見どころといえば、サハリン州立郷土博物館が代表的だ。コンクリートに瓦屋根という和洋折衷の建物は、扉に菊の御紋付き。内部にはサハリンの歴史や民族文化、自然にまつわる展示がされており、展示品の中には、かつて日本とロシアの国境に置かれていた標石もあった。外観からも展示内容からも、サハリンの歴史を感じられる場所だ。

日本から最も近い外国"サハリン" 歴史を感じる和洋折衷な建物も

レーニン広場にも立ち寄った。ロシアはどの町に行っても、中心にレーニン広場があり、レーニン像が立っているが、ユジノサハリンスクも例外ではない。広場の一角にはなぜか、妙にかわいらしいテイストのクマの絵が描かれてあり、なんだか和んだ。広場にハトが多いのは、サハリンも日本も同じ。
日本から最も近い外国"サハリン" 歴史を感じる和洋折衷な建物も

今回のツアーでは自由に買い物や食事をする時間はなかったが、広場近くの文化センターに土産物コーナーが設置され、代表的なお土産は買うことができた。最も充実していたのはやはりマトリョーシカグッズで、マトリョーシカ本体はもちろん、キーホルダーやストラップ、バッグなど関連グッズがめじろ押し! あとはロシア帽も目についた。


食べ物ではロシアの総菜パン「ピロシキ」のほか、ユニークなところでは「昆布入りチョコレート」なんてものも。実はサハリンでは昆布がよくとれ、その味わいは利尻昆布と肩を並べるほどなのだとか。また、しらかばも多く、しらかばジュースもポピュラー。飲んでみたら、スポーツ飲料のようにほんのり甘く、木のすがすがしさも感じられ、思ったよりいける味だった。
日本から最も近い外国"サハリン" 歴史を感じる和洋折衷な建物も

今回は寄港地のひとつとしての訪問だったため、かなり駆け足で周ったツアーだったが、72時間以内のビザ免除制度を利用して、もう少し長くサハリンに滞在できる旅行ツアーも実施されている。

かつて宮沢賢治も一人で旅したというサハリン。
歴史的に日本と関係が深い土地だけに、訪れることでいろいろな思いが沸き上がる人もいるだろう。私自身、近くて遠い場所というイメージを持っていたが、その距離が少し近づいた気がする。
(古屋江美子)