女性の皆さん、毎朝メイクするのってめんどくさいですよね。特に寝坊してしまった朝など、ポイントメイクだけして慌てて家を飛び出す……なんてこともしばしば。

いまとそんなに変わらない大正時代の美容法 !  ダイエットや、整形手術も

そんなことを考えていたところ、古本屋で『美粧』(東京社)なる大正時代に書かれた本を発見。著者は藤浪芙蓉という女性で略歴等は不明だが、おそらく当時の美容研究家のような立場だったと思われる。奥付けを見ると、大正5年~大正9年の間になんと14版とあるので、本書を参考にメイクしたモダンガールも多かったのではないだろうか。若いお嬢さんから家庭の主婦まで、幅広い女性をターゲットにしたバイブル的な本だったようだ。

表紙には「BEAUTYFY」という英語があしらわれ、まるで古い洋書のような佇まい。鏡台にブラシや香水とともに置いても絵になりそうだ。
花や蝶が可愛らしく、紙ではなく布の表紙というのも珍しい。

目次をざっと見てみると、
「小さな眼は如何に化粧したら大きく見えるか」「まつ毛を長く濃く密生させるには」などという、平成のいまも変わらない永遠のテーマを発見! もちろん、カラーコンタクトもつけまもなかった時代のことなので、眼のふちぎりぎりを眉墨で埋めるように黒く塗りつぶすテクニックをはじめ、椿油や重曹などを自分で調合する、まつげ美容液(!)のつくり方紹介も。
いまとそんなに変わらない大正時代の美容法 !  ダイエットや、整形手術も

これは、「垂れ下がるあごを緊縮せしむるには」のページ。二重あごを解消するべく、包帯で顔をぐるぐる巻きにしたイラストがすごいことになっていた……。

このほか、「化粧して自然の素顔の如くうつくしく見するには如何なる方法によるべきか」というテーマに多くのページが割かれており、やはり大正時代にお いても、いかにもがんばりましたというコッテリメイクより、自然な美しさを追求するナチュラルメイクが良しとされていたようだ。
いまとそんなに変わらない大正時代の美容法 !  ダイエットや、整形手術も

これはいまでいう、ダイエットのページ。
「臀部の大なると、腹の膨大なるを矯正する法」。ぽっこりお腹を引き締めるべく、現代でも寝る前などにこのポーズをとっている人、多いのでは? なぜか、この項目だけがイラストではなく、写真になっていた。

さらに、造顔マッサージや、整形手術など、現代においてポピュラーなあれこれが、大正時代にすでに存在していたことにも驚かされる(「えくぼを人工的に現出さす手術」なんて項目もありました)。現代にあって本書にないものといえば、ネイルにまつわることくらいか。

冒頭に「美粧は何故に婦人に必要か」という前置きがあり、著者は「美人と云へば、どなたでもただちに花を連想なさるでせう。花の中の花と呼ばるゝ桜! けれど造化自然の大化粧家が、それに月の眉を描き、雲の衣装をまとわせた夜の桜は、いかに没風流の人の眼にも美しく映じぬことはありますまい」と語り、自然の花でさえ月や雲でお化粧するのだから、女性はぜひとも美を自分の味方につけ、この競争社会を生き抜いて参りませう、と説いている。


芸能人の「劣化」がネットで話題になる現代。何歳になっても若々しく美しい……というのは、大正時代もいまも変わらぬ人々の願い。そのノウハウにも歴史があって、その積み重ねでいまがあるのだなあ……としみじみしてしまった一冊でした。
(まめこ)