行きつけの店での、こんなセリフ。

「いつものヤツ」
「いつものお願い」

常連になることで、好みを覚えてもらったり、細かな配慮をしてもらえるのは、嬉しいもの。


「好みの辛さなどを知ってくれているお店はありがたい」という女性がいれば、「騒がしい団体さんが来たときなど、常連さんをさりげなく奥の静かな席に案内するようにしている」という店員さんもいる。
「団体でほぼ貸切のときでも、毎日来てくれる常連さんを断るのは悪いから、事前に状況を伝えたうえで、常連席に案内している」という居酒屋なども、珍しいケースではないだろう。
ただし、「常連」と店員との間の距離が近すぎることで、他の客が不愉快な思いや、居心地の悪さを感じてしまうということも、残念ながら少なからずある。

ある20代会社員の女性は言う。
「常連になって、コーヒーをサービスしてもらうなどはすごく嬉しかったんだけど、そのうちデザートとか、どんどんエスカレートしていって、周りに注目されるのが恥ずかしくなった」
過度な「特別待遇」は、不快とは言わないまでも、必ずしも相手にとって嬉しいばかりじゃない。

また、ある30代女性の体験は……。

「以前、飲食店の○周年記念とかの日にたまたま入ってしまい、気づいたら、自分以外がほぼ全員常連だった。そしたら、常連へのサービスとして、グラスワインが配られ、自分だけが放置状態に……。別にワインが飲みたかったわけじゃないけど、たまらなく孤独感を感じた」
これは極端なケースだが、この他にも、「常連客と店員さんが仲良すぎる場合、疎外感を感じることがある」「店員と客の馴れ合いの会話はうっとうしい」(ともに30代会社員女性)という声や、「店員と常連さんで○○ちゃんなどと呼び合うのは、仕事の場ではどうかと思う」(30代主婦)という声、男性のこんな見方もあった。
「けっこう気に入っていたラーメン屋で、ご主人の人柄も良かったんだけど、そのためか長居して友達トークをする常連客がやたら多くて、次第に居心地が悪くなって、ちょっと足が遠のいてしまった」(40代男性)

さらに、常連のために「裏メニュー」のようなものを用意する店もあるが、これについてはこんな意見も。
「裏メニューとかつくっている店には『常連向き』としているところもある。お客を見ているようでイヤな感じだと思う」(料理雑誌系編集者・女性)
「そもそも裏メニューは『賄い』と同じで、一般のお客さんには出せないものか、数が少ないから通常メニューには出せないもの。
だからすべての店に裏メニューがあるとも言えるんだけど、不思議なのは、公言された『裏メニュー』というもの。ほとんど表メニューなわけだから、『常連ぶりたい常連』のためのお店のサービスだと思いますよ」(記者・男性)

いろいろ優遇される「常連」さん。リピーターになることで手厚いサービスを受けるのは当然かもしれないけれど、新たなリピーターを確保するためにも、それを傍らで見るフツウのお客さんの目もお忘れなく。
(田幸和歌子)