最近、本屋さんでブックカバーを希望しない人が増えてきているそうだ。
読書の秋が過ぎた今、実際どうなのか本屋さんに聞いてみた。


「本不況、本が売れないというのももちろんありますが、今は本を買っても“そのままで”と言う人が増えてますね」
と、全国チェーン展開している本屋さんは口を揃える。
「駅の近くにある本屋ではブックカバー率が高いそうです。電車の中で読むためでしょうね。ただしそれも以前に比べると減ってきています」

昔は本を汚したくない、本を傷つけないためなど、本を守るためにブックカバーをつける人が多かったそう。
しかし現代は本は貯蔵するよりも読み捨て、すぐに売るという声が多い。そこでブックカバーなど面倒なものはつけず、購入していく人が増えたのではないかと書店員さんは言う。

それに最近はネット通販で本を買う人が多いせいもあるだろう。ブックカバー無しで送られてくるため、そのまま持ち歩く人が増えてきているのだ。

ブックカバーをつけない人にその理由を聞いてみると、「どうせ捨てる」「カバーをつけるとどの本がどれかわからなくなる」「そもそも文庫、新書にはカバーがついているのに、その上からさらにカバーをするのは潔癖過ぎる」とさまざまな意見。

そんなブックカバー離れ甚だしい現代にあって、ほとんどのお客さんがブックカバーを希望する書店があるという。それが関東を中心に展開している本屋、有隣堂さん。
こちらのブックカバー率が高い秘密とは、色を選べる「文庫カラーカバー」サービスのおかげ。

本を購入したお客さんに「ブックカバーの色はどうされますか?」と尋ね、客が希望した色で本を包んでくれるサービスだ。
スタートはおよそ30年前の1977年。スタート当時は7色、今では10色に増加し、時期によっては数量限定色まで登場する。

もともとは店のファンを増やすために始まったそうだが、それ以上に「お客様と会話をすること」が目的だったとか。
お好きな色は何ですか? そんなことを聞かれると、思わず好きな色を言ってしまう。そのひと言からコミュニケーションができたら……という思いから始まったこのサービス。
地道な活動の結果、今ではほとんどのお客さんがブックカバーを希望するようになったのだとか。

さらに面白いブックカバーといえば、有限会社アパートメントさんが販売する“ブックパッカー”というものも。これは肩からつるす、新しいタイプのブックカバーだ。

肩紐の先にブックカバーがついていて、そこに本をセットする。一見すると皮のかばんに見えるが、パッと開けばそれは本。
ずっしり重そうだが、実際は文庫サイズでも200グラム。
本の厚みによるとはいえ、それほど負担にはならない重さだ。
本を探して鞄をゴソゴソ、なんてことをしないですむ上、旅行雑誌サイズまで揃えられていて、旅行中には便利そう。

ブックカバーを普段つけない人の中にも「面白いブックカバーがあればつけるかもしれない」「これだ、というブックカバーを見つけられたら持ち歩きます」と、完全に邪魔物扱いされているわけではない。
実際、本屋さんではつけてもらわないが自宅で手作りをしたり、ネットのブックカバーダウンロードサービスを利用して自分好みのカバーを探す人も。

狭いように見えたブックカバーの世界、実は多用化しているだけなのかもしれません。
(のなかなおみ)