先日、知人と鹿児島料理店に行き、黒豚のしゃぶしゃぶを食べた。

うまいうまいと騒ぎながら食べていたところ、お店のおばちゃんが「うちの黒豚はねえ、サツマイモを食べてるのよ、だからおいしいの」と言った。


一瞬、なるほどと納得しかけたが、あれ、ちょっと待てよ。肉の主成分はタンパク質と脂肪である。これに対してサツマイモの主成分は炭水化物である。炭水化物ばっかり摂取していて、豊富なタンパク質と脂肪が体で作られるのはなぜなのか?

黒豚卸の業者さんに聞いてみたところ、「基本的には、サツマイモから肉が作られるというよりは、別の間接的な影響によって肉の味に影響を与えていると考えた方が妥当かと思います」とのこと。

炭水化物はおもに、手足や脳などが活動するときのエネルギー源として使われる。余った炭水化物は脂肪として体内に蓄積されるが、炭水化物からタンパク質が作られることはまれであり、食べたサツマイモから直接肉が作られるということはないようだ。


実際はサツマイモ以外にも大豆などのタンパク質を餌として与えており、タンパク質から肉が作られている。業者さんいわく、「成長段階によってはサツマイモを多く与える時期もありますが、産まれてからずっとサツマイモしか食べない、ということはあり得ないと思います」とのことで、やはり、黒豚さんでも栄養バランスは重要なようだ。

ちなみに、サツマイモが黒豚の肉質に与える影響は色々と調べられている。一般的には不飽和脂肪酸含量が減少し、脂肪の融点が上昇するといわれている。これは要するに「プリプリした」豚肉になるようで、脂肪の融点が高い豚肉ほど高い格付けをされる傾向があるという研究もあるそうだ。

ちなみに、黒豚に対するもう一つの懸念として、「オナラ」がある。
サツマイモをたくさん食べているからには、さぞかしたくさんの放屁が飼育場ではなされているのではないだろうか? 

これについて、業者さんから知り合いの黒豚農家の方に聞いてもらったところ、「確かにオナラはしますが、サツマイモを食べた直後にするとか、そういうものでもないので、他の種に比べてたくさんおならをしているかはよくわかりません。」とのことだった。
(珍満軒/studio woofoo)