今年9月に開催されたB級グルメの祭典「第5回B-1グランプリ」で、山梨県甲府市の「甲府鳥もつ煮」が優勝したことはご存じの人も多いだろう。

甲府鳥もつ煮とは、砂肝・レバー・ハツ・キンカン(生まれる前の卵)を醤油と砂糖で甘辛く煮たもの。
一般的なもつ煮とちがい、汁気が少なく、照り煮してあるのが特徴だ。昭和25年ごろに甲府の老舗蕎麦屋で考案され、いまでは甲府の蕎麦屋のポピュラーなメニューになっている。

過去の優勝グルメの経済効果は、数10~数100億円とも報じられるB-1グランプリ。当然、山梨ではかなり大きなニュースとして取り上げられている。大会から一夜明けた9月20日、地元新聞の一面トップを飾ったのは、もちろん優勝を伝える記事。その後も、ブームの様子や誕生にまつわるコラムなど、関連記事が毎日のように掲載され、紙面をにぎわせている。


また、甲府の街のあちこちには、鳥もつ煮を宣伝する横断幕やポスター、のぼりが登場。県内のスーパーでは、家庭で作るための生肉やタレも販売され、優勝直後は売り切れになる店もあったほど。さらに、惣菜コーナーにも調理済みの鳥もつ煮が定番として置かれるようになった。

盛り上がっているのは地元の人だけではない。先日、発祥店を訪れてみたところ、駐車場の車のほとんどが県外ナンバー。週末ということもあり、開店前に並んだにもかかわらず、1時間ちかく待つ盛況ぶりだった。
また最近では、甲府の蕎麦屋に限らず、県内のラーメン屋や定食屋、高速道路のサービスエリアなどのメニューにもお目見え。気軽に食べられるようになったのは嬉しい半面、なかには味がいまひとつなものがあるのも事実。便乗が多いのは、それだけ注目されている証拠でもあるが、懸念する声もあがっている。

一躍全国にその名を知られることになった「甲府鳥もつ煮」。いまだ優勝の熱狂は冷めやらぬ様子だが、最終的に長く愛されるご当地グルメに育っていってほしいもの。個人的には現地に足を運ぶ価値も大いにあると思いますよ。

(古屋江美子)