この夏はキャンプやバーベキューで楽しんだ人も多いはず。
普通のバーベキューにも飽きてしまった人、夏の最後にバーベキューをしておきたい人、徳島郷土料理の“ひらら焼き”にチャレンジしてみては。


日本三大暴れ川の異名をとるのが、徳島の吉野川。
その周辺で生まれた……とされる郷土料理が、このひらら焼きだ。

ひららとは、徳島の方言で「平らな石」のこと。
観光課の方に作り方を伺ったところ、平らな石と、砂糖やみりんで味付けした味噌を使って作るそう。

まずはこの味噌で、石の上に土手を作る。真ん中にスペースを空けるように、大きな円を描いていく。

そして薪などを使って石をしっかり熱し、土手の真ん中に水と少々の調味料。そしてアメゴ(もしくは鮎)、じゃがいも、たまねぎ、こんにゃく、豆腐などを並べて焼いていく。
素材の周りを味噌土手で囲むので食材の水分が漏れ出さず、小さな鍋のような役割に。
さらに素材が焼けてくれば水分と味噌が混じり合い、ちょっとずつ味が広がっていく。食材にもよるが甘めにする方が美味しいそうだ。

味噌土手の中が沸々と泡立ち、いい香りが漂いはじめたら完成の合図。
土手を崩しながらお野菜や魚と一緒に召し上がれ。
バーベキューと言うよりは、味噌の煮物や土手鍋のような味わいで、焦げた味噌の香りが食欲をそそる。ただし真っ黒に焦げやすいので、焦げつかないように逐一チェックをお忘れ無く。
煮詰まった味噌をおにぎりにつけて焼おにぎりにするのもおすすめなのだとか。

しかしこの料理、いつ頃産まれたかははっきりしないそう。
元々は河原で鍋の代わりに石を使ったのが始まり。
接待や一家団欒の料理として、昔から作られて来た料理なのでは。とも言われている。
川の流域で生まれた料理であり、とれた魚を美味しく食べる方法。究極のスローフードだ。
  
ただし観光課の方が言うには「最近はひらら焼きに使用できる、強い石が少なくなって来ました」。 
質の悪い石を使うと、すぐに割れてしまう危険性もある。

そこで石の代用として、最近は平らな鉄板を使うこともしばしば。石よりは情緒が落ちるが、手軽で掃除もしやすく割れる心配もない。

もしバーベキュー予定の無い人は、鉄板の代わりにフライパンやホットプレートを使えば家庭でも調理可能。テフロン加工なら掃除もラクラクだ。もちろんきれいな丸い石を用意できるならそれに越したことはないが、その場合は割れてしまわないようご注意を。

入れる具もお好みで大丈夫だが、せっかく川沿いで産まれた料理。
できるだけ新鮮な魚を用意したい。
川魚が一番だが、これからの季節は旬のサンマでもおいしいかも。 

今年は節電ムード。全国的に「ちょっとでも涼しいところで」と、9月以降も山間、川辺のバーベキュー施設が予約でいっぱいなのだとか。
そんな場所でするもよし、もちろん上記のように家で気軽にバーベキュー気分。なんて楽しみ方も。

終わりゆく夏を惜しみつつ、こんなバーベキューはいかが?
(のなかなおみ)