甘い物の、甘さのベースとなる場合が多いのが、砂糖である。とはいえ、砂糖を使えば使うほど甘くはなるが、いくら甘い物好きでも、ただただ甘ければ良いわけではないだろう。「おいしい」と思える甘さだからこそ、心も体も喜びを感じられるというものだ。そのためには、砂糖を使用する量、あるいは砂糖そのものの味わいなども重要となる。
この砂糖にこだわったスイーツで最近話題を呼んでいるお店が、鎌倉にある。
では、どのように砂糖にこだわっているかというと、「本和香糖」という名の砂糖を、お店の商品に使用しているという。「本和香糖」は、「ほんわかとう」と読む。
――本和香糖とは、そもそもどのような砂糖なのでしょうか?
「沖縄で栽培されたサトウキビの原料糖のみを使用した砂糖です。上白糖や三温糖の10倍以上ものミネラル分が含まれています。乳白色の結晶が、すごくきれいなんですよ」
と、ご主人の奥様が本和香糖の実物を持ってきてくださった。
――この本和香糖を使おうと思われたのはなぜですか?
「お店の周辺には、小さいお子さんやご年配の方も多く住んでいらっしゃいます。そういった方々にも、まるで駄菓子屋さんのような感覚でお気軽にお店に寄っていただき、楽しんでいただけるお菓子をご提供したいと思い、優しい甘さの本和香糖を使おうと思いました」
「輪心」で最も人気なのが、バームクーヘンだという。こちらも味見をさせていただくと…。やはり、ホンワカと優しい甘さである。ところが、ただ優しいだけというのではなかった。甘い物好きをしっかりと満足させてくれる、どしっとした迫力も感じられた。
「本和香糖を使用することは、このお店を始める前から決めていました。しかし、商品として売り出すからには、優しいだけの甘さでは物足りない部分もありました。そこで、研究に研究を重ね、プレオープンの前日になってようやく、このバームクーヘンの味が出せたんです」
企業秘密の部分もあるかと思うので、その“研究成果”として生み出したワザについては割愛させていただくが、なるほど、優しい甘さだけではたしかに物足りない部分もある。本和香糖の魅力にプラス、お店の努力があってこそ、これだけの味わいのお菓子が生み出されたのであろう。
開店当初はバームクーヘンのみを販売していたというが、現在ではロールケーキ、キャラメルプリン、エクレア、シュークリーム、ショートケーキなどなど、様々なお菓子が店頭に並んでいる。そのうちのいくつかも食べさせていただいたが、どれも本和香糖の優しい甘さと、「輪心」の技術が生み出した、満足いく味わいだった。
鎌倉を訪れた折には、ぜひ一度お店を訪れ、「輪心」のお菓子を試してみては。心が、きっとホンワカするはずです。
(木村吉貴/studio woofoo)