ここ数日は好天続きで、初夏到来かと錯覚するほどポカポカ陽気のドイツですが、冬が厳しく長いドイツでは、啓蟄も、日本より大幅に遅れてやってきます。長い冬眠から覚めた両生類が、寝床からぞろぞろと這い出てくるのも、ドイツではようやく4~5月にかけてのこと。


本格的な春を迎えると、活動を始めた野生小動物を保護するため、さまざまな方策が取られるのですが、本日は、その中の一例である「ヒキガエル保護柵」(本日の画像)をご紹介します。

画像の撮影場所は、町外れの森の中の散策道。森林大好き、ハイキング大好き民族のドイツ人が、家族や友達や同僚とともにヒマさえあれば訪れて、大自然と一体になるひとときを過ごす大切な場所でもあります。それなのに、この散策道は、何と保護柵によって通行が制限されているではありませんか。

それもそのはず、この散策道付近は、ヒキガエル御用達の冬眠場所。さらに、目と鼻の先には大きな池があるため、冬眠明けのヒキガエルが、お目覚め直後の初泳ぎや繁殖産卵活動をする池へと移動する経路にあたるのが、ちょうどこの散策道というわけです。


毎年この時期になると、ハイキング客の靴底に踏まれたり、車や自転車のタイヤの犠牲になってしまう両生類が後を絶たず、すでに絶滅に瀕している危惧種もあります。

そんな現状を踏まえ、寝ぼけまなこのヒキガエルが夢うつつで歩く林道に、 カエル優先標識や通行制限用の柵を特設することで、人間や車両の注意を喚起しているのです。

自治体によっては、冬眠場所と池の間を、舗装した車両道路が通っているところもあるのですが、そういった地域の中には、池に向かうために道路を横切るカエルと車両の接触事故を防ぐため、道路の地下に「カエル専用トンネル」を堀り、トンネルを利用して道路を横断してもらうよう配慮しているところさえあるほどです。

「カエル専用トンネル」と聞くと、せいぜい雨どい程度のミニサイズのトンネルを想像しがちですが、実際には、人間の子どもでもくぐれるそうなほどの大きさ。確かに、カエルの体格に合わせたサイズに設計してしまって、肝心のカエルにトンネルの存在を見つけてもらえなかったり、トンネル内部でカエル同士の衝突事故が起きてしまっては無意味です。

保護柵を張り巡らせ、専用トンネルまで掘ってもらい、ここまで手厚く守ってもらえるカエル。
ドイツに生まれてきて、幸せモノですね。
(柴山香)