世界的に知名度を持つネラルウォーター・ブランドを多く抱えるフランス。炭酸水であるペリエもその一つだ。
ナポレオン3世が「フランスの誇り」と賞賛したペリエの故郷ヴェルジェーズを訪ねた。

ヴェルジェーズとは南仏ラングドック・ルシヨン地方にある小さな町。西に地域圏の中心都市モンペリエ、東にデニム発祥の地として有名なニームを控えている。

「19世紀までヴェルジェーズはブドウ栽培を中心とした農業の町でした。当地の湧水は、吐き気や胃の働きが鈍くなる症状である胃アトニーに医学的効能があると太古から知られていましたが、その商業化は20世紀初頭になってからです」(ヴェルジェーズ町役場)

ヴェルジェーズの湧水が「ペリエ」という名前になった発端はルイ・ペリエ博士に由来する。

「1億2000年前、火山性ガスが地表へ上るラングドック平野の地中に雨水がしみ込みました。
出合った水とガスは石灰岩の裂け目を通して押し上げられ、まるで沸騰しているように炭酸ガスを放出する水が生まれました。現在のようにペリエが広く飲まれるきっかけを作ったのはルイ・ペリエ博士。1898年に博士によってボトルとボトリング設備が開発され、1903年にはペリエの販売が始まりました。今、水源の周囲1300ヘクタールの土地は水源環境のために保護されています。そして現地にて採水されたペリエの約半数は海外140カ国で売られます」(ペリエ・ビジターセンター)

案内された地下にある源泉では、勢いよくペリエの炭酸水がわき出ていた。フランスの他の有名ミネラルウォーター、エビアン、ボルビック、ヴィッテル、コントレックスの水源がある町は、敷地内などで水を汲むことができたが、ペリエにはそのような設備はない。
さらに源泉はガイドツアーでしか見学できず、写真撮影は禁止され厳重にガラス越しに管理されている。

現在ペリエは飲料会社ネスレ・ウォーターズが管理・販売している。ヴェルジェーズの水源でペリエの仕事に従事する人は約1000人。その全てが同町在住ではないにせよ、人口約4000人の町において、それはかなりの規模を占める。かつてカルタゴの英雄ハンニバルがローマへ軍を進める際に立ち寄り飲んだペリエは、今では直接汲むことは許されないが、ボトリングされた製品を通して私たちにその飲み心地を伝えてくれる。
(加藤亨延)