「日本の性文化は非常に大衆的で街中にあふれています。一方でフランスのものはとても個人的です。フランスの性文化は17世紀から19世紀に開花しましたが、今街中では文学や映画の中に残っているにすぎません。それら作品中で描かれる性文化は、主人公が弁護士や医者など上流階級でシックなものばかり。
なぜフランスの性文化は街中から消えたのだろうか。
「女優ブリジット・バルドーに代表される1950年代、フランスのエロティズムは強烈でした。しかしそれ以降、(もちろんキリスト教的にタブーという理由も一貫してありますが)女性が社会的に解放されるに従い、少しずつ街中から表面的にエロティズムは消えました。また第2次大戦後、様々な文化的背景の人々がフランス社会に混ざるにつれて、以前からあった性に対する価値観が変わりました。しかし街中のエロティズムは消えましたが、現在の方がLBGTなどフランス人の性に対する感情は寛容になりました。一方で、街中に性文化があふれていた以前は、それらに関する価値観は肯定的ではありませんでした」(同)
文化的背景が変わるということは、フェティシズムにもフランス独自の傾向があるということ。
「フランスでは体毛にフェティシズムを感じる人が多いです。特にアンダーヘアの場合、現代はビキニが小さくなったため、多くのフランス人女性がそれらをきれいに剃ってしまいます。ゆえに多数のフランス人男性がそこをフェティシズムの対象とするようです。その点において、日本のアダルトビデオでは女優の毛深いアンダーヘアを見られるため、フランスで人気が高いです」(同)
体毛のほかには、日本でも見られるような足の指もしくはピンヒール、ガーターベルトなどランジェリーを着けた足フェチや、婦人警、看護婦などのコスプレが挙げられるという。ディレクターのジョー氏は日本で暮らした経験を持つ。
「日本にはフランスにないものが多くあり、非常に想像力豊かでバラエティに富んでいると思います。特にラブホテルはフランスで大変不足しています。なぜならパリで普通のホテルを使おうとすると高くつくため、気軽に楽しむことができません。一方で局部にモザイクがかけられる点は(フランスではそのような修正がされないため)大変奇異に感じます」(同)
現在のフランスにおける性文化は、日本の成人向け漫画や映画、ラブホテルなどから大きな影響を受けているという。今後は日本がフランスのエロティズムを変えていくだろうとジョー氏は予測する。
(加藤亨延)