普段からコピーやFAXを利用しているので、A4サイズといわれれば大体の大きさが想像できる。だから、A4サイズの仏壇が発売されたと聞いて少々、戸惑った。
お仏壇なのにA4サイズなの? と思った私は、相当古い人間なのかもしれない。

従来の大きな仏壇の存在はもはや、ない。
どこに置いても違和感のないシンプルなデザイン。「A4(エーヨン)仏壇」は、そのデザイン・コンセプトが認められ、2013年度グッドデザイン賞を受賞した。

A4仏壇は、そのサイズと置き場所にコンセプトを置き、実際に使う人のニーズと暮らしの中から生まれたお仏壇だ。A4仏壇をはじめ祈りの道具を総合プロデュースする株式会社インブルームス代表取締役の菊池直人さんに話を聞いた。


「ほとんどの家具は雑誌が入るように設計されています。A4は雑誌以下のサイズになるので、すでに家にある家具と融合することができます。インテリアを邪魔しないことも重要なポイントでした」(菊池さん)。小さくするのは分かるけど、A4って、何とも斬新。インテリアやスペースによって縦置き、横置きどちらでも可能だ。

菊池さんによると、近年、「お仏壇を置きたいが、家の中で新たに場所を確保できない」「ちゃんとお供えしたいが、写真立てと位牌をそのまま置いている」「価格が高い」など、お仏壇についての悩みや相談が増えているという。


「賃貸住宅やマンション住まいの方を中心に、お仏壇の置き場所とサイズで悩まれる方が多かったんです。今ある家具や収納場所に収まるお仏壇であれば、『お仏壇を置きたい』という家庭が増え、悩みにこたえられるのではないかと思いました」(菊池さん)。

今や核家族化がすすみ住宅事情などの問題があり、仏間を確保するのは難しい。場所があっても仏壇がほかのインテリアに合うかなど悩みはつきない。同社が行った調査(30代から60代男女600人)によると、約8割の人が先祖や故人を偲ぶ気持ちを持つことは大切だと認識しているという。

その一方で、複数人世帯の6割に仏壇がなく、マンションなどに住む人では約8割が仏壇を持たないが、仏壇を持たないことで故人への供養を不十分と感じている傾向があるそうだ。
そう、できるならお仏壇を置きたいという家庭は多いのだ。

A4仏壇の購入者からは「家具を動かさなくても飾ることができる」「転居や模様替えの際にも安心して移動できる」などの声が届く。「サイズは小さいですが、暮らしの中にちょうどよい形で自然に置けること、結果としてお仏壇を身近に感じられるようになったと感謝の声を頂くこともあります」(菊池さん)。

A4仏壇は、多くの人が抱える仏壇に対する悩み「場所」「価格」「供養したいという気持ち」を、うまく繋ぎ合せて形にしたところが、多くの人のニーズにぴったり合っているのだろう。

「社会構造をはじめとする様々な変化により、お仏壇やお墓を持ちにくくなっているのも事実です。想いに形はありませんが、人は身近にあるものやカタチあるもので、想いと記憶をつないでいくことがあります。
それがお墓やお仏壇であったり、形見や写真という場合もあるかもしれません。使う人や住まいの数だけ、その人らしい祈りのカタチがあってもいいのではないでしょうか」

海外では親から子へ世代を超えてジュエリーなどを受け継ぎ、お守り代わりの存在とする習慣があるという。「世界には色々な習慣がありますが、形は異なっても人が人を想う心は同じはず。日本の場合、それはお仏壇ではないかと思います。家族の心の中心となり、供養と感謝の気持ちを表す場所であることは、日本の伝統・文化の素晴らしい点です。たとえ時代が変わっても、暮らしに調和し世代を超えて人と人を繋ぐ。
そうした祈りの場所をこれからも提案していきたいと思います」(菊池さん)

私事だが、仏壇は実家にあるので亡き父の写真とおりんなどを置いたミニ仏壇に、毎朝、手を合わせる。菊池さんがいうように、祈ることは故人や先祖に対する感謝の気持ちや供養を表すこと。時代やライフスタイルに合わせたA4仏壇が受け入れられているのも当然なのかもしれない。
(山下敦子)