きのこのおいしい季節になってきた。ちょっと醤油をたらして焼いてもいいし、バター炒めも魅力的だ。
炊きこみご飯なんかも素敵だ。が、きのこの魅力は「おいしい」だけではないのだ。

スーパーなどで見かけるきのこは地味なものが多いが、自然界には赤や黄色など色鮮やかなきのこも数多くあり、あの丸っとしたフォルムもあいまって大変キュートなのだ。アクセサリーや、デザインのモチーフなどにもよく使われていて、そういったファッションの中にかくれたきのこを探すのが私の趣味でもある。

と、まぁ、だいたいこのような話をすると不思議なものを見る目で見られたものだが、最近はどうも風向きが違うらしい。巷では、写真展や展示会などのイベントが開催され、きのこを扱った書籍やグッズなども増え、いつになくきのこが注目されているようなのだ。
きのこ好きな女性を「きのこ女子」などとも表現するらしい。

「きのこ女子」の端くれとして、このビッグウェーブに乗らないわけにはいかない。きのこの魅力を伝えるために立ち上がろう!と決意した私が手に取ったのが『きのこ文学ワンダーランド』(DU BOOKS)だ。きのこが登場する書籍の紹介がメインではあるのだが、料理やアート、グッズなど、きのこの魅力をぎゅぎゅっと詰め込んだ一冊になっている。

それもそのはず、「監修を務めてくださった飯沢耕太郎さんは『きのこ文学研究家』として知られていますが、飯沢さんの『菌友』を中心に、きのこを愛する方々が、きのこ入門者に向けて、それぞれのきのこ愛をプレゼンした1冊とも言えます」と、本書の編集を担当した筒井さんは教えてくれた。きのこ好きの愛がつまった一冊なのだ。


聞きなれない言葉が出てきた。「菌友」とは何か?本書に書かれているのだが、きのこ好きの仲間たちのことを指すらしい。そして、きのこの魅力を伝えることを「胞子活動」と呼んでいる。なるほど、今この記事を書いていることは、まさに「胞子活動」なのだ。

すでに「胞子」が頭に入り込んでしまった私が読んでも、本書は新しい驚きがあり、さらにきのこの魅力に気付かせてくれた。中でも「お散歩deきのこ狩り」で紹介された大きなきのこはぜひこの目で見てみたい。
きのこをモチーフにしたモニュメントや遊具などが全国にあるというのだ。童話の中の登場人物になった気分になれそうだ。

また本書のイラストを担当されている玉木えみさんの描かれる挿絵が、ふわっとした雰囲気でとてもかわいらしい。玉木さんはきのこ好きが高じて、きのこを擬人化したイラスト集を出版している。その『少女系きのこ図鑑』(DU BOOKS)も「きのこ女子」にはおすすめだ。こちらにはきのこの生態も記載されているので勉強にもなる。
ちなみに私はコック帽がかわいいポルチーニがお気に入りだ。

文学の中できのこを見つける、というのも私の中には無い発想だった。本書を監修し、きのこ文学の第一人者でもある飯沢さんは男性ということで、もしやと思いきのこ好きな方々の楽しみ方の傾向をうかがってみた。

「これは、男女で楽しみ方がはっきりわかれていまして、男性は、きのこを学術的に研究し、分類したり同定したりすることで愛情を表現している方がとても多くいらっしゃいます。女性は、そのあたりには興味がなく、きのこの愛らしいフォルムのグッズを集める方がたくさんいらっしゃいます。そういった女性の裾野が、ライトな層にまで広がっている傾向がありますね」
まさに女性の傾向が自分にも当てはまる。
ビジュアル面でライトに楽しむこともでき、気になるテーマで深く研究して行くこともできる、きのこの懐は広くて深いのだ。

最後に、これからきのこのワンダーランドに飛び込む「菌友」たちへのアドバイスを伺った。

「まずは『きのこ文学ワンダーランド』を入門編として読んでいただき、きのこのいろいろな愛で方をつかんでください!それからは、食べるか、撮るか、読むか、集めるか、作品をつくるか、楽しみ方はご自分次第です。
きのこが好き、というだけで、きのこ仲間=菌友の輪がどんどん広がっていきます!そうなると、きのこのワンダーランドからもう離れられませんよ!」

なるほど、一度踏み入れたらもうきのこの魅力にはかなわない。気付いたら目がきのこを探しているし、きのこが出てくる1ページは特別なものに感じてしまう。そんな中毒性の高いきのこだが、体にはとってもいいのだからためらう必要はない。

身近に隠れているきのこに気付いたら、あなたも「菌友」の仲間入りだ。
ようこそ!おいしくてかわいい、きのこのワンダーランドへ!
(会田芽穂/boox)