「今の子どもは、与えられた事しかできない」「自分で何かを作るという事ができない」と言われていますが、本当でしょうか? いつの時代でも“現代っ子”を揶揄する常とう句という気がしないでもないのですが。
もしかして、今の子どもたちの遊び道具が“ゲーム”一辺倒だと思ってません? 例えば私、知人の長男(3歳)にレゴブロックをあげたんです。
すると、そのレゴで遊ぶ遊ぶ! 乗り物なのか動物なのか、とにかく幼いなりに色々と組み立てて楽しんでましたよ。大した想像力じゃないですか。

じゃあ、今度はこれをプレゼントしてあげようかしら。「橋本螺子(らし)」(静岡県浜松市)が来春発売を予定しているのは、その名も『ねじブロック』
これ、ねじを自由に組み合わせて卓上サイズの立体物を自作できる玩具キットなんです。

では、その実物を見てみましょう。
……なるほど。そこには、ねじを挿す穴が空いていました。しかしフォルムは、何てことないブロック。
この何てことないブロックを、“ジョイント部分”とお考えください。ねじでブロック同士をつなぎ合わせ組み立てることで、動物だったりロボットだったりオブジェだったり何だったりが出来上がるわけです。

さて、この『ねじブロック』商品化の経緯を知りたい。
でもその前に、同社が59年の歴史を持つ“ねじの専門商社”だという事実を踏まえなければいけません。
「私は昭和29年生まれの“2代目社長”なんですが、初代である父がこの商売を始めたのは昭和30年です。要するに、ねじは私の遊び道具でした。私は『ねじで育ってきた』と言っても過言ではありません」(同社・橋本秀比呂社長)
そんな愛おしい「ねじ」なのに、その存在は“脇役”止まり。商品に組み込まれサポートするのが本分で、決して主役には成り得ません。
「だからこそ、私には『ねじを主役にしてあげたい!』という思いがずっとありました」(橋本社長)

そして、もう一つ。
橋本社長の趣味、「ジャンクアート」なんです。廃棄するしかない“ジャンク”(鉄くずやガラクタ)を材料に作品を完成させる、ニッチな芸術。同社内には、社長自らが作ったものや芸術家に依頼して完成したものなど、ジャンクアートの数々が展示されているそうなんです。
「でも作品を完成させるには溶接したり、面倒な工程が必要となります。そこで誰でも作れるような、“レゴブロックのねじ版”を作りたいと考えました」(橋本社長)

そうして生まれた『ねじブロック』の遊び方について。もう、市販のねじは全部使えちゃいます。
だって、ねじは全て規格で大きさが決まっているから。無限大に存在する「ねじ」と「ブロック」を用いれば、無限大の作品が生み出せます。そうすれば作品のバリエーションは無限大だし、その大きさだって無限大。際限は無しです。
「いずれはモーターを使って、『動くねじブロック』も商品化したいですね。あと、『小さいねじブロック』を販売し、顕微鏡を覗きながら組み立ててもらったりね」(橋本社長)
そうなると、リアルな乗り物や、はたまた動く恐竜なんかも作れそうですね!

続いては、この商品のターゲット層について。
もちろん、子どもたちにガシガシ遊んでいただきたいですよね。これをいじってると、創造力も育まれるだろうなぁ。
「実はある日、病院のリハビリテーション科を訪れたら、ねじが置いてあったんです。どうも、ねじを付けたり外したりの動作が、リハビリに役立つらしいんです」(橋本社長)
そこで橋本社長、病院の医師に『ねじブロック』の構想を打ち明けてしまいました。
「ただのねじだと単純過ぎてつまらないだろうし、『こういうのを考えているんですよ』って告白したら『それ、完成したらぜひ持ってきてください!』って評価していただきました」(橋本社長)

玩具としてもリハビリ器具としても多くを望めそうな『ねじブロック』は、同社が開設予定のウェブサイトにて発売されるとのこと。価格は未定です。


これ、男の子の琴線を刺激しますよね。2015年の主役は、「ねじ」で決まりか!?
(寺西ジャジューカ)