あくまで、筆者の考えです。自動車を持つメリットとデメリットを天秤にかけると、「買わなくてもいいかな?」という判断に落ち着いてしまう。
まず、価格が高い。駐車スペースを確保しなければいけない。小回りがきかない。う~ん、所有してなくてもいいかしら……?

布とクッションで覆われた、着せ替えできる“新しい乗り物”が登場


昨日、超小型電気自動車『rimOnO(リモノ)』の試作車発表会が開催されています。
超小型電気自動車『rimOnO』は、布製ボディで着せ替え可能な全く新しい乗り物

開発したのは、15年務めていた経済産業省を辞め、rimOnOを手掛けるために起業した伊藤慎介氏と、トヨタ自動車在籍時に愛・地球博『i-unit』コンセプト開発リーダーを務めたデザイナー・根津孝太氏のお二人。
「私自身が全く車に関心がなく、そんな僕でも欲しいと思える車を作りたいと起業いたしました」(伊藤氏)
超小型電気自動車『rimOnO』は、布製ボディで着せ替え可能な全く新しい乗り物
『rimOnO』に乗っているのが伊藤さんで、『rimOnO』に手をかけているのが根津さんです。

この車は、「のりものから”NO”をなくす」という理想から「rimOnO」と名付けられたそうです。

実物がお披露目されると、そのカワイさは特筆モノでした!
超小型電気自動車『rimOnO』は、布製ボディで着せ替え可能な全く新しい乗り物

超小型電気自動車『rimOnO』は、布製ボディで着せ替え可能な全く新しい乗り物

防水性の布とクッションで覆われた“やわらかボディ”で構成されており、周りの人になるべく危害を加えないような工夫がされている。
超小型電気自動車『rimOnO』は、布製ボディで着せ替え可能な全く新しい乗り物

超小型電気自動車『rimOnO』は、布製ボディで着せ替え可能な全く新しい乗り物

超小型電気自動車『rimOnO』は、布製ボディで着せ替え可能な全く新しい乗り物

超小型電気自動車『rimOnO』は、布製ボディで着せ替え可能な全く新しい乗り物

防水性の布はスマートフォンのカバーのように“着せ替え”できるので、お好みデザインの車体に簡単にリフォームすることができます。
超小型電気自動車『rimOnO』は、布製ボディで着せ替え可能な全く新しい乗り物

「細部を含め、『どれだけカワイくするか』にムチャクチャこだわりました」(伊藤さん)
シートレイアウトにも、こだわりが。前の座席は、乗り降りしやすいように“回転シート”になっています。
超小型電気自動車『rimOnO』は、布製ボディで着せ替え可能な全く新しい乗り物

操作は、ハンドルではなくバーを用いる。自転車やバイクに近い感覚で、それらを運転し慣れている人が「これなら私も運転したい!」と思ってもらえるよう意識されていました。
超小型電気自動車『rimOnO』は、布製ボディで着せ替え可能な全く新しい乗り物

超小型電気自動車『rimOnO』は、布製ボディで着せ替え可能な全く新しい乗り物

また、小さい車だとどうしても足元のスペースを広くとれなくなるので、操作を手に集中させている。ただ、高齢者が運転しやすいようフットブレーキなど足の操作を増やすことも検討しているとのことです。
超小型電気自動車『rimOnO』は、布製ボディで着せ替え可能な全く新しい乗り物

純正のカーナビは付けず、ユーザーが所有するタブレットなどを持ち込む。また、タブレットのrimOnO専用アプリを作るといった展開も想定されている模様。
「オーディオも家で普段聴いているものを持ち込んでもらい、USBで接続して聴けるという形になっています」(伊藤さん)

見てくれだけじゃなく、“音”もカワイイ。ローランドの協力を得て、走行音やウインカー音、クラクション等で以下の3パターンの音が装備されています。
・「rimOnOが走りながら演奏する」
・「rimOnOが可愛いロボットで、もし歩いたならば」
・「rimOnOを、もしもゼンマイで走らせたら」
文で説明してもきっとまるで伝わらないので、音については動画でご確認ください。

彼らがこの車の開発に至ったモチベーションですが、「速くて、デカくて……」という一般的な電気自動車のイメージとは真逆の「小型で、すごくスローで、人に優しい乗り物」を目指しているようです。ターゲット層は、特に高齢者を想定。
「今の60~70代の方々は『カッコ良く老いたい』という気持ちが強い。『この車ならカッコ良く街中を移動できる』と思ってもらいたいと、我々は考えています」(伊藤さん)
小さくて、ほんのちょっと短い距離を移動できる乗り物があった方が、可能性は広がるでしょう。

スペックから窺う使い方


さて、いよいよ『rimOnO』のスペックをご紹介です。

●全幅1.0m×全長2.2mのコンパクトサイズ
この大きさだと、一般の乗用車と比較して駐車スペースが4分の1で済む。
超小型電気自動車『rimOnO』は、布製ボディで着せ替え可能な全く新しい乗り物
イメージ図。

●大人2人乗り(または大人1人と、後ろのシートには子ども2人)
●着せ替え可能
●交換式バッテリー
超小型電気自動車『rimOnO』は、布製ボディで着せ替え可能な全く新しい乗り物
伊藤さんの横にある縦に細長いカセットが、『rimOnO』に使われる電池です。

「このような電池を、色んなメーカーと一緒にコラボしたいと思っています。電池の規格の共有。例えば、rimOnOで走る時はこの電池を4つ、スクーターの時は1~2個……というシステムを実現できればと考えています」(伊藤さん)
●総重量は200kg以下を目指す
現在は約320kgのrimOnOだが、なんとか200kgを切りたいと考えているとのこと。乗り物が軽いと飛行者との接触時のダメージが軽減されるし、バッテリーも少なくて済みます。
●最高速は45km/h
●航続距離は50km
片道100kmの道を行こうとしたら、50km手前の段階でバッテリーを取り外してあげる。コンビニ等でそのバッテリーを返し、代わりに充電したバッテリーが受け取る……といったサービスモデルが想定されています。バッテリー交換によって長距離が走れるという考え方です。

もちろん、ボディが布でできているという要素も見逃せない。
「布のボディでできており、ボンネットは座れる柔らかさになっています。カフェへ乗り付け、設置されているチェアの横でボンネットに座りながらコーヒーを飲むということも可能でしょう」(伊藤さん)
人と近い距離に乗り付けても、圧迫感がない。素材・サイズが作用して“小さくてやさしい乗り物”となりました。
「また電気自動車の一番いいところは、排ガスがあまり出ないことです。よって、車のまま家の中やショッピングモールへ入ることが可能になります。例えば、ショッピングモール内の広い通路の真ん中でrimOnOを足代わりに活用。お店の近くまで運転して、雨に濡れない……なんてまちづくりが可能です」(伊藤さん)

市販化するには、然るべき制度が必要


『rimOnO』の詳細は、わかりました。使い勝手は、すごく良さそう! でも、このままでは市販できません。現在、国土交通省は「超小型モビリティ制度」を制定しているものの、走行地域にあたる地方自治体が「この車を走らせたい」と国に届け出なければ、その車を走らすことができないのです。例えば、渋谷区が「走ってもいい」と定めた車も、港区に入った時点で違反になってしまう。
「『まず、乗り物を作って提案しないと世の中が変わらない』と、我々は考えています。ちゃんと日本全国走れるような制度を作っていただけるよう、国に要望していきたいです」(伊藤)

そこで注目されるのが、“L6e”。これは、ヨーロッパに導入されている以下のような制度です。
・車両重量350kg以下、設計最高速度45km/h以下、最大連続定格出力4kW以下、定員2名のマイクロEVのカテゴリー
•14歳以上であれば原付免許で運転可能
•フランス、イタリア、スペインなどで導入済
「こんな制度を日本でも採用してもらえないか? と、国に要望していきます。“日本版L6e制度”早期導入の要望です。これが実現しないと2人乗りのrimOnOは世に出せないと、我々は考えています」(伊藤さん)

ここで、大局的に物事を考えてみます。例えば、カリフォルニアでは電動スケートボードが自転車と同じように走行できる制度ができている。要するに、世の中が「新しい乗り物を必要」としていて、その乗り物が走れるような環境整備に積極的な地域が今や数多い。
しかし、日本は残念ながらそこが遅れている。今は自動車大国かもしれないけど、次の乗り物の競走が始まる時に日本が遅れてしまうリスクがある。
「ヨーロッパは”小さい車”の先進国なので、そことハーモナイズしていく方向性は日本にとってもメリットが出やすいんじゃないかと思います」(根津さん)

『rimOnO』を段階的に展開していく


とは言え、現実問題として現時点の状況を無視することはできない。
「現在流通しているミニカー(原付き四輪)のような形でしたら、すぐ市場に出すことができます。ただ、ミニカーの問題は『1人しか乗れない』ということ。しかも、その時は値段が100万円くらいで、限定50台ほどになってしまうと思います」(伊藤さん)
まずは、暫定モデルとして1人乗りのミニカー規格を市場に出す。しかし、最終的には2人乗りモデルの『rimOnO』をちゃんと市販する。来夏での正式な販売が目標に掲げられています。

とどのつまり、大前提として日本全国で走れる制度が作られなければいけません。ちなみに、2人乗りモデルの『rimOnO』市販時に設定したい目標額は40万円。ちょっと頑張れば買える値段じゃないですか!
(寺西ジャジューカ)