突然人がいなくなる奇妙な団地とは
「地域リロケーション住宅」だと思われる団地
先日、大阪で奇妙な公営集合住宅(団地)を見かけた。
この前までは、どこにでもある普通の団地で多くの家族が暮らしていた。
なのに通りかかったときは、まったくの無人だった。ベランダには洗濯物は干されておらず、周囲は敷地内に入れないようにフェンスが貼られていて、1階にある入り口やベランダはベニヤ板で閉じられ人が侵入できないようになっている。雑草もボーボーで、人が住んでいる気配は全くなくなった。別に建物のデザインや外壁からみて老朽化して建て替えのためで退去というわけではなさそう。当然、人が前に住んでいたので入居前ということでもない。また近頃世間で騒がれている耐震強度偽造問題で退去命令が出たなんて話も聞いたことがなく、その可能性もない。
どうも、ここは短期間で入居者が一斉にいなくなってしまったようだ。なんとも不思議。

このことを知人に話したら、他の所にも同じような団地があるといい、あの団地だけではないということがわかった。その後、色々と調べていて見つかったのが「地域リロケーション住宅」という単語。なにか特殊な団地のようだ。聞き慣れない単語だったので、大阪府に問い合わせてみた。


「地域リロケーション住宅」とは、公共賃貸住宅(団地)の建て替え時に、前に住んでいた人たちの仮住居もしくは本移転先として建設されたものとのこと。費用補助等を出して移転してもらうより、はっきりと移転先をまとめて確保しておいた方が、スムーズに建て替え事業ができるということで、平成2年度に創設された事業だとか。公共賃貸住宅を管理する、全国各地の地方公共団体や住宅供給公社が、国土交通大臣の承認のもと建設するものだ。ちなみに、国交省に問い合わせたところ、全国31の市区においてに2,846戸分建設されているそうだ。

つまり、団地建て替えのときに、そこに住んでいた人の移転専用の団地のため、一斉に多くの人が入ったり、また仮移転の場合は急に皆がいなくなったりするようなことが起こるようだ。といっても制度上の区別なので、建物自体や部屋の内装などは普通の団地と変わりはないようだ。
ただ、現在は府が建設したものはなく、府下のいくつかの市での建設例はあるとのこと。

最近は、次々と団地の建て替えが行われている。今後も多くの団地が建て替えられていくみたいなので、「地域リロケーション住宅」もますます増えていくはず。急に無人になる団地を見かけても驚かないでくださいね!
(もがみ)