鬼太郎も高校進学していた
高校に通うゲタ吉(鬼太郎)、ちゃんちゃんこじゃなくて、こんな感じの服をいつも着ています。
ゴールデンウィーク期に公開され、大ヒットを記録した、ウエンツ瑛二主演の映画『ゲゲゲの鬼太郎』
毎週日曜の朝には、実に5度目となるテレビアニメも放映されていて、今年はなんだか鬼太郎と妖怪ブーム。
小1の娘も、なんだかいまいちばん好きなアニメ番組らしい。

そんな鬼太郎が、一時期、高校に通っていた時期がある。
『続ゲゲゲの鬼太郎』。1977年から『週刊実話』で連載されたシリーズで、成長した鬼太郎が、「幕の下高校」という、人間の高校に通うというものだ。
お化けや妖怪には、「学校も試験もなんにもない」はずだったんじゃなかったのか、鬼太ちゃんよ(ネズミ男風で)という気もするが、現代(といってももう30年も前ですが)を生きる妖怪には、学校に行っとくことも必要な時代なのだ。

高校に通う鬼太郎が名乗る名前が、「田中ゲタ吉」。
身体も大きくなったゲタ吉はもう、あのリモコン下駄は履いてなくて、靴履き、長ズボン。そして、祖先の霊毛で編んだという、ちゃんちゃんこも、同じ黒×黄ボーダー柄のニットだかTシャツだか(長袖、半袖あり)に編み直されている。猫娘や3期アニメのユメ子でもない、ユリ子というタレントの彼女までいたりする。いろいろ俗っぽいぞ、鬼太ちゃん。

そして、この『続』シリーズのもうひとつの大きな特徴が、掲載誌のカラーによる「お色気」。“よい子の憧れのヒーロー、ゲゲゲの鬼太郎”の世界とはほど遠い、「お色気」描写が、前面に出まくっているのである。


ねずみ男はもちろん、意外と脇が甘い鬼太郎、またはさえない一般人が、女性(妖怪ふくむ)の色気にコロッと引っかかったりして騒動になる、というストーリーが多い。まあ、いろいろ「魂を抜かれちゃう」わけです。ぐうたらでやる気なさそうな鬼太郎を見事に演じていたウエンツにはぜひ、こっち版もやってもらいたい。Vシネかテレ朝の金曜ドラマ枠あたりで。

作中の細かいディティールは省略させていただくが、けっこうそのまんまな描写も多い。
あの目玉の親父も、「ああ、お父さん、そんなことを!」と、思わず声をあげてしまう場面もある。

鬼太郎も、
「お父さん なんてエッチなことするんです(中略)それにしてもお父さんたるものが……」
とため息つくが、
「たてまえと本音は違うんじゃよ」
ああ、お父さん……。

連載当時、たまたま父が買ってきて置いてあった『週刊実話』にこれが載っているのを発見し、「おっ、こんなところに鬼太郎だ」と、見てみようとしたところ、「お前には、まだ早い!」と、激しく叱られ、「違うんだ、鬼太郎を見たいだけなのに……」というのをうまく説明できず、悲しい思いをしたことがあった。
しかし、読めたところでこんな鬼太郎なのである。どっちにしろ、わが父ナイス判断であった。

この大人向け鬼太郎、後に『ゲゲゲの鬼太郎 スポーツ狂時代』とタイトルを変え、鬼太郎が相撲や野球に挑戦という、スポーツ要素を取り入れたりしながら数年連載は続いた。
これらを含む作品は、『新ゲゲゲの鬼太郎』『その後のゲゲゲの鬼太郎』といったタイトルの編集版のコミックスなどで読むことができたが、現在は入手困難。


さて、我が家にあるのは『新』のほうだが、鬼太郎ブーム中の娘が発見し、「これ読みたい!」と切望するおそれがある。
そんなとき、父になったオレ、どんな言い訳するのか。歴史は繰り返すな、鬼太ちゃんよ。
(太田サトル)