春休みや高速料金の割引などで、遠方に出かけた人も多いことだろう。

ところで、「子どものころは乗り物酔いがひどかったのに、大人になってからほとんど酔わなくなった」という人の話をよく聞く。
その一方で、「昔は絶叫マシンが好きだったのに、いつの間にか弱くなった」なんて人もけっこういる。

実は自分自身も、子供の頃は乗り物酔いがかなりひどかったのに、今では平気だし、逆に「絶叫マシン」は大人になってからのほうが恐ろしく感じるけど……。これってなぜ?
『知って得! 正しい医学知識』(盛隆出版)の著者で、医療法人社団池谷医院の池谷敏郎院長に聞いた。

「これはやはり“経験の量”の違いでしょう。大人になると、乗り物には鍛えられて、自分がどうすると酔いやすいのかのパターンなどがわかるようになり、それを避けることなどで、経験的に酔わなくなります。でも、子供の頃と違って、ブランコでは酔うこともあったりしますよね? これは普段乗らなくなっているからです」
確かに、「昔は平気だったのに、今は公園のブランコ程度でも気分が悪くなる……」なんて話をする母たちもいる。


となると、絶叫マシンも、単に子どもの頃より乗らなくなるから、弱くなるということ?
「やはり『慣れ』の問題は大きいと思います。また、楽しんで夢中になっていると、“酔い”を忘れて、症状が出ないこともあると思います」
これは絶叫マシンとの向き合い方の違い――子供の「はしゃいでいる精神状態」と、大人の「嫌々つきあっている精神状態」の違いによるものでは? という指摘だ。

加えて、大人には「単純に楽しめない要素」もある。
「たとえば、大人の場合、疲れていたりすると、体調が悪くなり、酔いやすいこともあるでしょう。また、肩がこっていたりすると、乗り物に揺られて肩こりが悪化し、気持ちが悪くなることもあるかもしれません」
さらに、「大人になるとお尻が重くなって、揺れの“弧”が大きくなる」という可能性もあるのだそうだ。

ちなみに、「慣れ・経験の問題が大きいから、訓練すれば良い」とは言っても、現実問題としては、苦手なものにはそうそう乗りたくないというのが人情である。

自分などはどうしても絶叫マシンに乗らざるを得ないときは、「腹筋に力を入れたり、全身に力を入れるほうが良いのか」「力を抜いたほうが良いのか」とかなり悩んでしまうのだが、絶叫マシンの好きな人たちに聞いてみると、異口同音でこんな答えが。
「落ちるまま、揺れるがままに力を抜いて、身をゆだねてしまうほうが良いよ」

これ、実践してみたら……意外なくらい怖くない!
もちろん苦手な人にとっては「力を抜く」こと自体が至難の業ではあるのだけど、「どうしても」のときにはおススメです。
(田幸和歌子)