最近の家電売り場で、「○倍速機能を搭載」とアピールする液晶テレビをよく見かけるようになった。コマ数が増えて映像が滑らかになるということらしい。
今回は、それを確かめるべく、液晶テレビ『ブラビア』を製造・販売するソニーに4倍速の映像を見せてもらった。

従来のブラウン管テレビやプラズマテレビにはない問題を液晶テレビは長年抱えてきた。それはコマとコマとの間に生じる「残像感」だ。テレビ放送の映像は1秒間に60コマ。それをそのまま液晶テレビで映し出すと、速い動きの映像のとき、どうしてもボヤケ(残像)が見えてしまう。

そこで、この問題を解決する手段として、倍速機能が登場した。
元の60コマを120、240コマに増やし、コマ間の映像のズレを小さくすることで、ボヤケを軽減するというものだ。

論より証拠。ボヤケが本当に見えなくなるのかどうかの映像実験をしてもらった。
同じ映像をひとつの画面内で左右に2分割し、右側は60コマ、左側は4倍速「モーションフロー240コマ」で画面全体を右から左へ流すように再生。すると、明らかに
「240コマの方がキレイに映っている」
正直、これほど違いがはっきり出るとは意外だった。

さらに、ビデオカメラで撮影した入力映像がボヤケてしまっていても、それを自動検知して補正する「IBリダクション」機能も備える。

このように徹底的にボヤケを除去して、クリアで滑らかな映像を追及している。これが最先端の液晶テレビの技術力だ。
「4倍速によって、かなりボヤケは軽減できたと自信を持っています。液晶テレビの次の課題はコントラストのさらなる向上でしょう」とソニー。

現代のテレビは、ただデジタル放送を受信して再生する機械ではなく、視聴者に最適な映像を提供するためにさまざまな加工を施す「映像コンピュータ」に進化したのだ。
だが、一方で最近、若者のテレビ離れが進んでいるというのは皮肉な話である。
テレビ業界の本当の課題はハード面の向上よりも、「テレビの進化に見合ったおもしろいコンテンツをいかに充実させるか」なのかもしれない。
(羽石竜示)