深夜のテレビ通販で、手でハンドルを回して充電できる非常用の携帯ラジオをよく見るが、足でペダルをこぐと充電できる自動車が、世の中にはあるらしい。

作ったのは、トヨタやホンダといった大手自動車メーカーではなく、ZEVEXという団体。
代表の鈴木氏に話を聞いてみると、「自転車をこぐのと同じような感覚で、自動車を充電できます」とのこと。

ZEVEXが開発した電気自動車には「回生ブレーキ」がついている。「回生ブレーキ」とは、運動エネルギーを電気に変えるときに発生する抵抗力をブレーキに利用する技術。鈴木氏いわく、「この回生システムを利用して、駆動系の途中に自転車のペダルを割り込ませ、ペダルでモーターを回せるように細工を施し、人力充電電気自動車を実現させた」のだそうだ。

ではこの電気自動車、どれくらいこぐと、どれくらい走るのだろうか? ZEVEXで行われたテスト走行では、「3分こいで、30メートル走った」らしい。「テスト走行を見学した人からは、『女の子がこいでも意外と走れるんだねー』、『これだけしか走れないの!?』といった両サイドからのご意見が、それぞれ半々くらいですね(鈴木氏)」。
テスト走行の様子は、動画サイト「YouTube」にアップロードされているので、興味があればご覧いただきたい。

一見、あまり実用性がなさそうな自動車だが、なぜ、このような電気自動車を作ったのだろうか? 鈴木氏に聞いてみると、「多くの市民は、自動車を運転する時にどれほど膨大なエネルギーを消費しているのかを知りません。このマシンをこげば、自動車が消費するエネルギーの大きさが『骨身に染みて』体験できます。まさに『百聞は一見にしかず』です」とのこと。

「こんなバカバカしいシステムを大真面目に作るのはおそらく我々だけ」とも話す鈴木氏だが、ZEVEXは「排気ガスを全く出さない車による、21世紀型の車社会を実現する」という崇高なミッションを掲げる、マジメな自動車団体である。もともと、密林の中をオフロードカーで走り回る、やんちゃな車好きだった鈴木さんが、「このまま地球を汚染しながら楽しんでいてもよいのだろうか」という疑念を感じ、車仲間をつのって1999年に作ったのがZEVEX。
今回の電気自動車は3台目に開発したもので、これまでに電気自動車によるロシア間宮海峡横断や、プラグインハイブリッドによる日本列島縦断などを行ってきたのだそう。

旺盛な活動を続けるZEVEXの究極の目標は「4WD電気自動車による南極点への到達」。究極の大地といえる南極大陸を電気自動車で走破することで、次世代自動車の潜在能力を世界に知らしめたい、という思いで、日夜活動に取り組んでいるとのこと。個人的には、人力充電で、ぜひ、南極点に到達していただきたい。

とにもかくにも、新しい車社会は、着実に近づいている。
(珍満軒/studio woofoo)