東日本大震災によって生活に必要なものの多くをなくしてしまった人は少なくない。家や職場を失うのはとても辛いことだと思うがもうひとつ、なくしたらとても生活が不便になるものがある。
それはメガネだ。筆者もド近眼なので、メガネがないと生活にとても困る。そこで、そんな方たちをサポートする便利なメガネがあるので紹介したい。

このほど、メガネレンズメーカーのアドレンズ・ジャパンさんから東北の被災者のみなさんに初回生産分の1000本が提供されることになった防災用メガネ『アドレンズ エマージェンシー』(同社製)がそれだ。このメガネ、ふつうのものと何が違うかというと、自分で度数を合わせられることだ。レンズ横のツマミを回して、よく見えるところに合わせるのだ。
度数は近視(-6.0)から遠視・老眼(+3.0)まで対応する。

しかしこれって、本当に生活に支障がない程度にちゃんと矯正できるのかちょっと不安な気がしたので、同社に聞いてみた。
「一時的に視力の確保が必要なときに、不特定多数の方が使用できる前提に開発されている緊急時のお助けメガネです。なので、日常生活での使用はお勧めできません」

そうか、あくまで緊急的なものなので、ふつうのメガネのような矯正力は期待すべくもないわけだ。また、同メガネは通常のメガネに比べ、視野が狭く(焦点が合う面積が少ない)、見え方の質も違うため、車の運転やリスクを伴う機械操縦などが禁じられている。さらに、乱視には対応していないそうだ。


そして、いざというときの被災時に壊れないで保管するため、強固な保護ケースに入れて販売されている。で、どのくらい強固なの?
「落下やぶつけるなど、通常の範囲での衝撃には耐えうると考えています」
確かに、保管上丈夫なメガネケースがあるのとないのとでは大違いだ。

すでに同社ではこのようなメガネを開発途上国においても提供しているという。
「開発途上国(特にアフリカ諸国)ではもともと眼病が多い上に、眼科医や眼鏡店不足、経済的理由によりメガネの入手が困難です。そのために、視力を得ることができない人が多く、目に関するQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が社会問題のひとつになっています。そこで、簡単に自分で度数を合わせることができ、また、1本で家族、友人、他の人々と共有できるメガネが必要と考えました」
日本ではこうした大震災が起こってはじめて、物やサービスが充実していることの有難さを実感するわけだが、開発途上国では日常慢性的に不足しているのだ。


メガネは日常のうえで不可欠なパートナー。大事に使いましょう。そして、被災者のみなさんに一日も早く生活を取り戻すための物資(メガネを含め)を届けてもらいたいです。
(羽石竜示)