中国では制定のための作業が進められている「反虐待動物法(動物虐待禁止法)」に「犬・猫肉の食用禁止」が盛り込まれる見込みと伝えられたことで、一部地域で当惑や反発の声が出はじめた。27日付楊子晩報が伝えた。


 楊子晩報は江蘇省の地元紙。省都南京市の郊外にある石湫鎮では、犬肉鍋が名物料理で、多くの料理店が軒をつらねる。店主らは「犬肉食の禁止」に猛反発だ。

 「店を始めてずいぶん長い」という経営者は、犬肉食の禁止が法律の条文に盛り込まれることを知り「このあたり全体が大騒ぎになった。当たり前だろ」と憤った。同経営者によると、石湫鎮では昔、とりたてて名物料理などと言えるものはなかった。
ただ、一般家庭で食用犬を飼い、年越しなどで客を迎える際に、犬肉の鍋でもてなす習慣があった。それが徐々に、専門の料理店で出すようになった。家庭の味、郷土の味が評判になり、他の地からわざわざ食べに来る客が多くなったという。

 犬肉料理が禁止されれば、店は成り立たない。「(同じような味つけで)羊の肉を使うしかない。それこそ“羊頭狗肉”の商売をさせられることになる」――。
経営者は、一方的な法制定でそれまで大切にしていた犬肉料理を放棄させられ、“インチキ料理”を出さざるをえなくなると皮肉った。

 江蘇省では、犬肉料理が盛んな徐州市沛県でも、「2000年以上前の漢の高祖(劉邦)も好んだ料理。省の無形文化遺産にも登録されている」と、業界団体幹部が犬肉食禁止の動きに反発している。

**********

◆解説◆
 「羊頭狗肉」は本来、「羊の頭を客に見せ、実際には犬の肉を売る」ことで、「みかけは立派だが、内容は貧弱」であることをあらわす。

 東北地方に多い朝鮮族を除き、中国で犬肉食が盛んなのは主に南部。一方、北部では「羊肉」の評価が高い。
「美」という漢字も「羊」に「大」を組み合わせて作られたとされる。(編集担当:如月隼人)

【関連記事・情報】
犬肉の食用禁止に当惑の声「ご当地名物・食文化!」…中国・江蘇(2010/01/27)
中国で犬肉・猫肉の食用禁止へ-動物虐待禁止法案に盛り込む(2010/01/26)
重慶に美味追求の頑固店主、「客の注文許さず」で繁盛(2008/09/01)
日本の“弁当芸術”披露、中国人も「やってみたい!」(2008/12/05)
上海でB級グルメ人気、行楽客で人気店に行列(2008/10/03)