惜しまれつつも解散してしまったSMAP。
年末には、SMAPメンバーが犯人役を演じた『古畑任三郎vsSMAP』や、各メンバーが主演を務めた『世にも奇妙な物語 SMAPの特別編』、正月特番の『僕が僕であるために』が各地で再放送ラッシュとなり、大きな反響を呼んだ。
もう2度と観ることができないかも知れないSMAP全員集合の希少性。その価値や絶大である。

バラエティはともかく、メンバーが揃って同じドラマに出演したのは、他にクリスマス特番の『X'smap~虎とライオンと五人の男~』ぐらいだろう。
では、映画はどうだろうか?

6人時代のSMAPが勢ぞろいした映画、原作はサッカー漫画


94年3月公開の『シュート!』こそ、SMAP勢ぞろいとなる唯一の映画である。『SMAP×SMAP』も放送前、まだ駆け出しのアイドル時代。つまり森且行在籍時代の6人体制のころの作品だ。

当時、少年マガジンで連載中だった同名人気サッカー漫画が原作。
『キャプテン翼』のような必殺シュートやスーパープレイが飛び交うのではなく、あくまで人間ドラマに軸を置いた青春ストーリーとなっている。

主題歌が初のオリコン1位に


主題歌は、12枚目のシングル『Hey Hey おおきに毎度あり』のカップリング曲『泣きたい気持ち』。映画効果もあり、デビュー3年目にして初のオリコン1位に輝いた記念すべきシングルである。
『Hey Hey おおきに毎度あり』も挿入歌に使われているのだが、この曲は浪速の商人がテーマで、全編関西弁という異色のコミックソング。SMAPメンバーは6人とも関東出身だし、サッカー映画との関連性もゼロ。なぜこの曲が誕生したのだろう……。

学校中の女子が部活をサボってSMAP見物に!?


原作も映画も、舞台は「掛川高校」という架空の高校サッカー部。これは原作者の大島司先生が静岡県掛川市出身ということに由来する。


ロケの一部もこの町でも行われているが、当時のフィーバーぶりは凄かった。そう証言するのは、筆者の妻。この町の出身なのである。
当時、中学生。女子の熱狂ぶりはハンパなく、「地元の海岸でロケがある!」と聞きつけ、学校中の女子が部活をサボって、海岸に押し寄せたそうだ。
「掛川駅で剛、吾郎、慎吾を見た!しかもプライベートっぽい!」「友だちの家が映画で中居の家として使われた!」そんな情報が錯綜し、田舎町(失礼)は大いに沸き立ったという。


また、ロケ中にキムタクが熱狂的ファンの女子高生に後ろから突然抱きつかれてブチ切れ、そのエピソードをラジオで不機嫌そうに自ら話したという話もあったが、これはあくまで都市伝説だろうか…?

草なぎ剛が撮影で犯した過ちとは?


映画内のサッカーの試合、後半突入時にいきなり草なぎの髪が伸びてしまうというエピソードをご存知だろうか? 後半シーンを先に撮影した後、前半を撮る前に草なぎが髪を短く刈ってしまったために生まれてしまった珍現象である。
これをツッコまれた当時10代の草なぎ。「ストーリーの繋がりを誰も教えてくれねーし」と逆ギレして、ふてくされたという。

映画のロケは93年の10月~12月に掛けて。当時は、稲垣が映画やドラマでスケジュールがパンパン。森はミュージカル、ドラマと3作品を掛け持っていたという。
木村もブレイク作『あすなろ白書』との掛け持ちであり、中居と香取も順調そのもの。SMAPブレイクの気運が高まりつつあった。多忙なメンバーゆえ、6人が揃ったのも最初と最後の2日間ぐらいだったという。
そんな中、唯一スケジュールがガラガラだったのが草なぎだった。取り残された焦りがありえない愚行に走らせてしまったのだろうか……?
監督も後にインタビューで、「この子、(芸能界)終わったなぁ…と思ってました」と当時を振り返っている。そんな彼が、今や芸能界屈指の演技派俳優。
終わらなくて本当によかったのである。

映画自体は、Jリーグ発足当時のサッカー人気に乗っかった形であり、「サッカー=オシャレでかっこいい」を短絡的にとらえた雑な作り。物語に深みはなく、原作のイメージをぶち壊したキャラクターに、肝心のサッカーシーンの臨場感も皆無と散々だ。
しかし、高校生なのにビール飲むは、ジュリアナ東京やコンドーム専門店で遊ぶはと、やりたい放題のSMAPメンバーは必見。「SMAPのかくし芸大会」「SMAPのプロモーションビデオ」と割り切れば、こんなに貴重な映像はないのである。