挑戦的で事案的な写真展

 2016/5/4から5/8までの4日間、世田谷区にてかなり風変わりな写真展が行われる。1980年代の今よりも緩かった時代、「アリスクラブ」などの写真雑誌で少女写真を見つめ続け、市場を牽引したおじさんカメラマンたちの合法な作品を一同に集めた写真展なのだそうだ。


 その名も「声かけ写真展」。
 声かけ写真とは、被写体に声をかけ、了解を得て撮影する写真のこと。現代では、難しくなってしまった被写体、撮影手法。誰もが「キュン」としてしまう。
 少し昔のノスタルジーを感じてみたり、普遍的な子供の世界を楽しんでみたり、現在撮影を楽しんでいる人には制作のあり方に驚きと新しいヒントが、当時を知る方には懐かしい。
 会場は廃校となった中学校教室。
それにより「写真観覧」そのもの以上に現場に赴く「体験」に作品が昇華される。
 観客は被写体そのものを見るもよし、被写体の瞳に映る20年前の風景を感じるもよし、カメラマンと被写体の関係性を通して、自らの少年/少女時代を想起するもよし、それぞれの楽しみ方を模索していただければとのこと。

 以下、参加作家をご紹介。「ピン」と来る方に来ていただければ。

青山静男

昭和24年3月19日京都生まれ、平成7年3月13日没。享年45歳。

昭和50年代、主に大阪、京都を中心に街の写真を撮り、少女をとらえた作品に多くの秀作を遺す。晩年は実兄・青山恵一氏からの依頼で市松人形などの写真撮影も手掛けた。
1986年、写真集「静かなる時 -永遠の少女たちへ-」心交社
2005年、写真集「少女たちの日々へ1」「少女たちの日々へ2」飛鳥新社

蛆雅恵

1990年代より写真投稿雑誌にて作品を発表する。作品投稿時に掲載謝礼を受けるための住所氏名を記載せずに送り付けるスタイルから、まったく純粋に作品を見せたいだけなのだろうか、と長らく特殊な位置付けに置かれながらその被写体の表情と、確かなスキルで名声が高まる。
今回、公な作品展示は初となる。

どんちゃん

1969年東京都生まれ。

写真家、ライター、編集、特殊玩具研究家。学生時代から、視界に現れては消えて行くリアル少女像の儚さに悔しさを感じ、8mmビデオで視界ログを始める。しかし時間を丸ごと消費する動画の形態では、再視聴する鑑賞の仕方に馴染まない。再視聴される動画番組というのは再視聴用に演出された構成や編集が必要で、すでに被写体との作品制作協力関係を確立した上で作られている。自分はそのような関係になる以前の存在であり、動画の視界ログでは結局見返さない、撮り捨てになってしまうーーこの苦悩を経て1990年頃、中古のPentax SV2を手に、瞬間を切り取る静止写真にシフト。東京都内を中心に、関東一帯で声をかけ始める。

1996年、本名でEPSONカラーイメージングコンテスト入選。
2002年、どんちゃん名義でプレスCD-ROM写真集『街角「微」天使』を四月舎から発売。
ストリートその場から始まる被写体との関係構築にこだわり、2000年~2005年、代々木公園などで路上展示。
2009年、下北沢「はこ★スタジオ」で箱内写真展。同2009年からは海外での撮影も手がけている。
HP:「器具田研究所」で検索
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◆リリース
展示名:声かけ写真展
場所:IID 世田谷ものづくり学校
154-0001東京都世田谷区池尻2-4-5 3階2-A教室
日時:2016/5/4-5/8 午前11時~午後18時(初日12時OPEN予定、最終日15時CLOSE予定)
入場料 : 1000円 (小冊子1部つき。

この小冊子提示で途中入退場OK。中学生未満は入場無料)
名誉キュレーター:斉田石也
協賛:器具田研究所、株式会社土
公式サイト:http://koekakephoto.strikingly.com/
公式ツイッターは写真展名で検索

 故人や引退者の貴重な写真もあるので、しっかりと公開されることを期待したい。

(文・豊洲そじ坊)